表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メーカー・ジャパン  作者: ラストラ
第二章 関西遠征編(上)
49/167

最後の客

 巨大なアリクイの死体。その腹部を上から見てみると、一部分に人間一人分くらいの穴が開いていた。


「あー、よく寝たなぁ」


 真っ白い顔をして、目が黒く抜けてなくなっている顔をした沢渡が首を鳴らしながら湯村たちに近づいていた。気味が悪そうに後退りする湯村と佐倉。


「お、お前は巨大な化け物になってたんじゃないのか」


 後退りし、顔を引き攣らせながらも佐倉が沢渡に質問する。


「おお、化け物やったで。さっきまでな。最後のはホンマ痛かったなぁ」


 そんな感想を言いながら、沢渡はアリクイの化け物だったときに穿たれた頭のあたりをさすった。そして、目のない目で佐倉を睨むと血の涙を流しながら口だけでにいっと笑う。


「そやから……お前から復讐してやるよっ」


 かなりのスピードで沢渡は飛び出すと佐倉に齧りつこうと大きく口を開けた。


「うおおおおおおっ」


 佐倉は沢渡の見た目の怖さと嫌悪感が勝り、目を瞑って手加減なしで殴りつけた。彼の能力は大型クレーン車を片手で持ち上げる程の怪力である。

 いくら化け物として能力が向上しているとはいえ、ただの肉体ではひとたまりもなく、沢渡は頭だけ木っ端微塵に吹き飛んだ。


「うああああああっ」


 沢渡の頭部を構成していた肉と青色の血液が手にべっとりと付いたため、気持ち悪さのあまり佐倉は涙を流しながら叫んでいた。

 一方、体の方は頭を吹き飛ばされて、崩れ落ち、辺りにはまた静寂が訪れる。


 湯村が沢渡の出てきたアリクイの死体を振り返ると、柏木が何かを一心に探るように、目を閉じて死体に手を触れていた。


「どうした、美月」


 湯村が話しかけると、柏木は顔だけ上げ、化け物の身体に手を付けたまま答える。


「やっぱり私、触れると相手のことが少し解るみたい。この死体、まだ完全には死んでいないと思う」


 柏木は3人を見ながら言った。湯村は柏木と最初に出会った時のことを思い出す。

 彼女の能力は、自分の傷を治癒させることであったが「触れると相手の嘘がわかる能力もあるのかも」とも言っていた。


「何かわかるのか?」

「うん、多分……上手く説明できないんだけどね。あと何体かは今みたいのを生むと思うわ。それが終わるまではこの子のエネルギーは終わらない」


 柏木がそう言った時だった。彼女が触れていた巨大アリクイの死体の一部が盛り上がり周囲と分裂し、人型の化け物が出現する。


「まさか」


 佐倉が青ざめた顔でその化け物の顔を見る。湯村とアメリアも驚いていた。


「山崎! お前までこいつにやられていたのか!」

「佐倉……逃げ……ろ……」


 変わり果てた姿となった山崎修一は、雄叫びを上げながら佐倉に突進してきた。動揺のあまり佐倉は動けない。

 山崎の牙が、佐倉の喉に噛み付こうとしたその時、


透明インビジブル弾丸バレット!」


 目には見えない銃弾が山崎を吹き飛ばした。ビルの壁まで吹き飛ばされた山崎は、そのまま壁に激突し壁のシミとなる。佐倉が山崎の吹き飛んだ方向と逆をみると、アメリアが銃を構えてウインクしていた。


「サクラ。Don't have mercyだよ。情け無用ね」

「すまねぇ。つい、うろたえちまった。そっか……あいつ、転校じゃなかったんだな」


 うなだれる佐倉の肩を慰めるように湯村が叩く。


「直人、気ぃ抜いてんじゃねぇぞ。あと何体来るか分かんねんだぜ。行けるか?」


 佐倉は頭を上げ、うなだれた顔を引き締めると湯村に答える。


「たりめーだ、スロットばかりで飽きてたって言ったろ」


 二人が頷き合って前を向くと、アリクイの死体からはさらに2体の白い人型が飛び出して来るところだった。





 場所は昇天閣<深淵>へと移る。4人の負債者の最終2戦の勝敗が決した。


「勝者は”プレイヤー”です。配当をお受取りください」


 ディーラーの佐々木は静かにそう言った。御堂カップル、そして中年の男性が立ち上がって喜んだ。


「やった……やった! やったぞ! 私は勝ったんだ! 10億だぞ、はは」


 中年男性は周りを見回し氷上、御堂達を一瞥した後、今井を呼んだ。


「お、おい君!」

「なんでしょうか」


 しばし沈黙がホールに訪れた。中年の男性は床を見つめ、発言をためらっているようであった。そこへ今井が助け舟を出す。


「新見様、この辺りで換金されてはどうでしょうか。本日は一旦マイナスになるという危機に苛まれました。このままゲームを続けても冷静な判断は、できかねるかと」


 中年の男は、顔をぱっと上に上げると、大きく頷きながら今井を指さした。


「そ、そうなんだ君、私は換金をしなくてはいけないよな!」


 そして新見と呼ばれた男は、今井に連れられ、そのままバカラの会場を出て行く。男は氷上達の方を二度と振り返らなかった。

 男が出て行った後しばらくすると、今度は御堂の女が急に立ち上がり他のスタッフに声をかける。


「わ、私の16億で御堂さんの負債を消してください!」

「お、お前……」


 <深淵>のスタッフは御堂の女のもとへすぐに駆けつけた。


「もちろんでございます。今回の16億は加賀様の自由になさってください。御堂様の負債と合計すると、プラスの2億になります」


 御堂の顔は一瞬明るくなって席を立とうとしたが、氷上の方を見て座り直した。


「いや、いいんだ。14億くらいの負債なら、我が社の業績から考えれば払えぬ額ではない。それより俺達に協力してくれた彼女をだな……」


 バン、と不意に机を叩く音がした。叩いたのは氷上である。御堂は氷上の方を見て固まった。

 氷上はサングラスをかけたまま、軽く笑みさえ浮かべながら御堂に言う。


「茶番はいい、と言ったはずだ。そこの男と女。さっさとこの部屋から出て行ってくれないか。大根役者がわかりきった脚本を演じるのを見ていられるほど私は寛容じゃないんだ」

「な、何を言っているんだ、君は……人の好意をっ。し、失礼する」


 御堂は顔一杯に汗を掻きながらも女に連れられ、バカラの部屋を出て行った。バカラの部屋は残ゲーム数1回、負債総額56億、すなわち56枚の黒いコインを所持する氷上だけが残る。


「さあ、邪魔者はいなくなったことだし。最後のゲームを始めようじゃないか」

「かしこまりました」


 バカラの部屋にディーラーのトランプを切る音が静かに響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ