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【連載版】悪役令息に転生したので、謀略の限りを尽くしてみる  作者: 笛路 @書籍・コミカライズ進行中


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15/20

15:あの日。

 



 あの日は、春の終わりなのに少し肌寒い日だった。


 王都内で行っていた大きな工事で、用途不明の工費に気付き資料室で探し物をしていたとき、暗い顔をしたライゼガングが入ってきた。


「どうした? ライゼガング」

「殿下、今回の件についての調査は私に任せてくださいませんか?」

「お前にはお前の仕事があるだろう?」

「不正を丸く納めるのも、宰相の仕事ですよ」


 ライゼガングのその言葉に、違和感を覚えた。


「それはまるで、不正ありきの政務をしろと聞こえるのだが?」

「殿下の真っ直ぐさはとても美しいと思っております」

「……でも?」


 そう続くのだろう?と促すと、ライゼガングが苦虫を噛み潰したような顔をした。


「でも…………全ての人間が真っ直ぐに前を向けることなどありません。全員が殿下と同じ方向など、向けないのです」

「そうだな。そういう者もいるだろう。だが私が王太子である限りは許さん。これにしたってそうだ。国民をなんだと思っている。納められた税をなんだと思っている。何のための、誰のための金だ?」

「そういうところです。殿下は灰色さえ許さない。だから、排されるのですよ……」


 ライゼガングが懐から香水のような瓶を取り出し、私の口に押し込んできた。慌てて吐き出したものの、腹の奥底が焼けるような感覚に、既に手遅れだろうなと気づく。

 王族として多少の毒には慣らされている。幼い頃から、微量の服毒をさせられていた。だから分かるのだ。即効性の毒は何をやっても無理だと。


「殿下が悪いのです……」


 俯き、体の横で両手を硬く握りしめるライゼガング。まるで泣きそうな声だった。

 ゴフリと血を吐きながら、資料棚に背中を預ける。立っていられず、ズルズルと滑り落ちるように床に座った。

 ライゼガングを見上げると、本当に泣いていた。


「なぜ、泣く」

「殿下が…………悪いのです。人の話を、頼みを、陳情を、受け入れないから、こうなるんです」

「そうか。私は、そんなに……人の、話を聞いて……いなかったか」

「……っ、はい」


 殺されるほど、誰かに恨まれていたとは気づかなかったな……と呟くと、ライゼガングが首を振った。


「むしろ、好かれていましたよ。でも……国の総意として、殿下の排除が決まりました」

「そうか」

「申し訳、ありません」

「ライゼガング、この先に待つ未来は明るいのか?」

 

 そう聞いたとき、また大量の血を吐いた。そして耳が聞こえなくなった。

 泣き笑いのような表情をしたライゼガングが何かを言っていたが、そのまま意識が飛んでしまった――――。



 あのとき、あの男は何を言ったんだろうか。今となっては、聞いたところでどうしようもない気もするが。少し、気にはなるな。




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― 新着の感想 ―
結局は自分勝手だったのでしょうね。 眩しすぎる光が去った反動で影が濃く成りすぎた。 小さな良心によって保たれていた秩序が、主人公ごと切り捨てられた。 濁った水の安寧は、清水を注がれて乱れ、汚泥に成り…
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