第2話――ROOTS――
ギャハハハハーーーー、お前の兄ちゃん犯罪者ーー
じゃあお前も悪いやつだよなー、みんなやっちゃえ
それは無邪気な子供の悪意。俺の兄は犯罪者。と、世間的にそうささやかれた時期があった。
それが事実であったかどうかは分からない。
角川 華音。俺には一人の兄がいた。10も歳の離れた兄。
そんな弟である俺を兄はかわいがってくれた。
おぼろげながら残っている兄の記憶はとても優しいもので。
しかしある日兄は突然の死を遂げた。享年19歳。
あまりにも、あまりにも早い死だった。
そんな兄の死には一つの事件の発生時期が符合している。
8年前の中央研究所襲撃事件。
そして兄はその事件の関係者として挙げられた。
中央研究所というのは能力のギミック、発現条件などさまざまな超能力に関する研究が行われている場所だった。
当時の記事や証言によればどこかの組織が私利私欲で能力を悪用するために研究所の技術を盗み出そうとしたらしい。
そして角川 華音はその事件で中央研究所の警備に当たっていた能力者に仕留められて死亡。
しかしことはそう小さなものでは収まらず、結局件の研究成果はその組織に強奪され、当時日本最高峰と謳われていた中央研究所の設備の実に7割が損傷。
テロリストVS国家というこの戦いは結果的にテロリスト側の勝利に終わったといっていい。
テロリストはその目的を達し、国家は甚大な被害を被ることとなった。
しかし、俺にとってそんなことはどうでもよかった。
大事なのは角川 華音がその事件で死んだという事実。
もちろん俺は涙を流した。あの優しい兄が死んだ。
死体は見つからなかったらしくただ制服を着たものものしい人間が家にきて淡々とその事実を告げられた。
それを母伝手に知る。------------お兄ちゃんね、もう帰ってこないの。
その頃9歳だった俺には受け止めるには少々重すぎる悲劇だった。
俺はふさぎこむようになり、元から内向的だったのがさらに拍車がかる。
しかし悲劇はそれだけでは終わらず、直に俺はそのことでいじめに合うようになった。
初めて向けられた人の悪意。
どうすればいいか分からずただ俺は立ち尽くして受け止めるしかなかった。
俺の、苦い記憶------------