11:入団と婚約打診。
「……は? 王太子と仲良くなったから、近衛騎士になる!?」
「はい。先日のお茶会で友だちになりました」
「どうやってだ。王太子は二四歳、お前は十歳だろうが」
どうやって……か。前世が兄だから、とは言えんな。ああ、そうか――――。
「クヌート、殿下の初恋を叶えました」
「初恋……だと?」
伯爵家の娘と両想いだったはずなんだが、繰り上がって王太子になってしまったことで、私の婚約者だったレベッカと婚約する羽目になっていた。
告白してこいと言ったら、大成功だったらしい。
「ニコラウス……もしやバルリング公爵家から婚約の打診がお前に来ていたが……それも関連しているのか!?」
ライゼガング侯爵の顔が引き攣っているが、まぁ無視でいいだろう。
「あぁ。一目ぼれだそうですよ。年齢は気にしないそうです」
「いや向こうが気にせずとも……」
「父上、女性の年齢に言及するのは得策ではないかと」
「限度があるだろうが!」
レベッカは確か今年で二二歳のはず。特に問題はないだろう。そう伝えると、ライゼガング侯爵が額に青筋を立て、ダンと机を叩いた。
「お前は十歳だろうが! 問題しかないっ!」
「そういう趣味の女性もいるということで、納得してください。巷では『おねショタ』というものが流行っているそうですよ」
「……おね……?」
どうやらレベッカは今世の私の顔も気に入ったらしい。かわいい娘だと思っていたし、まぁ吝かではないので受け入れようと思う。
あの煩さは嫌いではないしな。
「まぁ、そういうことで、来週には騎士団に入ります。その後、数年の見習い期間を経て近衛騎士に登用するとのことです。レベッカとの婚約の話は進めておいてください」
「……意味が分からん…………」
クヌートからもらっていた騎士団の入団許可書を渡すと、ライゼガング侯爵が頭痛がすると呻きながら頭を抱えたが、これも無視でいいだろう。
執務室を去る間際に「ハァ……エミーリアにどう伝えろと言うんだ……」と聞こえた。
――――母か。
ライゼガング侯爵の言うように、侯爵の頭痛などという些細なことよりも、母のことが問題だな。
母の私室を訪ねると、明らかにすねた顔をしていた。
「入っても?」
「…………ええ」
さて、どう言い訳するかな。この人には誤魔化した言葉は使いたくはないんだが、本当のことは言いようがない。
「報告に来た」
そう言うと、頬を膨らませて更に拗ねた顔をする母。そして、いつかこういう日が来るのは理解していたと呟いていた。
「まだ十歳じゃない」
「もう十歳だ」
「騎士の剣は貴方には大きいわ」
「女性騎士用のレイピアの扱いも心得ていますので」
この小さな体では確かに騎士の剣は重いし長すぎる。だが、レイピアであれば扱えるだろうと、ハイデガー卿と何種類か武器を変えて訓練していた。
「皆、私から貴方を奪うことに協力的なのよね……」
「あの男はそうでもなかったぞ?」
苦虫を何匹も噛み潰したような顔をしていたからな。
「旦那様は世間体でしょ」
「どうだろうな。お母様にどう伝えたらいいんだと頭を抱えていたぞ」
「っ…………そう?」
母の顔が一気に華やいだ。
あとはあの男の仕事だろうが、多少フォローはしておこう。
「前にも言ったが、私たちは母と子だ。この縁が切れることはない」
「うん」
母が涙目で抱きついてきた。
淋しくなると言われたので私もだと答えると、少し笑って「嘘つき」と言われてしまった。
わりと本心なのだがな?




