表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

駄文集

『白』の行方

作者: 川柳えむ

 限りなく続く、白。


 ここは、どこ?


 どちらが上か下かもわからない。本当に、真っ白な、空間。

 私は前に進んでいるのかも、上っているのかも、下っているのかも、もしかしたら、後退しているのかも。

 それすらわからない。

 ただ、あたり一面真っ白で。

 ほかにはなにも見あたらなくて。なにも、感じなくて。

 そこに、ぽつん。と、どうやら、自分が……いるようだ。


 ここは、どこだろう?

 どうして、こんな場所にいるのだろう?

 どうやって、ここに迷い込んだのだろう?


 思い出そうとしても、それを拒むかのように、頭がズキズキ痛み出す。


 ……ここは、どこなの?

 そして――

 そして、私は、誰なの?


 真っ白な空間。

 なにもない空間。

 自分の存在さえわからず、私は、本当にそこにいるのかさえも……。

 ……そんな、消え入りそうなほどの『白』の中、私は、たぶん、歩き続けていた。

 どこに向かっているのか……進んでいるのかもわからぬままに……。


 いったい、どこへ行く気なの……? 私……?


 …………


 そう。

 そこで出会うモノが、『私』だと知らずに。

 私の心を隠すための白い空間だと。

 歩き続けていくうちに、知った。

 そこには、檻に隠れた『私』がいた。

 なにもないと思った真っ白な空間は、からっぽの私の心だった。

『白』に隠されて、閉じ込められた――いや、自分で檻に閉じ込めた『私』。


 ここにあるものは、白、檻、私――そして、私。


 私を隠す白。


 私はここにいる? 本当に?

 檻の中の私は、私?

 ここにいるのは私? ここにいるのが私?

 今の私、白に掻き消されてしまっていない?

 檻の中にいる私が本当の私?

 私は、誰? 誰が、私?


 真っ白でからっぽな世界。


 ――カナシイ?


 白ばかりで、私の姿も見えないくらいの白ばかりで。

 ぽつん、とそこにいたのは、檻の中の私だけで。


 悲しいの? 私。


 なにかが頬を伝う感覚だけは伝わってきた。

 檻に隠れているのが本当で、なにもないのが私の真実だったから。


 消えてしまえ。消えてしまえ。


 こんな『白』。

 こんな『私』。


 白に掻き消されてしまえ。

 臆病で、そしてなにも持っていないの。そんな私なんて。


 …………


『白』が、消える。

 はっきりと『私』が形を現した。


 からっぽが悲しいと、涙を流したのが本当の私なんだと……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ