15:激闘!天下一武闘杯!
準決勝二試合目。
開始早々、【大胆不敵】のバーバラがカールがかった黒髪を振り乱して突進していく!
「はぁっ! 大胆不敵に真正面から! ぶっ潰すわ!」
渾身の飛び蹴り炸裂ッ! 顔面に受けてぶっ飛ばされる【血流操動】のチアンだが、倒れることなく、踏み止まった!
あんな強烈な蹴りを耐えるなんざ、やはり準決勝まで上り詰めた選手の功夫は仕上がっている!
加えて、どうも異名がその自力を底上げしているようた。
「俺の【血流操動】は血を操る! そして血を流せば流すほど……俺は強くなる!」
単純だが、納得がいく『拡大解釈』!
そしてチアンはにやりと不敵に笑うと、バーバラへと手を向けた。
「そしてこれまでの試合で! お前も多く傷つき血を流しただろう! ならお前の血さえ、俺は操れる! 喰らえ! 『血流操動』!」
手を向けられたバーバラは急に動きを止めた。チアンが何かしたのは一目瞭然だが……!
「なっ! きゃあああっ! 体が動かな……いやっ、ち、違う! 勝手に動くっ!?」
バーバラは、動きを止めたかと思えば、唐突に、チアンに背を向けて、観客の前まで躍り出た。
そして、なんと……!
一枚一枚、服を脱ぎだした?
「いやあああっ! み、見ないでっ!」
「これぞ俺の神力! さあ参ったと言え! 言わねば……ストリップショーでも始めるか? はははー!」
うっわゲスい! ドン引き!
バーバラの動きを封じた時点で勝負は決したというのに、あまつさえ、成すすべもなく屈辱的な負け方まで味わわせるとは、ひでぇ奴だな……。
バーバラも少しは抗い、脱衣のスピードを緩めることはできてはいるものの、その手は止まらない。単純な神力勝負でもチアンの方が勝っている。
バーバラは勘弁して、下唇を噛んで、奴の言う通りにしようとした。
「くっ……わ、私のギブ……!? ギ、ギ、アッ……!?」
「んんー? 聞こえんなあ?」
「え!? ちょ、待って! やめて、お願い! ギ……ア……ッ!?」
なんだ? 様子がおかしいぞ……?
バーバラはまだ抗っているのか? 端から見た感じは、悪いが対抗できそうには見えないのだが、ギブアップの声が聞こえてこない。
「何言ってる? 俺はもうやめてるぞ? 自分で脱いでるんだろお? 俺のせいにすんなよー! はははー!」
「いやあああっ! 誰か、止め、止めて、お願い……!」
……いや、やっぱおかしい!
あいつもしかして、体の中から血を操作して、ギブアップって発声できないようにしてんじゃねえか!?
あのバーバラの焦りよう、悔しがりながらも負けを認めていた姿勢からして、これは明らかに不自然だ!
チアンのクソ野郎……!
対戦相手を貶めるばかりか……、俺の仲間が頑張って開催したこの大会の品性まで損なわせるつもりか!
「流石にゲス過ぎるってこの野郎! 『凍て刺す慟哭』!」
「むっ!」
舞台の外から、ありったけの神力でもってチアンの異名を無効化する!
ようやく、バーバラは奴の魔の手から逃れ、ペタンと座り込む事が出来た。
「あ……ああ……うわーん!」
怖かったよな。女の子がこんな、田舎育ちの荒くれ武芸者ばかりが集まったこの大会で、独り名を上げるべく立ち向かったというのに、こんな終わりは、報われねえよな……。
大丈夫だ。
俺が勝手に、お前の仇を取ってやる!
なぜなら俺は今! キーファンの熱い魂を受け継いでいるからな! あいつならここでブチギレる! 俺だってそうだ!
『ふん、魔王め。いい奴ぶりやがって。お前にトドメをさしてやる。さあ来いよ、魔王!』
「やってやるぜ! 少なくともお前よりは超いい奴だし! 俺!」
まんまと挑発に乗って舞台へ飛び乗り、溢れんばかりの闘気を充実させる!
うおおおお! やってやるぜぇー!!!
「もうこのまま決勝戦行っちゃいましょう! レディーファイトー!」
アナウンサーが、俺の気合に負けじと大声でもって、開始のゴングを鳴らしたッ!