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メーカー・ジャパン  作者: ラストラ
第四章 文化祭編
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ヴァンパイア容疑者

 湯村達が調査を開始して一週間が経過していた。関東第二高校の学食では、金髪の不良と美少女のカップルが仲良くご飯を食べている。柏木の触れがたい可愛さと湯村の近寄りがたいオーラが相まって、二人の座るテーブルに近寄る学生はいなかった。


「お、お前らもメシか」


 そこへ、目の下にクマをつくった佐倉とメガネをかけたアメリアがやって来た。アメリアはいつものようなアップではなく、自身のブロンドを後ろで軽く束ねた程度の髪型になっている。


「どうした、直人……とアメリアも。お前メガネなんてかけてたっけか」

「いやあ、なんつーか、ストーカーってすげーよな。相手が陽子ちゃんじゃなきゃとっくにギブアップだぜ」

「Sorry、today I ……あー、ツカレスギテ日本語デナイヨー。今日はメイクアップ付けてないんだよ、ファンデーションだけだからメガネしてるんだよ」


 それを柏木はジト目で見つめる。


「……全然美人じゃないのよ。まあいいわ、それで進展あった?」

「ああ、あんまり大きな声じゃ言えねぇんだが、張り付いた甲斐はあったぜ。陽子ちゃんは毎晩2時になると家を出て、とあるクラブに出入りしている」

「クラブってあの踊るやつ? そんなの関東シェルターにあったかしら」

「最近テロが無くなって平和になってるだろ? それで娯楽を増やせって要望が多くなったのは聞いたな。クラブも最近出来たものに違いねぇな」


 湯村が横から話を挟んだ。事実、ゲームセンターやらカラオケ、娯楽を目的としたコンテンツがここ最近の関東シェルターで急速に充実してきている。湯村が日々忙しくソフトを変えながら携帯ゲーム機を抱えていることが、柏木の懸念事項となっている。デートが出来ないためだ。


「それで、アメリア。クラブに入ることは出来たの?」

「No、クラブに通っていることがやっと昨日わかったんだよ。あの子、尾行しているのに気付いているのか、途中から急に行方をくらませちゃうんだよね」

「アメリアの尾行を撒くのか。そりゃなかなかのフットワークだな。マネージャーにしとくのはもったいないくらいだ」


 湯村が感心する横で、アメリアが溜め息をつきながら弁明する。


「ワタシ一人ならもう少し早かったよ。でも、一緒にいるサクラが、ドレスアップしたヨーコにexciteしすぎて、その鼻息で見つかりそうになってたんだよ」

「鼻息で?」

「面目ない。いやでも、お前もアレを見たら普通じゃいれなくなるって。あの陽子ちゃんが、あ、あんな肌を露出した服で……ハァ、ハァ……俺はぁぁぁぁ!」

空気針ニードルショット

「痛い!」


 アメリアが自分のスカートの下に手を入れて一瞬の内に隣の佐倉へ空気の弾丸を撃ちこみ、また太腿のホルスターに銃を戻した。


「……尾行中、ずっとこの調子なの」

「察するわ。大変そうね……」


 代わりに今度は柏木が現在の状況を説明しようとしたところで校内放送が入る。


『関東シェルターニュースをお知らせします。本日午前、シェルター内で二代目となる、パンダの赤ちゃんが産まれました。繰り返します……』


 それを聞いた柏木は、急いで立ち上がった。


「これって緊急招集? もしかして久々にAAAの外部テロが?」

「さあな、そうとは限らねぇけど、もしかすっともしかするかもな」


 湯村と佐倉も一緒に立ち上がった。アメリアもそれを見て急いで昼食をかきこむと、立ち上がる。


「So sleepy だけど……仕方ないね、急ごう」


 



 図書館の奥へと4人は急いだ。昼休みなのでちらほらと生徒はいたが、もともと室内が暗く読書灯で本を読むような作りになっていたため、隠された奥の扉へ移動する湯村達を気にする生徒はいないようである。「STAFF ONLY」と書かれた扉を彼らの学生証で認証し、図書館奥の扉をくぐった。無機質な廊下を渡り、エレベーターで彼らはメインコントロールセンターへ到着する。エレベーターの扉が開くと、氷上がその扉の前で待っていた。


「先生! やっぱりさっきの放送は?」

「ああ、マズいことになったんで緊急に君らを呼んだんだ」

「マズいことって?」

「隣の中学にも同じ犠牲者が出てしまった」


 それを聞いたアメリアは腹立たしげに床を踏み鳴らした。


「Junior high school のコ達まで……なんてひどい」

「正直どうして中学を襲ったのか、私にもわからん。ターゲットはうちの学校だと思っていたからな。そしてやはり今までの被害者との関連はなかった」

「どうする? 中学にまで手を出したとなると、犯人は外部犯である可能性もある。最初に出したリストは意味がなくなるぜ」

「いや、僕はそうは思わないな」


 会議室から出てきた木津がそう言った。会議室から出てきた木津は皆にそう告げる。その左腕には小さなノートPCのような道具が付いており、彼はそれを操作しながらその場にいる皆に向けて自分の考えを述べた。


「本校の犠牲者は一部を除いてほとんどが校内でやられている。一方、中学生の犠牲者は今のところ4人だが、その全てが帰宅途中にやられているんだ。このシェルターの学校はセキュリティがそれなりに厚い。つまり、犯人はやはり、第二高校の人間である可能性が高いわけだ」

「でも、どうすればいいの? 残った容疑者と不自然じゃないように接触しなきゃいけないんでしょ。いくら合同授業を重ねったって、そう都合よくこの銀のボールペンを触らせられる保証はないのよ?」


 エレベーターから出たすぐのホールで6人は話していたが、急に湯村が踵を返すとエレベーターに乗ってメインコントロールセンターを出て行ってしまった。


「双?」


 慌てて柏木が追いかけるが、エレベーターは彼女の目の前で閉じてしまった。その様子を見ていた木津はおどおどと柏木に話しかける。


「どうしたんだい、湯村くんは? 僕、何か癇に障ることを言ってしまったのかな」

「いえ、そうじゃないと思います。わかりませんけど。彼、もし木津先生に怒っていたら、直接殴っていると思いますから」

「そ、そうかい。はは……そりゃ良かった。でも、だとしたら何だろうね」


 その様子を一人、静かに見守っていた氷上がポンと何かを思いついてように手を叩くと、携帯電話を取り出してそれを眺めはじめた。


「先生、何ですか急に?」

「ん? ふふ。まあ、あと15分くらいだよ。もう少し待ち給え。そうだ、貰い物のケーキがあったんだ。皆、3番会議室に来てくれ」


 そう言うと、氷上は一同を会議室へと連れて行った。4m四方の狭い会議室の丸いテーブルに5人が着席したところで、スタッフが紅茶とケーキを皆に配り、急遽お茶会が始まる。アメリアと佐倉は目の前のケーキを純粋に喜び食べたじめたが、木津と柏木は怪訝な顔をしながら席に座った。


「さて、皆席についたようだね。3番会議室は少し小さな作りになっているのだが、それには理由があって、これはちょっと大きめのエレベーターになっているんだ」


 氷上が手元のボタンを押すと、会議室の扉が締まり、静かなモーター音とともに部屋が揺れ始める。氷上がケーキに着手したところで、柏木がついにその疑問を口にした。


「……何か企んでますよね、氷上さん」

「なんだ美月。人聞きの悪いことをいうもんじゃないぞ。ただ、こっちの方が都合が良かっただけさ。ほら、校長室だ」


 3番会議室の扉が開くと、そこは校長室へと通じていた。一同は会議室を出て、校長室へと集まる。


「透、そろそろ時間だよ。そろそろ教えてくれてもいいだろう。皆、君のように未来演算が出来るわけじゃないんだから」

「私が教えるよりその扉が開く方が早いさ」


 そう氷上が言ったと同時だった。校長室の扉が開かれ、湯村が入ってくる。そして、湯村ともう一人、彼に廊下を引きずられて校長室まで連れて来られた少年が床に転がされ、仰向けに倒れた。


「いててて、何なんだよ! 授業中に急に教室に入ってきたと思ったら熱いボールペンなんて握らせるし、廊下は引きずられるし、散々だよ……ん? 校長先生?」

「やあ。1年C組、如月啓きさらぎ けいくん。待っていたよ。確認のために私にも試させて貰っていいかな?」


 そう言うと、氷上はブラウスのボタンを開け、如月の右手を優しく掴むと、自分の胸の谷間に少年の手を導いた。


「先生っ……何ですか急に……うわ、熱っ。熱いです、ちょっと、熱い、熱いですっ、焼けるっ、焼けるぅぅぅぅ!」


 如月が氷上の胸元から手を引き抜くと、手の甲が赤くなっていた。氷上は胸の谷間に自分の手を差し入れると、そこから古びた十字架を取り出す。


「どうやら、見つかったみたいだな」

「ああ、まだるっこしかったんでな。容疑者全部の教室に無理やり入って俺の持っているボールペンを手に当ててみた。そうしたら、そいつだけ手が焼けたんだ。だから連れてきた。メールで『見つかったら校長室に連れて来い』って書いてたから、お前は俺が何をやるのかわかってたみたいだがな、氷上」

「私が強制的に生徒を集めると大事になってしまうのでな。君みたいな不良が急に教室に入って生徒を一人拉致した方が、目立たずに済むだろう?」

「ふん、それなら一週間前のミーティングの時に、最初からそうしろと俺に命令すれば良かっただろ」

「もし言ってたら君は言う通りにしたかい?」


 湯村は小さく舌打ちすると、壁を背にもたれかかり、ポケットに両手を突っ込んだ。氷上はその様子を少し微笑ましげに見た後、右手を押さえながら怯えた目で見上げてくる白髪の美少年に向かって話しかける。


「如月くん、君に問う。正直に答えれば良し、正直に答えなければその命、今日こここで終わりにさせてもらおうか」


 氷上は胸元からさらにハンドガンを取り出すと、流れるような動作で撃鉄を起こし、銃口を如月の額に向けた。


「な、何でしょうか。ていうか、それ、本物……ですか?」


 如月が氷上にそう聞いた時、氷上は見もせずに自分の後ろにある卓上カレンダーを撃った。卓上カレンダーは校長室の机から吹き飛び、壁にぶつかる。カレンダーと机には、大きな穴が穿たれていた。


「この銃弾には、残った材料で弾頭の部分に銀が植えこんであるんだ。君が私の想像する生命体であったとしても、致命傷は免れないぞ」

「うわああああ」


 如月が腰を抜かし、後ろに倒れこんだ。そこへ氷上は距離を詰め、銃口を如月の額に当てたまま口を開く。


「問おう。君がヴァンパイアか?」

「お、おい。透。いくらなんでもやり過ぎじゃないか」

「木津先生、黙っててもらおうか。ここ数ヶ月で中高合わせて何人の生徒が犠牲になったと思っているんだ。まだ死傷者が出ていないからいいようなものの、私は私の生徒に害する人間を放置するほど甘くないんでな。さあ、如月! 返答し給え! 君はヴァンパイアか? そうじゃないのか? さあ! 正直に答えれば命だけは助けてやる」


 木津、そして柏木達が緊迫して見守る中、氷上は如月を冷たい目で見つめていた。

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