1:毒殺された。
前世のことはよく覚えている。
正義感に溢れた王太子だった。
正論を唱えれば、誰もがついてくると思っていた。
結果は、毒殺。
「だぅ……」
目の前で行われる自分の葬儀を眺めることになるとは、思ってもいなかった。
まぁ、目の前というか窓の外なのだが。全員が黒い服に身を包み、葬送の歌を歌っている。涙を流している者もいるようだ。
一昨日の朝、目覚めたら自分を毒殺した男の息子に生まれ変わっていた。
「きゃぁぁぁ! 坊ちゃまが窓にっ――――!」
せっかく起き上がって窓にぶら下がり外を眺めていたのに、侍女から抱きかかえられてベビーベッドに戻されてしまった。
高熱を出したあとから異常に動くようになったとかなんとか、乳母が侍女と話している。他にも王太子(私)が突然死だったとか、発見者は第二王子だったとか。噂好きの使用人がいるのは有り難く、相手は赤ん坊だから聞いていないだろうと、他にもいろんな話をしてくれている。
死ぬ直前、こうなったのは仕方ないが、悔しく思っていた気がする。清濁併せ呑むことがどうしても出来ず、敵を作りまくっていたせいだろうな。まさか宰相自らが手を下してくるとは思ってもいなかったが。
侍女たちの話しぶりでは、毒殺は伏せられたのか、病死と判断されたのかは分からない。しかし、あれだけ吐血していたのだから、病死と言うには無理な気がするのだがな?
いまは賢者タイムのような気持ちで世界を見れている。
両陛下や弟を悲しませてしまったのは申し訳ないが、私がそのまま王になっていたら、反発する貴族たちとの間に空いた大きな溝で、国が取り返しのつかない方向に倒れていたかもしれないなと思う。
「だぶぅぅぅ……」
私を殺したあの男――ライゼガング侯爵家当主であり、この国の宰相。あの男の息子に産まれ変わったのも何かの縁だろう。悪役の息子らしく、悪役令息として生きてやろうじゃないか。
私を殺したことについては、色々と思うところがあるので、今は保留するかな。ちょっとした嫌がらせをチクチクするのは楽しそうだ。
この体の本当の持ち主である赤ん坊は……たぶん高熱で死んだんだろうな。そこだけは同情してやるか。
さて、これからどうするかだが、ひとまずは成長するためにもしっかりと寝て、栄養のある食事を摂る必要がある。
確か息子が生まれたと聞いたのは半年前だったはず。ということは私は生後半年なのだろう。そんな赤子の出来ることは、限りなく少ないだろう。
とりあえずは頭の中で計画を練りつつ、情報を集めるためにも耳を澄ましておかねばな――――。
閲覧ありがとうございます!
一部に物議(ただの?短編詐欺←)を醸した短編を、長編化させました。短期間にはなるかと思いますが、しばしお付き合いください。
なんか面白そうだな、連載頑張れよ!と、そんな感じでいいので(いいのか?)ブクマや評価などしていただけますと、作者大喜びします!ヽ(=´▽`=)ノ