自分の居場所 2
「あ、あの私もう行きますね」
ロイド達が言い合っていると突然ジュリエットが浮かない顔で荷物をまとめ始める。
「どこへ行くつもりだ」
威圧的なシルバの一言にジュリエットの手が一旦止まる。
「ここじゃない…どこかに」
唇を噛み締めながら、今にも消えてしまいそうな声で答えた。
「アンタ、もう少し頭使いなさいよ。いい?今アンタはお尋ね者なのよ」
ルビィが珍しく心配そうに声をかけ、それにカナンが続ける。
「ましてや相手は帝国ともなれば一年やそこらで捜索を打ち切るとは考えられません。今この段階で単独行動を取るのは得策ではありませんね」
しかしその忠告に反しジュリエットはロイド達に背を向けた。
「たとえあなた達の仲間になったとしても…ワタシは……役立たずだからッ…」
彼女の瞳からこぼれ落ちる涙。
そしてジュリエットは逃げるように部屋を後にした。
数秒の沈黙。
たった数秒でも長く感じるその空間は誰しもが耐えられなかった。
「あーあ、ロイド様が女性を泣かせたー」
とても棒読みのカナン。
「へーすごいなー。アタシだったら探しに行くけどなー」
続けてルビィが急かす。
「はぁわかってるよ。俺様が直々に連れて来る。あと、別に俺様が泣かしたわけじゃないからな!……たぶん…」
「そこは自信を持てよ」
外出用の上着を羽織りるロイド。
「いいかお前達、30分して俺様が戻らなかったら」
「死んだものと思え。でしたね」
「勝手に殺すな‼︎」
ロイド曰く、最近ツッコミの精度が増してきたとのこと。
「門を閉めて誰も出すな、という事だったろ」
「そうでしたね。あ、ロイド様」
不意にロイドを呼び止めるカナン。
「ん?どうした?」
「今夜は満月ですが、いくらか月明かりがあるとは言え森の中は危険です。お気をつけて」
わかったと一声かけるとロイドはジュリエットを探すため城の門をくぐった。