「夏の狭間、夜の校舎」 台本版
「夏の狭間、夜の校舎」
甘夏陛下
雪国 守
篠原 悠馬
戸塚 航
神埼 新之助
立花 雅子
蓮田 楓
水谷 由香
戸塚、篠原以外板付き 明転
雪国 はあ…皆、居るか? って、戸塚は居ないよな。
神崎 先生。篠原もいません。
雪国 またか。あいつは転校してきてまともに授業受けた日はあるのか。まあいい。今いるやつだけ聞いてくれ。
立花 なんか雰囲気やばくない?
神崎 確かに、深刻だね。
雪国 昨日、水谷が病院に運ばれた。どうやら、自殺を図ったらしい。
間
雪国 睡眠薬を大量摂取したようだ。幸い、命は助かったが、意識不明の重体だ。マスコミ対策のために外部に話さないように。明後日から夏休みだったが繰り上げて、明日からに変更だ。
神崎 自殺の原因は?
雪国 まだわからん。家庭では最近、元気がなかったらしい。それで俺の授業をホームルームに変更し、五、六時間目は終業式とする。わかったな?
間
雪国 心配するな、水谷はきっと助かる。最近、俺が忙しいせいでクラスの様子を把握できていない。だから、今日か明日、話を聞くために電話すると思う。よし、では出席をとるぞ。
暗転
場転 舞台は教室から屋上に舞台下を使う。戸塚入り。明転篠原入り
篠原 あー。今日も教室に行けなかった。そろそろやばいよな。二限目の体育から混ざろっと。ん。誰かいるな…。
戸塚 …。
篠原 あれは、同じクラスの戸塚かな。あの髪色は間違いない。
戸塚 お前、そこで何してんだ?
篠原 あ、えっと。さぼりです。
戸塚 お前もか、名前なんつったけ?
篠原 篠原悠馬。戸塚君だよね?
戸塚 呼び捨てでいい。
篠原 わかった。隣いいかな?
戸塚 別にいいよ。
篠原 ありがと。あのさ、よく屋上に居るの?
戸塚 ここか、体育倉庫によく居るな。
篠原 ふーん。あんまり、教室に行かないの?
戸塚 まあな。教室はうるさくて落ち着かない。
篠原 俺も苦手。クラスに馴染めてないし。
戸塚 もう一週間かそこらだろ。なんで?
篠原 転校生ってやっぱり浮くじゃん? それにさ、人と距離を置きたくなるんだ。
戸塚 そうなのか?
篠原 一対一ならまだ大丈夫。複数人はダメなんだ。
戸塚 そっか。まあ、何でもいいがな。
篠原 だよね。次の体育は行く?
戸塚 体を動かすのは嫌いじゃない。
篠原 戸塚は運動神経よさそうだよね。でも、俺、サッカーなら自信ある。
戸塚 ふーん…お前さー、俺がこわくないの?
篠原 なんで?
戸塚 こんな見た目だし、いい噂きかないだろ?
篠原 前の学校でさ、もっとひどい見た目の奴いたし、噂は知らない。不良なの?
戸塚 そうだって言ったら?
篠原 こわーい。
戸塚 お前、バカにしてんの?
篠原 ばれた?
戸塚 はあ?
篠原 でも、俺は気にしないかな。噂とかより、実際に話してみて判断する。
戸塚 変なやつ。
篠原 あ、今は笑った?
戸塚 気のせいだろ。
篠原 ふふ。そうだね。
戸塚 なに、にやにやしてんの。きもい。
篠原 えー。久しぶりにこんな感じに人と話したからさ嬉しくて。
戸塚 さみしいやつだな。まあ、俺も似たようなもんだが。
篠原 やっぱり? 少し、同じにおい? てかそんな気がした。
戸塚 においなー。お前は汗くさいよ。
篠原 マジ? やば、チャリで頑張りすぎた。あるかなー。あったあった、しーぶりーず。
戸塚 ほんと、変なやつ。
暗転 二人はけ
舞台、雪国、戸塚以外教室にいる。
篠原 明日から、夏休みなんだ。ラッキー。
神崎 なあー。篠原。今日、暇?
篠原 あ、神崎。どうしたの?
神崎 今日さ、夜に遊ぼうと思うんだ。
篠原 まさか、遊びのお誘い?
神崎 そそっ。篠原さ、転校してきてから、まだ遊んだことないし。うちさ、生徒少ないから、皆と仲良くしたんだよ。
篠原 嬉しい。いくいく!
神崎 そうこなくちゃー。後は…。
篠原 あのさ、戸塚呼んでいい?
神崎 戸塚か…。
篠原 ダメかな?
神崎 いいけどさ、来るか?
篠原 あいつと遊んでみたいんだ。
神崎 だよな。この前、絡まれてること助けてくれたし。ほんとは仲良くしたんだ。でも、篠原も戸塚も全然、教室に居ないし!
篠原 そうだねー。んじゃ誘ってみよっか。
神崎 おう。
篠原 そろそろ、戻ってくるはず…。あいつ、呼び出しくらってるらしいよ。なんかやらかしたのかな。
戸塚入り 帰り支度をする
篠原 戸塚―、今日夜、暇?
戸塚 いきなり、何?
神崎 いや、皆で遊びたいなーと。
戸塚 俺も?
篠原 今のとこ、俺ら三人だよ。
戸塚 別にいいけど…。
神崎 マジ? やりー。
篠原 ほら、誘ってみるもんだよ!
神崎 だな。でさー、そろそろ夏本番だし、夜の校舎で怪談なんてどう?
戸塚 ん。悪くねぇな。
篠原 怪談って…。
神崎 大きな声じゃ言えないけど俺さ、教室のカギのスペア持ってるんだ。先生に学級委員だからって。それで九時くらいに裏の柵を越えて中に入ろう。
篠原 用意周到だね…。でもさ、プールで泳ぐのとかもありでしょ?
戸塚 あれか。お前、怖いの?
神崎 怖いんだ?
篠原 違うよ。やろやろ!
神崎 決まりー。それでさ、蓮田さんも来るでしょ?
蓮田 っ!
神崎 さっきから、聞き耳たててるのバレバレ。いつもクールな蓮田さんが興味を示すものは、オカルトだけだもんねー。
蓮田 神崎君。でも今日は不謹慎じゃない?
神崎 かもね。けど、前から決めてたからさ。それに怪談するからオカルト研究会会長、蓮田楓さんを呼ばないわけにはいかないさ。
蓮田 わかってるじゃない。行かせてもらうわ。
篠原 戸塚。俺さ、蓮田さんが話してるとこ、初めて見た。
戸塚 俺もだ。
立花 なにー。さっきから楽しそうじゃない。私も話に混ぜなさいよ!
蓮田 なに、偉そう。
神崎 立花も来たいの?
立花 まあね、私が居たほうが盛り上がるでしょ!
蓮田 次は自信家。
神崎 呼んであげてもいいけど、人にものを頼むときの態度がねー。
立花 え、あ、うん。
神崎 わかるよね?
立花 仲間に入れてください。
蓮田 意外と素直ね。
神崎 よろしい。人数はこんなものかな。それじゃー、九時に裏門前に集合な。
篠原 楽しみだなー。
戸塚 何か言ったか?
篠原 んーん。戸塚は一回、家に帰る?
戸塚 面倒だし、そこらで時間つぶす。
篠原 ついて行ってもいい?
戸塚 好きにすれば?
神崎 んじゃ、俺も行こうかな。
立花 はっすーはどうするの?
蓮田 はっすー…。私は学校に残るわ。どうせ、別館の研究室には誰も来ないし。
立花 ならあたしは一回、帰ろうかな。それじゃ、あとでね?
立花 はけ
篠原 んじゃ、俺らも行こうか。
神崎 皆、夜にまた会おう。
暗転 全員ははけ
場面は教室 雪国ソロ
雪国 この忙しいときに困った。水谷がなんで…。やはり、原因は学校にあるのか。
(しばし考える)
雪国 水谷といえば、まじめで優しい良い子だったな。いじめの対象になるとも考えにくい。そういえば…。
回想 水谷入り
雪国 水谷、まだいたのか? 悪いが、教室は閉めるぞ。
水谷 先生、今、時間あります?
雪国 すまん。今から病院だ。明日は手術らしいから一目会いたい。
水谷 そうですか…、ならまたでいいです。
雪国 ん。どうかしたのか?
水谷 いえ、大したことではないです。
雪国 そうか?
回想終わり
雪国 あの時、話を聞いていればよかった。もしかしたら、あいつの自殺を止められたかもな。まあ、わからないことを考えても仕方ない。今はできることをしよう。
(雪国、水谷の席にいく)
雪国 勝手に人の机の中を見るのは良い気がしないな。ん、なんだ、この紙? 黒く塗りつぶされている…。
暗転 舞台下 雪国水谷以外入り 明転
暗転 上の舞台に移動 明転
神埼 さてと、皆、集まったかな?それじゃあ、円になって座って? 真ん中にろうそくを置く、と。
蓮田 教室の電気はどうする?
神埼 ランタンがあるから消していいよ。
(舞台うす暗く)
神埼 さて、誰から行こうかな…。皆、怖い話は用意してるよね?
篠原 …。
立花 …。
神埼 それじゃー。○○、トップバッター任せたよ。(指定された人が話す)
一同リアクション
立花 ひぃ。
篠原 あぁ…。
神埼 なかなか良かったよ。ありがとう。さてとー、次は俺が行こうかな。
蓮田 少し待って。二人が死にそう。
戸塚 おい、戻ってこい。
篠原 はい!? …びっくりさせるなよ。
蓮田 何とも情けない…。
神埼 それじゃ、お菓子でも開けようか? 誰か電気をつけてくれない?
戸塚 俺が近いな。ん。つかないぞ。
立花 嘘…。なんで。
神埼 落ち着いて。
蓮田 外の天気はどう?
篠原 うわ…すごい雨だ。
SE 雷
立花篠原 きゃ、うわ。
神埼 これは停電かな。この場合は非常用の電源をつけに行かないと。
雪国 おい、誰かいるのか?
言い切りで入り
神埼 先生?
雪国 神崎か? それにお前ら、ここで何してる?
蓮田 篠原君の歓迎会の帰りに雨がひどくなったので、避難しました。
雪国 そうか。教室は神崎が開けたのか?
神埼 はい。
雪国 まあいい。今は大目に見る。
神埼 先生はどうしてこんな時間に?
雪国 いろいろあってな。資料をあさっていた。
神埼 そうですか。先生は非常電源の場所はわかりますか?
雪国 確か、別館二階の管理室だ。
蓮田 私たちはどうしたらいいですか?
雪国 お前たちには帰れと言いたいとこだが…。
篠原 え、なになに。
雪国 玄関の扉が開かない。
篠原 開かないってなんで?
雪国 わからん。裏口もダメだった。そこにさっきの悲鳴が聞こえたわけだ。
立花 もしかして、閉じ込められたってこと?
雪国 ああ。とりあえず、電気を復旧してみないことには、なんとも言えんな。
篠原 携帯で助けを呼ぼうよ!って学校内は圏外だっけ…。
戸塚 うちの学校は山間にあるからな。校内はさらに電波が悪い。
雪国 まあ落ちつけ。俺はまず、職員室に行き、外線で外に連絡する。そのあと、管理室に行くつもりだ。
神埼 俺も行きます。先生一人じゃ心配だ。お疲れみたいだし。
雪国 そうか。なら、神埼は管理室に行ってくれないか? ここにマスターキーがある。
神埼 わかりました。
蓮田 神埼君、私もいく。別館に詳しくないでしょ?
神埼 わかった。すぐに戻ってくるから。戸塚、皆を頼む。
戸塚 ああ。気をつけてな。
立花 早く帰ってきてよ。先生も。
雪国 ああ。心配するな。すぐに出してやる。
(雪国、神埼、蓮田はけ)
篠原 俺は頼りにならないってか…。
戸塚 だろうな。
立花 こんなことなら、友達連れてくれば良かった。
篠原 立花さんって友達、多そうだよね?
立花 まあねー。部活の仲間も居るし。
戸塚 立花はバレー部だったよな?
立花 そそ。うちのバレー部は強いんだから!
篠原 部活か。いいなー。
立花 篠原っちも何かやれば?
篠原 うーん。考えとく。やるならサッカーがいいな。
立花 サッカーいいよね!神崎がサッカー部だよ!
篠原 少しね。神崎がサッカー部…いかにもってか、きっとエースだろうね。
立花 正解!部活中の神崎はすごく格好いいんだ!
篠原 へえー。ちょっとみたい…って戸塚も会話に入りなよ!
戸塚 あぁ?話は聞いてたぞ。
篠原 そうじゃなくて…。
立花 戸塚って無口よねー。
篠原 ほら、何か話して!
戸塚 いったい、何を…。
篠原 そうだなー。今までの戸塚の人生とか?
戸塚 そんなのでいいのか?
篠原 うん。
戸塚 わかった。言いたいこともあるし、ちょうどいいか。何から話そうか。俺は
ここに引っ越してくる前は海外にいたんだ。俺の親父は、指揮者でそこそこ有名でな…でも、お袋と一緒に交通事故で死んだ。そのあと、ここで祖父母と暮らすことになった。
篠原 戸塚…。
戸塚 まあ、聞け。俺はじいさんに武道をさせられた。この頭じゃ絡まれやすかったからな。そして、お袋の生まれ故郷であるここの高校に進学した。でもな、つまらなかった。
立花 何が?
戸塚 勉強も人も環境もだ。見た目から人は寄ってこない。
立花 髪は黒くすれば良かったんじゃ?
戸塚 いや、これは親父とお揃いなんだ。だから、変えたくない。
立花 そっか。そうだよね。
戸塚 ああ。で、本当に話したいのはここだ。正直、さみしかった。でも、今日は違った。篠原が話しかけてくれたから。
篠原 俺?
戸塚 嬉しかった。神崎と先生以外で声をかけてくれたのはお前が初めてだ。
篠原 だって、戸塚じゃんか。先に声かけてくれたの。
立花 でも、戸塚はもっと怖い人だと思ってた。ごめんね。
戸塚 いや、気にするな。
立花 でさ、戸塚と篠原っちはできてるの?
戸塚 篠原、俺は男とは…
篠原 俺もだよ!
明かりがつく
立花 良かった。うまくいったみたいね。あたしさー、トイレ行きたい。
篠原 一人で大丈夫?。
立花 すぐそこだし、大丈夫。
戸塚 電気も復旧したし大丈夫だろ。
立花 そそ。何か、あったら叫ぶからよろしく!
立花はけ
戸塚 叫ぶって…
篠原 きっと、凄い大声だよ。
戸塚 だな。
篠原 戸塚、さっきは話してくれてありがと。
戸塚 俺は言いたいことを言っただけだ。
戸塚 そんな言い方しなくてもいいのに。あのさー。
戸塚 ん?
篠原 戸塚は俺に似てるね。
戸塚 なにが。
篠原 俺も転校してきて、ずっと一人だった。だからさ、俺ら友達になろうよ。
戸塚 友達って、口で言ってなるものなのか?
篠原 そんなこと言うからぼっちなんだよ。
戸塚 うるさい…。
篠原 ん。なんか言った?
戸塚 いや別に、お前はなんで転校してきたんだ?
篠原 んー。逃げてきた。
戸塚 何からだ?
篠原 色々。また話すよ。
戸塚 ああ。
はけ 暗転 舞台下 神埼蓮田入り
神埼 どうやら、うまくいったみたい。
蓮田 そうね。神埼君、窓開く?
神埼 いや、だめ。どうやら非常事態だね。蓮田さんこういうの専門でしょ?どう思う?
蓮田 まだ、なんとも言えないわ。
神崎 蓮田さんでもわからないのか…。
蓮田 そうね…。でも、気になることがあるから研究室に行ってもいい?
神埼 いいけど、一人で平気?
蓮田 大丈夫。むしろ一人がいいの。
神埼 調べものかい?
蓮田 ちょっと、心当たりがあって。
神埼 わかった。先に教室に戻るよ。
蓮田 気をつけて。
神埼 そっちもね。
別にはける 舞台上に転換 雪国入り
雪国 やっぱり、だめか。遥は寝たかな。あいつ、俺の帰りを待ってるかもな。今日はまだ顔を見れていないな…。遥、父さんきっと帰るから、いいこにしてんるんだぞ。
舞台 中央に胸から紙を出す
雪国 俺の見立てが正しければ、答えはこいつにある。
暗転 舞台下 下手から立花入り
立花 はあ、やっぱり一人で来るんじゃなかった。でも、男子にトイレの前で待たれるのは嫌だし…。早く教室に戻ろ。
SE 足音
立花 足音?でも、誰もいないし、他の階よね?
間
立花 あ、神崎たちが戻ってきたのかも。でも、こんな形で神崎と遊べるなんて思わなかったな。やっぱり、かっこ良かった。帰ったら皆に報告しないと!
…あれ、足音が徐々に大きくなってる…。
(上手から順に暗くなっていく) 水谷入り
水谷 見つけた。
立花 え、何?誰かいるの?
暗転
立花 え、え、え、離して、だれ、だれ? いや、きゃあああああ!
ふたりはけ。神埼 上手から入り 明転
神埼 今のは…。この辺りか。おい、誰かいないのか?
戸塚 篠原入り
篠原 あっ、神埼、今のは?
神埼 良かった、無事か。立花は?
戸塚 ここのトイレにいるはず。
神埼 おい、返事してくれ!
戸塚 入ってみるか。
篠原 へ、女子トイレに?
戸塚 こいつはダメだな。俺が行く。
神埼 頼む。
篠原 なんか心外。
戸塚 誰もいないぞ。
神埼 さっきの悲鳴。何かあったのか。
戸塚 すまない。俺がいないがら。
神崎 戸塚のせいじゃないよ。探してみよう。
戸塚 外に出て、警察を呼んだほうがいいな。
神埼 まだ外には出られないみたいだ。ここに来るまでに可能性があることは試したが、ダメだった。
篠原 なんで?
神崎 わからない…。
戸塚 そういえば、蓮田は?
神埼 彼女なら調べ物だって、オカルトの部室に行った。何か、心当たりがあるみたい。
篠原 一人で?怖くないの?
戸塚 とりあえず、立花を捜すか。
神埼 先生はまだ帰ってきてない?
篠原 みてない。もう教室に戻ってるかも。
神埼 そっか。立花もいるかもしれないし教室に戻ろう。
三人、舞台に移動 舞台 雪国入り
戸塚 先生…!
雪国 おまえ達、無事だったか? 良かった。
神崎 すみません。立花とはぐれました。
雪国 蓮田は?
神崎 彼女は調べものがあると別館に残りました。
雪国 一人にしたのか…。
戸塚 蓮田なら大丈夫ですよ。
雪国 確かにそうだが…。それで立花はどうしたんだ。
戸塚 立花は一人でトイレに行きました。そこで…。
雪国 そこで?
戸塚 居なくなりました。俺たちが教室で待っている間に…。
神崎 叫び声がして、駆け付けた時にはもう…。
雪国 そうか…。篠原、顔色が悪いぞ?大丈夫か?
篠原 はい…。
雪国 無理はするな。とりあえず、俺は立花を探す。お前たちは蓮田を呼んできてくれ。
戸塚 はい。
雪国 一人で探すのは大変だ。神崎、お前は残ってくれ。
神崎 わかりました。
戸塚 篠原、行こうか。
篠原 うん。神崎またあとで。戻ってくるから。
神崎 気を付けて。
二人はけ
雪国 なあ神崎。
神崎 なんですか。
雪国 どうしてだと思う。
神崎 何の話です?
雪国 神崎、お前はもうわかっているんだろ?
暗転 舞台下
戸塚 篠原入り
戸塚 なあ。
篠原 なに。
戸塚 わあ!
篠原 うぁああ! なにいい!?
戸塚 やっぱり、怖いのか。大丈夫か?
篠原 大丈夫だし。
戸塚 無理するなよ。
篠原 戸塚は怖くないの?
戸塚 ああ。
篠原 戸塚は強いね。
戸塚 強くねーよ。
篠原 俺は弱いよ。ほんとに。
戸塚 急にどうした。
篠原 戸塚は一人で生きて来れたんでしょ。俺には無理だよ。
戸塚 でも、一人は寂しいぞ。
篠原 知ってる。俺さー、前の学校から逃げてきた。
戸塚 おまえがなんで転校したしてたかって話か?
篠原 うん。向こうで一人になってこっちに来た。でさ、こっちでも一人になるのかなって思ってた。けど、今日は違った。
戸塚 それは俺も一緒だ。
篠原 俺ら、もう友達かな。
戸塚 くだらないこと聞くなよ。お互いに友達と思えたらそうだろうな。
篠原 だよね。戸塚って下の名前なんて言うの?
戸塚 航。なんで?
篠原 下の名前で呼んでいい? なんか仲良しに見えない?
戸塚 お前は悠馬だっけか? まあ、そのうちな。
篠原 うん。わかった。別館はこっちだっけ?
水谷入り
戸塚 ん? 誰だ。
篠原 え、何?
戸塚 水谷?
水谷 あ、戸塚君に…篠原君?
篠原 あ、ども。あれどうしてここに?
水谷 なんか学校から出られなくて。
戸塚 そうか。誰かに会わなかったか?
水谷 うん。他に誰かいるの?
篠原 先生とか神崎とかさ。まあ、いろいろあって皆、ばらばらにいるけど。
水谷 そっか。どこにいるの?
篠原 多分、教室の近くかな。
水谷 蓮田さんは?
戸塚 さあ、これから探すとこ。
水谷 わかった。ありがとう。二人も気を付けてね。
戸塚 ああ。
篠原 水谷さんもね。
水谷はけ
篠原 なんでさっきは嘘吐いたの。これから、蓮田さんとこ行くのに。
戸塚 いや、あいつはなぜ蓮田がいると知っている。
篠原 それは…。
戸塚 なら可笑しいだろ。
篠原 そうだね。戸塚、探偵みたい。
戸塚 おまえ、こんな状況で楽しそうなんだ?
篠原 なんでだろうね。
蓮田入り
蓮田 あ、居た居た。探したわ。
篠原 蓮田さん、今、会いに行くとこだった。
蓮田 ふぁあ疲れた。まずは今の状況を教えて?
戸塚 ああ。立花は行方不明。先生と神崎で探してる。
蓮田 そうなの。行方不明ねー。
篠原 あと、あと、水谷さんがいた。
蓮田 水谷さんが…ホントにいたの?
戸塚 それがどうかしたのか。
蓮田 そういえば、あなたたちは今朝のホームルームに居なかったわね。
篠原 どれがどういう関係が?
蓮田 水谷さんは…今朝、自殺しようとしたのよ。今は病院で意識不明。
篠原 え、そんな…。さっき会ったのに…。
戸塚 じゃあ,俺たちが見たのは何者なんだ?
蓮田 そうね、なんていえばいいのかしら、零体? 意識? まあ、そんなところ。
篠原 れ、れい…。
戸塚 それじゃ、この事態を起こしているのは…。
蓮田 そう、彼女ね。おそらく、彼女の想いが私たちをこの空間に閉じ込めたの。これを見て。
篠原 こ、これは?
蓮田 この本によると、意識ない状態では、人は体を離れることができる。そして、強い想いは時に現実とは異なる空間を作り出すことができる。これを狭間の時間と呼ぶ。
戸塚 狭間の時間? 脱出方法はあるのか?
蓮田 狭間の時間では、作り出した本人のイメージが現実のものとなる。ということは水谷さん次第ね。
篠原 彼女は何がしたいのかな?
蓮田 私たちをここに連れてきたことが何か関係ありそうね。自殺しようとしたことをふまえると復讐とかかしら?
戸塚 復讐か…。どんな?
篠原 いじめ…とか?
蓮田 あり得そうね。でも私はクラス内の人間関係に疎いから、詳しくは解らないけど…。
戸塚 俺もこいつもその辺はさっぱりだ。どうしたのもか…。
蓮田 そうね。彼女を探しましょ。直接、話してみたいし。
篠原 会うの…?
蓮田 怖い?
篠原 そ、そんなことない!
戸塚 水谷さんは教室に向かってると思う。そこに神崎と先生もいるはずだ。
蓮田 じゃあ、急ぎましょ。二人が危ない。
三人はけ 舞台に転換
神崎 どういうことです?
雪国 わかっているんだろ。ここから出られない原因をさ。確証はなくても、感づいていた。
神崎 …。
雪国 別に責めてるわけじゃない。でも、お前の考えが聞きたい。
神崎 はい…。あくまでも憶測に過ぎませんが、これは水谷さんが起こした超常現象みたいなものだと思います。
雪国 やっぱりか。でも、なぜそう思う?
神崎 初めにタイミングです。今日のこの現象と水谷さんが自殺しようとしたことが関係ないとは思えません。
雪国 それで。
神崎 水谷さんがここに俺たちを閉じ込めてのなら、何かしらの理由がある。そして消えた立花。彼女は俺たちを消し去りたいのかもしれません。
雪国 かなり現実離れした話だな。しかし、なぜそんなことをする?
神崎 さあ、そこまでは…。ただ、彼女は所属している吹奏楽部内でいじめを受けていたそうです。俺も今日、聞いた話ですが、間違いありません。
雪国 いじめか…気が付かなかったな。なあ、神崎。俺は水谷に悪いことをした。
神崎 悪いこと?
雪国 一昨日、水谷に相談を持ちかけられた。ただ、俺は忙しく、話を聞いてやれなかった。おそらく、いじめのことだろう。
神崎 娘さんを優先したってことですか?
雪国 そうだ。俺は生徒より、自分の家族を取った。
神崎 家族ですか…。おれにはよくわかりませんが、先生は間違っていないと思います。先生も知っての通り俺は孤児です。親の顔も知りませんが、孤児院の兄弟たちはきっと家族のようなものです。家族を一番に考えるのは、恥ずべきことではありません。
雪国 ありがとう。お前はすごいよ。ほんとに。その歳で他人の気持ちを汲んでやることができるなんて将来有望だよ。
神崎 俺は子供でいられる時間少なかったですから。それに先生の娘さんは病気でこの前も手術したばかりじゃないですか。
雪国 そうだが、教師たる者、生徒のことをないがしろにしてはいけないさ。
神崎 教師も教師である前に人間で、そして親でも、あるんですよ。
雪国 お前には敵わないよ。そうだ、これを見てくれ。
神崎 この紙は?
雪国 水谷の机から出てきた。なんて書いてあったと思う?
神崎 いじめのことですか?
雪国 いや違う。ここには神崎、お前の名前があった。
神崎 え…。
雪国 まあ、なんだ。俺の予想だと、水谷はお前が好きだったみたいだな。そしてこれはラブレターの一部ってことだ。
神崎 ラブレター…だからあの時…。
雪国 どうやら、ここ当りがあるようだな。
神崎 はい。
雪国 そして、これが黒く塗りつぶされている所を見ると、何があったか想像がつく。お前への告白がうまくいかなかった。そういうことだろな。
神崎 少し前に水谷さんに呼び出されました。でも、後からやっぱり何でもないと言われて…。
雪国 その話はどこでされた?
神崎 廊下だったはず。
雪国 二人きりだったか?
神崎 いえ、何人か通ったと思います。
雪国 そうか。そこを誰かに見られて、邪魔されたのかもしれん。
神崎 なぜそんなことを…。
雪国 それはわからない。いじめなんて理由がないこともある。神崎、お前は気が付かなかったのか?
神崎 はい。ダメですね俺。好いてくれてる子を助けてあげられないなんて。
雪国 神崎、お前はいいやつだ。誰にでも優しすぎる。それがいい点であり、悪い点でもある。
神崎 先生…。
雪国 神崎、なんでお前たちが学校に忍び込んだかわかったぞ。
神崎 え…。
雪国 お前は水谷に会いたかったんだろ?
神崎 俺は…。呼び出されてから、気になっていたんです。それで、最近、水谷さん元気なくて…あんなことになって…。
雪国 だから今日ここに来たのか…。
神崎 もしかしたら、会えるかなって…会って話ができるかなって…。
雪国 もういい。それ以上は言うな。これから会えるさ。
神崎 はい…。
雪国 あー母さんと娘に会えなくなるかもな。見てくれ可愛いだろ。もう三つになったんだ。
神崎 可愛いですね。先生は帰らなくていいですか?
雪国 馬鹿いえ。俺は教師だ。生徒と向き合うさ。前みたなことにならないためにもな…。さて、そろそろ終わりにしよう。水谷、居るんだろ
上手から順に暗くなる。水谷さん入り
水谷 どうして助けてくれなかったの? どうして、気づいてくれなかったの?
神崎 それは…。
雪国 水谷。俺たちは逃げない。お前のしたいようにしてくれ。
神崎 やっと会えたね、水谷さん。皆、後は任せたよ。
神雪 水谷、ごめんな(ごめんよ)
暗転 神崎 雪国はけ 明転
水谷 今更、謝っても遅いよ。もう私は…。
三人入り
蓮田 水谷さん、ここに居たのね。
水谷 …。
蓮田 なぜ私たちをここに閉じ込めているの?
水谷 あなたは色々、調べてるみたいだけど、無駄よ。ここは私の世界なんだから。
篠原 さっきぶりだね。水谷さん。先生と神崎はどこ?
水谷 彼らが、彼らが悪いのよ…!
篠原 でもさ、悪いからって連れ去るのはよくないよ。
水谷 貴方に何がわかるの? 私の気持ちなんてわかるはずがない。
篠原 うん。だから、話してくれない? 水谷さんの気持ちを教えてよ。
水谷 私はいじめられていたの。部活の皆に…。理由は言いたくないけど、私は悪くないわ。それなのにあいつらを許せというの?
篠原 気持ちはわかる。でも…
水谷 わかるわけがない! わかるはずがない…。
篠原 いや、少しは解るよ。俺もそうだったから。
戸塚 篠原、お前…。
篠原 言ったよね。俺も一人だった、逃げてきた、複数の人はは苦手だって。俺は前の学校でいじめられてたんだ。
戸塚 どうしてお前が?
篠原 俺の兄が車で人を轢いたんだ。次の日から俺のあだ名は人殺しの弟になった。
戸塚 そんなのお前は悪くないじゃないか。
篠原 そうだよ。でも、本人の意思なんて関係ないよね。水谷さん?
水谷 うん。
篠原 辛い気持ははわかる。けれど、こんなことしたって何も変わらないよ。
水谷 私は復讐したいの!あいつら全員に。立花さん、先生、神崎君。そして、このあとに部活の連中を消す!
蓮田 なら、私たちは関係ないの?
水谷 そうよ。うまく、力が使えなくてあなたたちも連れてきてしまった。
戸塚 じゃあ帰してくれるのか?
水谷 記憶を消して向こうに送り返すつもりよ。
篠原 そんなのダメだ。俺はまだ帰らない。そうだよな。戸塚?
戸塚 そうだな。皆を返してもらうまでは。
篠原 水谷さん。復讐して何になるのさ。そんなの空しいだけだよ。
水谷 じゃあどうすればいいの?私の人生はもう終わってる。死んでしまった私にこれ以上できることがあるって言うの!
蓮田 死んでなんていないわ。
水谷 え…。
蓮田 あなたは意識不明の重体だけど、まだ生きているのよ。
水谷 なんだ…死んでいるのと変わらないじゃない。
蓮田 いいえ。全然、違うわ。だって、水谷さん、あなたの意識はここにあるじゃない。その意識を元の体に戻すの。あなたが望めばきっとうまくいくわ。
篠原 水谷さん。一緒に帰ろ?
水谷 できない。戻ったところで私に居場所なんてないのだから。
篠原 ならさ、作ればいいじゃないか。また、始めればいい。
水谷 簡単に言わないで!そんなのできるはずがない!
舞台がちかちかする。雷のSE
水谷 全部、忘れたい。全部、なかったことにしたい。あんなこと…
回想 水谷 舞台下に移動 明転 神崎入り
篠原 ここは…。
蓮田 どうやら、彼女の意識の中に取り込まれたみたい。
戸塚 静かにしろ、誰か来る。
神崎 それで話ってなに?どうかしたの?
水谷 ううん。やっぱり、大丈夫…。
神崎 本当に?顔色悪いよ?
水谷 ちょっと体調悪くてね。ごめんね、わざわざ来てもらっといて?
神崎 かまわないけど、無理しないで?それじゃ部活だから。
神崎 はけ 逆から音声のみ
声 余計なことは言ってないわよね?
水谷 うん…。
声 あんたみたな、地味でブスが神崎君に告白なんて生意気よ。良かったはね、ふられる前にとめてもらえて。
水谷 どうしてこんなことするの? (黒く塗りつぶされた紙を取り出す)
声 あんたさ、前から気に入らなかったのよね。少し、演奏が上手だからって調子乗ってんじゃないわよ!
水谷 私は調子なんて…乗ってない。ただ…。
声 はいはい。あんたの意見なんて聞いてない。部活の皆もあんたがうざいって言ってるよ。良かったね。明日から一人ボッチだよ?
水谷 そんな…。
声 わきまえなさいよ。立場ものをね。あんたなんかが神崎君に言い寄るなんてありえないから。神崎君は誰にでも優しいから勘違いしちゃって。
水谷 勘違いなってしてない…。
声 だーかーらーあんたの意見なんて聞いてないの。それじゃ、明日から楽しみにしてなよ。
回想終わり 水谷舞台の下のまま
篠原 …。
戸塚 逆恨みもいいところだな…これは許せない。
水谷 出来れば見せたくなかった。こんな恥ずかしい、忌まわしい記憶…。気が変わった。見せたからには、あなたたちもここから出してあげない。
蓮田 私たちをどうするつもり?
水谷 この学校内で一生、暮らすのよ。
蓮田 ということは初めから意識だけこっちに連れていたわけね。
篠原 え、どういうこと?
蓮田 おそらく、私たちは知らず知らずのうちに意識だけを抜き取られ、この空間に連れてこられた。現実の体は教室に残ったままね。
水谷 流石、蓮田さん。全部、あなたの言った通り。これがどういうことなのかもわかってるよね?
蓮田 もちろん。意識だけってことは老いることも死ぬこともなく、この狭間の時間に一生留まることになるってことよ…。
戸塚 それじゃあ、現実の体はどうなる?
蓮田 水谷さんと同じ意識不明状態。ただ、彼女と違って、体はすぐに腐ると思うわ。
篠原 腐るって…。
水谷 皆、私と同じね。あなたたちだけじゃなく、神崎君たちも。
戸塚 水谷、お前…。さっきと言ってることが違うじゃないか。
水谷 そんな怖い顔しないでよ。だから、言ったじゃない。気が変わったって。もう綺麗ごとなんて聞きたくないの!。
篠原 水谷さん…。
水谷 まだ何かあるの?
篠原 見せてくれてありがとう。辛いことなのに、思い出させちゃってごめんね。
水谷 今まで信じてきたものが一瞬で崩れ去ったの。簡単にね。ははは…。
篠原 もう、誰も信じられない?
水谷 当たり前よ。もう信じない。
篠原 だよね。じゃあ信じなくていい。でも、俺は水谷さんを信じる。
水谷 信じるって何を?
篠原 辛い部分を見せてくれた。話してくれた。水谷さんことを信じるよ。水谷さんは悪くないって。なら俺は君の力になりたい。君を支えてあげたい。
水谷 そんなの嘘よ。どうせ裏切られるもの…もう一人になるのは嫌。
篠原 一人になんてしない。俺もずっと一人でいるのが怖かった。だから最後まで協力するよ。
蓮田 乗りかかった船だし、私も協力するわ。
戸塚 水谷。もう一度、がんばってみてくれないか?
水谷 ……できない。怖いの。苦しいの。辛いの。やっぱり、あいつらがいる世界になんて戻れない。
篠原 難しいかもしれない。でもさ、もうひとりじゃないよ。俺に戸塚、蓮田さんに先生や神崎だってきっと…。もし、ダメなら逃げていい。辛いならいくらでも頼ってくれていい。けど、諦めないで。
水谷 どうしてそこまで言ってくれるの…。
篠原 俺さ、逃げちゃたんだよ。親がまだ戦っているのに一人でね。そしたらさ、ずっと胸の奥に残ってるんだ。あの時の記憶が逃げてしまった自分がね。たぶん、この痛みは一生消えない。だからさ、水谷さんにはこんな思いしてほしくない!そんなの…おかしいじゃないか。君は悪くないんだからさ!
戸塚 なあ、悠馬が俺の友達がここまで言ってんだ、信じてやってくれよ!あんたは、まだ終わってなんてない。ここから始めるんだ。皆で。
蓮田 そうよ、水谷さん。やってみないと可能性はゼロのまま。でも、一歩前に踏み出せば、やり方はいくらでもあるものよ。私を誰だと思っているの?蓮田楓よ。私が味方にいるの。できないわけないわ。
水谷 ……。私はさっきまで皆を閉じ込めようとしてたのよ…簡単に許せるわけがない。ホントはここから出たいだけでしょ…?
篠原 違う。誰も初めから怒ってなんていないよ。君を助けたいだけ。
水谷 篠原君…。皆…ごめんなさい。ありがとう。
篠原 いえいえ。まだ何もしてないよ。それに航に名前で呼んでもらえたし、水谷さんのことも知れたし、悪いことばかりじゃなかったよ。
戸塚 怖がってたくせに。
篠原 うるさいなー。
蓮田 さっき言った通りにすればうまくいくはずよ。大丈夫。きっとうまくいくわ。
水谷 ありがとう。あのさ、戻ったら友達になってくれる?
篠原 友達ってのは、お互いにそう思えたら友達さ。俺はもう友達だと思ってるよ。
水谷 うん…。
戸塚 悠馬。お前、なかなか格好良かったぞ。
篠原 航もね。
蓮田 ホモはそれぐらいにして帰りましょ。
篠原 それじゃ、向こうで待ってるから。
戸塚 見舞いに行くから。
蓮田 笑顔で迎えてよね?
水谷 うん。うん…待ってて。
暗転 水谷はけ それ以外は舞台入り 全員倒れている
戸塚 おい、起きろ。
篠原 どうやら無事に戻れたみたいだね。
蓮田 うぅ、そうね。
神崎 みんな…。うまくやってくれたみたいだな。助かったよ。
立花 うまく思い出せない、でも怖かった…。
雪国 皆、無事のようだな…。
SE 携帯の着信
雪国 はい。もしもし…。本当ですか? 今すぐ行きます。おい、お前ら、水谷の意識が戻ったぞ。
篠原 良かった。
神崎 うん。
雪国 俺は先に病院に行く。
立花 ねえ先生。これって水谷ちゃんが関係してるんでしょ?
雪国 立花、知っていたのか?
立花 うすうす気が付いていたけど、止められなかった。多分、いじめてたのは私の友達だと思う。
雪国 そうなのか?
立花 うん。友達にほんとは何があったか、聞いてみる。でも、その前にあたしも水谷ちゃんに謝りたい。先生、一緒に行ってもいい?。
雪国 わかった。行くぞ。
立花 うん。
篠原 俺たちも後で行きます。
雪国 おう。でも、無理はするなよ。
二人はけ
神崎 なんとか解決か…。いや、これからが問題かな。三人とも、水谷さんはどうなった?
篠原 わかってくれたよ。そして、前に進んでくれると思う。
神崎 そっか。どうやら、篠原が説得してくれたみたいだね。
篠原 戸塚が俺を支えてくれて、蓮田さんが手伝ってくれたから。
戸塚 なあ、神崎は全部知っているのか?
神崎 まあ大体は。
蓮田 流石ね。さて私は疲れたし帰るわ。お見舞いは明日にする。
篠原 俺はこれから行こうかな。戸塚は?
戸塚 お前が行って俺が行かないわけないさ。
神崎 俺も行くよ。
蓮田 素晴らしい友情だこと。彼女を頼むわね。
蓮田 はけ
篠原 ふう…。
戸塚 二人とも大丈夫か?
神崎 俺は平気。篠原は無理してない?
篠原 無理してでも行くよ。これからが大事だからね。
戸塚 友達って、いいものだな。
篠原 なにそれ、戸塚らしくない。
神崎 だね。クールな戸塚君は何処に?
戸塚 二人ともありがとう。
篠原 こんなんで感謝されたらこれから大変だよ。
神崎 ほんとにね、これから始まるんだから。
暗転
終わり