自分の居場所 8
カナンは呆れた顔でぼやき始める。
「……ロイド様は3日前、子どもがイジメられている所を助けました」
「……」
「が、代わりにからかわれタンコブを作って泣きながら帰ってきました」
「……へ?」
「二日前は酒場での喧嘩を止めようとして骨にヒビが入ったそうです」
「はぁ⁉︎」
「昨日は野良猫同士の喧嘩を止めようとして肋骨を3本折りました」
「だからどうしてッ⁉︎」
「そして、今日は貴女を助けました」
訳が解らない。いろんな意味で…
そう言いたそうなジュリエットを尻目にカナンが問いかける。
「……ロイド様の能力、ご存知ですか?」
「いいえ、知らないです」
「魔王ロイドの能力、それは『繋ぎ止める力』です」
「繋ぎとめる?」
ジュリエットは、とても聞いた事のない能力にイメージが湧かなかった。
「ロイド様曰く、『全てのものを繋ぐ力』と言っておられます」
「……」
「私は、ロイド様が無意識的に貴女と私たちを『繋ぎ止めた』のではないかと考えています」
「運命がそうさせたって言うんですか?」
「そう捉えてもらってもかまいません」
少し納得の行く所がある。ロイドの性格は今日だけでもある程度理解できた。そして勇者としての性なのか、ロイドを支えてやりたいと思う。だが。
「やっぱりワタシ…無理ですよ」
「何か理解が?」
「魔法が出せなくて…」
少し考えるカナン。だがすぐ答えは出た。
「…あぁそんな事ですか。でしたら私が教えます」
「…へ?」
「確か書斎に私が使っていた魔導書がございます。それを使って覚えましょう」
「で、でも」
「一緒に、ゆっくり頑張れば大丈夫です」
一緒に頑張ろう。その一言にどれほど救われるだろうか。
ジュリエットは心から嬉しかった。
「……はい!お願いしますねカナンさん!」
その返事だけで十分だった。
「それじゃ帰りましょう」
「はい!」
2人が笑顔で帰路へつく。
ジュリエットがふと何かを思い出す。
「……あれ?何か忘れてるような」
「どうしましたかジュリエット様……あ」
「うーん……あ」
その頃、森の奥。
「う、うぇ…誰か…助けてくれ………カナン……皆んな〜…」
漆黒の森の中、ロイドの声が虚しく響き渡っていた。
to be continued