動き出す歯車 6
目を丸くし、5秒間ほどその紙を凝視したジュリエットは叫んだ。
「何ですかこれは⁉︎誰がこんなイタズラを」
「わざわざこんな手の込んだ事する物好きなんていねーよ。お前はもうお尋ね者なんだよ」
奴らの方から笑い声が聞こえる。それは歓喜の笑いではなく、相手を嘲笑い罵倒する声。
それらと反対に、ジュリエットは裏切られた事に戸惑いを隠せず目に涙を浮かべにその場に立ちつくいていた。
「悪いがこっちも急いでるんだわ。おい、早く済ませろ」
「了解です」
ジュリエットの前には身長2メートルはあろうかという巨漢が、棍棒のような鈍器を手にしている。
そして、その鈍器がジュリエットの頭部めがけて振り下ろされた。
骨が破れるような鈍い音を立て、明後日の方向に飛ばされて壁に激突した。
魔王ロイドが。
「な、なんで?」
吹き飛んだのはなぜか自分ではなく、倒すべき対象であった魔王ロイドという事に己の理解が追いついていない。
吹き飛ばされグロッキー状態のロイドに、呆れた顔をしながらカナンは近づいていく。
「また貴方はいらない世話を焼いているのですか?」
「すまないな…どうしても身体が勝手に動いてしまった…」
「貴方の頭の中に入っているのは飾りですか?その血塗れの服も、壁の穴も、この有象無象も片付けるの全部私たちがやるんですよ?そこのところ、十分に理解して言っているのですか?」
「悪かったって、服も壁も散らばった料理も壊した物も俺様のがやっておくから…」
「やっておくから、ですか…では、私たちは何をすればよろしいのでしょうか?」
「フフ…『何を』だと?決まっているだろ‼︎」
その声に反応してか、先程まで我関せずと黙っていたシルバとルビィのふたりもロイドの前に立つ。
そしてロイドはフラフラと立ち上がると口角を20度ほと上げ、魔族の王として従者達に命令を下した。
「目の前の敵を殲滅せよ‼︎俺様のために‼︎」