覚醒する光 13
ジュリエットが魔導具を抱え戻ってくると、そこには頭から血を流し、今にも崩れ堕ちそうなルビィがいた。
息を切らしてもなお立ち上がり、ダイダロスに火球を投げつける。
渾身の力で放った火球はダイダロスに直撃する。
しかし、ひるむどころか煙を巻き上げルビィめがけて突進してくる。
その姿はより大きく、皮膚が爬虫類のような甲殻に覆われ、両腕が肥大し、翼も二枚ともが大きく揺らめく。
先程ジュリエット達が見た姿とほ大きく異なり、より凶悪な姿へと変貌を遂げていた。
「ちっくしょうッ‼︎」
ルビィが思いっきり横へ飛び跳ねる。
だが距離が足りず、ダイダロスの剛腕に叩かれ、土煙を上げて地面へと叩きつけられる。
「っ‼︎ ルビィさん‼︎」
ジュリエットが倒れこむルビィの元へ駆け寄り身体を起こす。
服はボロボロで、肌は擦り傷や青アザが多く見える。
ダイダロスの攻撃をただかわすだけではなく、囚われた人達を守りながら戦っていた事もあり、苦戦を強いられていた。
「うぐっ……」
「素晴らしいッ‼︎ やはりドラゴンを捕食させると此処まで強くなるのか‼︎」
「どう言う…ことよ」
「フフフ…先日試しに野生のドラゴンを餌としてあげたところ。形が急に変わり始めましてね。やはり上位個体の方がこいつの細胞に合うのかな…あ、でも一匹だけ手違いで逃してしまった個体がいましたが……まぁ良しとしましょう」
その話を聞いたジュリエットがロイド達と出会った日の出来事を思い出す。
夜の森に突如出現したドラゴン、グリム・ロックスケイルの姿がよぎる。
話が本当なら、なぜ奴があの森に居たのかも説明がつく。
「アンタ…生き物を……命をなんだと思ってるのよ!」
ジェロニモはまた口元を押さえ、ニヤける口を隠す。
「おかしな事を言うね君は。これは我々人が新たなる一歩を踏み出す最も重要な研究だ。それに比べれば致し方ない犠牲だと思うがね」
「…やっぱアンタは人間のクズだね」
ルビィはツノを隠す為のニット帽を深く被り直し、歯を食いしばり立ち上がろうとする。
ルビィが顔を上げると、そこには化け物の姿ではなく、ジュリエットの背中があった。
「後は私に任せて、ルビィさんはバース君達を守るのに専念してください」
「……魔法は使えるの」
「いいえ」
「魔導具の使い方、わかるの」
「いいえ」
「それでもあいつを倒したい?」
「はいっ‼︎」
ジュリエットが剣を引き抜き、異形な怪物に剣先を向け、構える。