2:学びの時間
毎日長時間寝かされ、謎のモニモニとした食事を摂っていた。そういう対象として見てはいないのだが、流石に乳を飲まされるときは、メンタルに来る。
ほんのり甘くて美味いんだが、いや違うそういうことじゃないんだ……私は一度成人しているんだが!? といった葛藤との戦いだった。
そんな戦いに多少慣れたころで断乳。
口さみしくなり、つい親指を吸ってしまうという愚行に走ってみたりもした。
あの男の息子に生まれ変わり気付いたことは、思ったよりもいい親だということ。裏ではかなり危ういこともやっているし、私を毒殺したのは間違いなくあの男だが、家族にはその片鱗を一切見せていない。とても狡猾だ。
あの男の悪事をバラす前に殺されたのが悔やまれる。まぁそれは、生前の私がアホなほど真っ直ぐに糾弾したせいでこうなっているんだろうが……。
「…………ふぅ」
医学書を読み終え、パタンと閉じて軽く溜め息を吐いた。幼い子どもらしからぬ行動だが、侍女たちは既に慣れているので大丈夫だろう。
前世では、出来ると思ったことは何も考えずに好き勝手に出来る環境にいたし、止める者はいなかった。そうしていろんな失敗をしてきたはずなのに、恐ろしいほどに猪突猛進だった。
なので、今世はとにかく本を読み、知識を蓄えることを優先した。前世で受けた注意は何のためだったのか、それらを考える頭を先ずは育てた。
三歳になり少しずつ出来ることが増え、そろそろ運動も加えようかと考えていた。
医学書には、子どもは程よい運動は良いが過度なトレーニングは厳禁だと書かれていた。
骨格がちゃんと出来上がる前に筋力を付けすぎると、身体の成長に支障をきたす場合があるそうだ。骨の歪みや身長の伸びなどに影響するかもしれないとか。
前世の私なら何も気にせず筋トレをしまくり、剣を振り回し、幼い身体に自ら鞭打ち爆走していただろうなと、憐れみにも近い笑いが漏れ出た。
国の将来を危ぶまれるのも仕方ないだろう。それと殺害は別問題だろうが。
さて、とりあえずはまだまだ知識を蓄える期間だろうな。健康を維持するための運動はしっかりとしたほうがいいので、一日のルーティンに散歩や短時間のランニングも入れておこう。