『白』の行方
限りなく続く、白。
ここは、どこ?
どちらが上か下かもわからない。本当に、真っ白な、空間。
私は前に進んでいるのかも、上っているのかも、下っているのかも、もしかしたら、後退しているのかも。
それすらわからない。
ただ、あたり一面真っ白で。
ほかにはなにも見あたらなくて。なにも、感じなくて。
そこに、ぽつん。と、どうやら、自分が……いるようだ。
ここは、どこだろう?
どうして、こんな場所にいるのだろう?
どうやって、ここに迷い込んだのだろう?
思い出そうとしても、それを拒むかのように、頭がズキズキ痛み出す。
……ここは、どこなの?
そして――
そして、私は、誰なの?
真っ白な空間。
なにもない空間。
自分の存在さえわからず、私は、本当にそこにいるのかさえも……。
……そんな、消え入りそうなほどの『白』の中、私は、たぶん、歩き続けていた。
どこに向かっているのか……進んでいるのかもわからぬままに……。
いったい、どこへ行く気なの……? 私……?
…………
そう。
そこで出会うモノが、『私』だと知らずに。
私の心を隠すための白い空間だと。
歩き続けていくうちに、知った。
そこには、檻に隠れた『私』がいた。
なにもないと思った真っ白な空間は、からっぽの私の心だった。
『白』に隠されて、閉じ込められた――いや、自分で檻に閉じ込めた『私』。
ここにあるものは、白、檻、私――そして、私。
私を隠す白。
私はここにいる? 本当に?
檻の中の私は、私?
ここにいるのは私? ここにいるのが私?
今の私、白に掻き消されてしまっていない?
檻の中にいる私が本当の私?
私は、誰? 誰が、私?
真っ白でからっぽな世界。
――カナシイ?
白ばかりで、私の姿も見えないくらいの白ばかりで。
ぽつん、とそこにいたのは、檻の中の私だけで。
悲しいの? 私。
なにかが頬を伝う感覚だけは伝わってきた。
檻に隠れているのが本当で、なにもないのが私の真実だったから。
消えてしまえ。消えてしまえ。
こんな『白』。
こんな『私』。
白に掻き消されてしまえ。
臆病で、そしてなにも持っていないの。そんな私なんて。
…………
『白』が、消える。
はっきりと『私』が形を現した。
からっぽが悲しいと、涙を流したのが本当の私なんだと……。