#06 悲しき囚われの魂
魔族とは、悲しき魂を宿す者たち。
苦しみと痛みと忘却の果てに、此の地に流れ着いた彼らを、人は終焉者と呼び忌み嫌った。
パゴタは気が付くと再び焼野原に佇んでいた。
足元に重なる骸の山には見知った顔が混じる。
その中の一人がぎょろりと目を動かして、血を吐き出しながら呟いた。
「なぜ裏切った? どうして奴らに……?」
「違う……僕は、戦争をして欲しくなくて……みんなに死んでほしくなくて……だから!」
足首を掴まれパゴタがそちらを振り向くと、半身を失った同胞の一人が内臓を引きずりながらこちらを睨んでいた
「それならなぜお前だけ生きている? 新天地で家族ごっこか? 忘れるな……家族など所詮まやかしだ」
「違う……そんなんじゃない……そんなんじゃ……」
「裏切り者め……」「お前の家族は我々だ」「呪われた種族」「魂の同胞よ」「血と恐怖で支配しろ」「世界は我々の敵だ」
いつしかパゴタは、自分を呑み込まんとする亡者の群れに囲まれていた。
いつかのように、少年は赤茶けた空に向かって手を伸ばす。
誰か……誰か助けて……
「誰かぁあああ!」
「パゴタ! 大丈夫だよ! パゴタ!」
その声で起き上がると、そこにはレインだけではなくシルファとフリークもいて、心配そうに、パゴタの方を覗き込んでいた。
「大丈夫。何も心配することないわ。辛い目にあったのね」
汗ばんだパゴタの頬にシルファが優しく触れて前髪をよける。
身体を強張らせて、シルファのそれが終わるのをただ待つパゴタに、彼女は憐れむような悲しむような目を向けて優しく微笑んだ。
「僕は……ここにいるべきじゃない……僕は、僕は……」
「大丈夫だよ。パゴタはここにいても大丈夫。それにわたし、パゴタにいてほしい」
そう言ってレインはパゴタの手を優しく握った。
「パゴタ。何も心配することはない。ここに君がいることを知る者は誰もいないだろう。それにここには私がいる」
パゴタは三人の言葉に涙を流して俯いた。
どうすればいいのかわからなったのだ。
生まれて初めて抱いた感情。
それは遠い記憶の彼方にも存在しない、名前すら知らない感情だった。
ただ黙って俯くパゴタに、サンダース一家もまた、何も言わずに静かに寄り添うのだった。




