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9:王城のお茶会で。

 



 十歳になり、母に連れられてお茶会に参加することが増えた。お茶会では得た情報の摺り合わせから腹の探りあい、新たな伝手作りといった社交だったりと、女性にしか出来ない戦いの場だ。


 今日もその一環で、王城で開催されている王妃陛下主催の茶会に参加していた。

 ある程度の挨拶を終わらせたので、私は母とは別行動で懐かしき王城庭園を見て回っていた。

 王都にいたとはいえ、王城は子どもが気軽に入れる場ではない。そして夜会には参加資格のない年齢ということもあって、ニコラウスとしては初めての王城だった。


 のんびりと庭園を散策していると、前から赤いウネウネ髪をどうにかシニヨンに纏め上げた前世での婚約者――レベッカが護衛とともに歩いてきた。

 

「ごきげんよう。この奥は許可された者しか入れない場所しかありませんよ」


 私に気付いてか素を隠してニコニコと微笑むレベッカが、なんというか気持ち悪かった。


「……なぁ、レベッカはクヌートに興味なかっただろう? クヌートもレベッカを嫌っていたのに。何があった?」


 レベッカは、とにかく顔第一の女だった。クヌートはなんというか素朴な顔と性格をしているのだが、レベッカはそんな弟は目の端にも入れていなかった。クヌートはそんなわかりやすい性格のレベッカを毛嫌いしていた。

 なのに何があったのか……は、理解できるが、二人がなぜ婚約に了承したのかが理解できずにいた。


「えっ……あの……」

「あぁ、すまない。つい懐かしくて話しかけてしまった。幸せになれよ」

「えっ、えっ!? アルブレヒ――――」

「ソレは死んだだろ。私はニコラウスだ」


 レベッカが慌てたように人払いし、私の手首を掴むと庭園の奥の許可された者しか入れない区域にあるガゼボまで小走りで移動した。


 そこからは怒涛の展開だった。

 何かを察知したレベッカがクヌートをガゼボに呼び出し、その場で婚約破棄してしまった。


 意気消沈するクヌートに「なんだ、レベッカのことが好きだったのか?」と聞くと、全力で違うと言われた。レベッカは無い無いと顔を高速で横に振っている。

 二人の反応になぜかホッとしてしまっている自分がいた。


 クヌートは、伯爵家の娘と両想いだったはずなのに何があったのだろうかとは思っていた。この『ホッ』が、伯爵家の娘との仲睦まじさを知っているからなのか、レベッカの気持ちが前世の私から離れていなかったことなのか。どちらなのだろうか。


 レベッカいわく、繰り上がって王太子になってしまったことで、議会で後ろ盾のない第二王子が王太子になるためには、公爵家の力が必要だと言われてレベッカと婚約したのだとか。

 クヌートが部外者に内情を話すなと怒っているが、レベッカは完全に無視して私だけを見ている。この空気、本当に懐かしい。


 しかし、私が死んだ当初はそうだったろうが、今は違うだろう。クヌートが王太子になってからの功績はいろいろと聞いている。別にレベッカの実家の後ろ盾だけで成せることではないはずだ。


 何よりあの父母――両陛下のことだ、初恋を優先したいと言えば両手を挙げて賛成するぞ?


「クヌート、惚れた女を泣かせるな」

「待て待て、この子どもはなんなんだ!?」

「ああ、すまない。ライゼガング侯爵家の三男ニコラウスだ」

「ライゼガング、だと……」


 クヌートの空気が一瞬にして張り詰めた。この反応、クヌートは私の死因と犯人を知っているのだろうな。




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