なんで僕なの?
「…なんで僕なの?」
病室の真っ白な天井をぼんやりと見つめて、彼は頬を濡らしてつぶやいた。
「どうして僕がこんな目に?」
一ヶ月前の夜、彼は塾が終わり、帰宅している最中に事故に合った。飲酒運転の車が背後から突っ込んできて、大怪我を負わされた。
「……うごけよ。」
現代の医学では治らないと診断された。もう右腕は動かない。
彼は有名なバスケットボールの強豪高校に通い、4番を任される程の選手だった。将来を期待され、大学の推薦もきていた。誰もがプロになるだろう。そう疑わなかった。
「……ふざけんな。」
一瞬で将来も、夢も、今も、全てを失った。いや、正確には奪われた。
加害者は言った。
「酔っていて覚えていない。申し訳ない事をした。治療費は払います。」
殺意がわいた。人の人生をぶち壊しておいて、覚えていない?申し訳ない??
「……申し訳ないなンて、思ってないだろ?本当に申し訳ないと思っていたら、死んで詫びろ!いや、殺す!!覚えていろ!!何年かかっても、貴様をぶち殺してやる!!!」
~10年後~
俺はあいつの家の前に立っている。今では結婚して、妻と子供もいるそうだ。
…言ったよな?殺すッて。俺の人生をめちゃくちゃにしたお前が、幸せな人生を歩むなんて全世界の人間が許しても、俺だけは許さない。
左手に握りしめたサバイバルナイフを構え、僕は……俺は呼び鈴を鳴らした。