動き出す歯車 3
「えーと、ジュリエット君?君はなんで勇者になったの?」
「それはもちろん!全ての魔王を倒し、この世に平和をもたらせる為です!」
「だよね。じゃあ君はまず何処に向かってたの?」
「最初は腕試しとして最弱と呼ばれる魔王の城を攻略しようと思ってます!」
「そう…なんだ。あの落ち着いて聞いてくれ」
「はい?」
「それ…ここなんだよね」
「………」
「………ッ‼︎貴様謀ったなぁー‼︎」
「エエエェェーッ‼︎」
次の瞬間、彼女は帯刀していた剣を引き抜いたと同時にテーブルを踏み台にしロイドに斬りかかった。
「先手必勝ォーッ!」
「どこがだぁーーッ」
ジュリエットがロイドの首を跳ねる筈だった一撃。しかし、その斬撃は金属音と共に消えていた。
「な、なに⁉︎」
剣の切っ先が最初に触れたのはテーブルに置いてあった銀製のナイフ。カナンがジュリエットが飛びかかる瞬間、とっさに手元にあったナイフで彼女の第一打を防いだのだ。
「テーブルマナーがなってませんね」
「ふん、そんなもの出来なくても死にはしないから大丈夫だよ」
「マナーのなってないガサツな女は殿方に嫌われてしまいますよ。宜しければ私が教えて差し上げましょうか?今ここで」
「遠慮しときますッ!貴女こそ、そんな仏頂面じゃ誰も近づきませんよ。マナーの前に笑顔の練習でもしたらどうです?」
剣とナイフの鍔迫り合いの金属音が部屋に響き渡る。その最中ロイドは思った、女同士の喧嘩というものが苦手であり、この状況に己のメンタルが耐えられない事に気付いた。