18:断罪する。
会議が目の前に迫り、少し緊張というものを味わっていた。
「兄さん、準備はいい?」
「ああ」
会議場の扉を開きクヌートとともに中に入と、一同がざわりとした。
要職が集まる会議の場に王太子が子どもを連れて現れたのだから、それはそれは驚くだろう。
あれは確か宰相閣下のご子息では? などという声もちらほら。なぜか左頬が腫れたライゼガング侯爵はそれらを無視し、ただ手元の書類を眺めていた。
「殿下、お気に入りとはいえ、国の未来を決める重要な場に従僕を連れてこられては困りますな」
「いやいや、可愛らしい騎士ではありませんか。側に置きたいのも分かりますぞ」
クヌートとはこういうときはいつも、ぽわんと笑って「陛下の指示に従いますね」と丸投げしていたようだった。レベッカがその様子をへにょへにょもやしとかなんとかディスっていたのを思い出した。
しかし、もうそうする必要もないと判断したのだろう。クヌートがくすりと笑って首を傾げた。
「国の未来ですか。カスパル卿はその国の金庫をやせ細らせ、自身の懐とお腹にも肉を蓄えていますが、それがいつか国のためになるんでしょうかね? それから、クズライナー卿。貴方の愛用している違法営業の男娼館は昨晩解体されました」
そう言うと、クヌートが右手をサッと上げた。騎士たちが素早く動き、二人を捕縛していく。
議員たちがこれは何事かと騒ぐ中、国王陛下が右手をスッと上げた。
「クヌート、これは何の茶番だ? 彼らは国に尽くしてくれている議員じゃないか。ちゃんと裏を取っているのか? お前は騙されやすいんだ。勝手に行動せず、私に確認しなさいと言っていただろう? 彼らを解放しもう一度調査のやり直しをしなさい」
「「陛下!」」
あぁ、なるほど。クヌートの妙な素直さはこうやって植え付けられていたのか。そしてクヌートは、それにちゃんと気付いていて、こいつらの前で演技し続けていたのだな。
「では、本題に入りましょうか――――」
クヌートと私が今まで集めてきた証拠を次々と出し、議員たちの痛い過去や現在進行系の不正をバラしていった。クヌートが生き生きとしているのを見ると、なかなかにSだなと思う。
「これほどまでに腐れ切った議会でも、悪事には手を染めずいた者もいる。私は、そういう者たちとともに働きたい。だが、そうするためには陛下、貴方が邪魔なのですよ。議会の腐敗の責任を取り、どうかご退位いただけないでしょうか?」
「クヌートよ、いったいどうしたというのだ?」
「陛下、私は兄が大好きでした。兄を毒殺した貴方を許せそうにありません」
会議場内がしんと静まり返った。誰一人として言葉を発しない中、クヌートが辺りを見回しながら、にこりと微笑んだ。
「清濁を併せ呑む、大切でしょうね。ですが、息子を毒殺してまで手に入れたいものは何だったのでしょうか? 貴方は何かあれば殺せる人なのだと議会に植え付けた。貴方に逆らう者が減り、国政がスムーズに進むようになりましたね。でも貴方が欲しかったのはそれではないのでしょう? 兄の煌めきは誰もが眩しかった。文句や苦情も多かったが、愛されていた。愛に飢えた国王よ、貴方はもう諦めるべきだ。貴方は兄にはなれない。私も兄にはなれない。人を国を巻き込むのは辞めましょう」
クヌートが国王陛下の目の前に、生前退位をしクヌートに譲位する旨の書類を置いた。サインするだけで済む、とても気遣いのある書類だ。
国王陛下はその書類を見た瞬間、怒りに打ち震えながらライゼガング侯爵を睨みつけていた。




