表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/20

3:息子がなんか変

 



 高熱を出した後から、息子が妙に変でした。

 特に気になったのは、お乳を嫌がること。しばらくのたうち回ったあとに、おじさんのような深いため息を吐いて目を据わらせてからお乳を吸います。

 あとはオムツの交換もですね。オムツをぎっちりと握って脱ぐのを拒否します。乳飲み子にあんなにも力があるのは予想外でした。


 あの子の兄たちではなかった行動が嫌に目につきます。

 旦那様に相談しても、子育ては女の領分だからと話を聞いてはくださいませんでした。元々そういう方だったので、その対応は気にはしていません。ただ、後々「なんだこれは!」的な文句を言われたくはないので、報告は数度行っておきます。


 一歳少し前に、立ち上がって走り回ることを覚えました。掴まり立ちから走れるようになるまで三日。その翌日は「きんにくちゅう……」と言ってずっと寝ていました。筋肉痛などという言葉はどこで覚えたのでしょうか?

 ちなみに、それも旦那様に伝えましたが、あいつはよく本を読むのだろう? そこで覚えたんだろう。と気にも止めていませんでした。

 本を読み聞かせるならまだしも、本を自ら選んで誰にも教わることなく文字を読むなど、異常すぎるのですけどね。




 息子は三歳になっても相変わらず変なまま。

 床に座り、投げ出した足の上に分厚く大きな本を置いて、真剣な表情で読み込んでいます。


「今日は何を読んでるの?」

「お母しゃま、おはようごじゃいます。医学ちょでしゅ……噛みまちた」


 こうやって話すと舌っ足らずで可愛らしいのですが、読んでいるものは可愛くありません。三歳が読むものではありません。


「…………頭より舌の訓練がしゃきがいいか? いや、しょれは後回しでいいか……」


 医学書に目を通しながら、ボソボソと呟いていますが、内容がまた可愛くありません。

 息子の両脇に手を入れて持ち上げると、息子が慌てたように「なにをなしゃるのですか、御婦じ……お母しゃま」と言いました。

 そう、息子は咄嗟のときは私を『御婦人』と呼ぶのです。何かのブームなのか、私を他人と思っているのか……もし後者だったらと思うと涙が出そうになります。

 抱きしめてどうかそんなに急いで成長しないでと心の中でお願いしていると、息子がそっと頭を撫でてくれました。


「お母しゃま、泣いているのか? ちゅらいことがあったのか? あの男か? 話は聞くぞ?」


 息子が男前すぎます。あの男とは旦那様のことです。息子は父親のことがそこそこ嫌いなようで、ときおり辛辣なことを述べているのを聞きます。


「お父様をそう呼ぶのは駄目よ。彼は彼なりに国のために生きているの。家族にあまり目を向けてくれる人ではないけれど、それでも何不自由なく暮らせるよう気にかけてくれているわ。何も辛くはないわ」

「御婦人はいつもしょう言うが……うむ。たまにはアイツとも話してみりゅか……」


 息子がやっぱりなんだか変です。

 あと、ちょっとだけ父と子の会話を覗いてみたいので、機会を設けてあげようかしら?




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
やっぱり下の世話は嫌だったんだ。 こんな不気味な子供でも愛してくれるお母さまは大事にしてほしい。
存在しないのかな?と思ってたお母様の登場。 これから復讐計画がどんどん構築されていく・・・のかな? 楽しみにしております。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ