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二人の聖女 ③


どうしよう!


紗良は目を見開いて引き寄せられるようにフェルリアンさまを見つめた。


至高の麗しい存在を目の前にして……紗良は目が離せなくなってしまう。


ドクンドクンドクン……心臓の音が煩い。


不意打ちは反則です。神さま!


どうしよう。どうしよう。


死んじゃいそうなくらい心臓の鼓動が激しい。


突然、歩みをとめて固まってしまった紗良にジークリオンは怪訝そうな表情を浮かべた。


「どうしましたか? 紗良さま。」


無理! 無理! 無理!

これ以上推しに近付いたら本当に死んじゃう。

それに、それに……。

尊いフェルリアンさまに紗良なんかが近付いて良いわけがない。


「辞退させてください。」


「は? 何をですか? 」


ずっと恋焦がれてきた推しに遭遇して紗良の頭は、残念なことに沸いてしまったみたいだ。自分でも何を言っているのかさっぱり分からない。


「私、お部屋に帰りたいです。」


ジークリオンは困惑した。


なぜ急に紗良さまの様子がおかしくなってしまったのか。


「駄目です。さあ、皆さまがお待ちになっています。」


ジークリオンが、紗良の背に手をあて前に押し出した。


「そんな……。」


フェルリアンさまと同じ空気を吸ってしまっていると思うだけで呼吸が止まりそうになるのに。

愛して愛してやまないフェルリアンさまの傍に行くなんて!


思わず後退ってしまう。


「紗良さま、どうしたというのですか! 」


ジークリオンの声が耳に届くけれど……

紗良はこちらのやり取りを不思議そうに見ているフェルリアンさまと目が合ってしまい……更に取り乱してしまう。


晴れた日の凪いだ海のような美しい青い瞳が私を映してしまったとしたら、フェルリアンさまの目を汚してしまう! 何て罰当たり……。


「ジークリオンさま、恐れ多くてむりなのです! 」


紗良はもうどうしようもなく胸がドキドキして苦しい。

だって、毎日彼と会うためだけにゲームをしていた。彼のルートだけ何十周もした。

画面越しの彼から微笑みかけて貰うだけで、蕩けるように幸せで天にも昇るような気持ちになった。

だから……

無理なんです。

どうか、遠くからフェルリアンさまを眺めるだけにさせてください!

愛しすぎて耐えられない。


「ちょっと、あなた! いい加減にしてくれない? 」


紗良を咎めるように、黒い髪をハーフアップにした女の子が言った。


口調の強さに紗良はビクッとした。

それが功を奏したのか紗良は少し落ち着きを取り戻した。


すっかりフェルリアンさまに気を取られ過ぎて忘れていたが、彼の隣にその女の子は座っていた。


彼女は、黒い瞳で綺麗な顔をしていた。


「あなたも日本人なのでしょう? 同じ日本人として恥ずかしいわ! 察するところ……あなたも『月光の贄姫』をプレイしたことがあるのかしら? 」


え? あ……。


この人ももしかして、私のようにここへ召喚された?


綺麗な顔だと思ったが良く見るとすごい美人だった。


「早く、こちらへ来て座ったら? いつまでも、もたもたされると迷惑よ。」


性格は結構キツそうだ。紗良にとって少々苦手なタイプかもしれない。


紗良はものすごく渋々大きなテーブルの席についた。

フェルリアンさまの前は絶対に耐えられないと思ったので、ジークリオンに座られる前に急いで女の子の前に座った。

それでも、近い。フェルリアンさまとの距離が近すぎる。

できる限りフェルリアンさまを見ないように視線をさ迷わせ……最終的にテーブルを見たところで、ジークリオンが口を開いた。


「お待たせして申しわけありません。改めまして、私はジークリオン・オブリージュと申します。そして、こちらがこのフィレーネ王国の第一王子フェルリアン・ノルディ殿下です。殿下のお隣にいらっしゃるのが、山本真理亜さま、私の隣にいらっしゃるのが月山紗良さまです。真理亜さまと紗良さまは此度の召喚でこの国にお越しいただいた聖女さまです。」


やはり自分みたいに召喚されたのかと紗良はテーブルから視線を真理亜に移して思った。


「それで、聖女さまが、何故二人いるの?ジークリオン。」


紗良は思わず耳を擽る美声にゾクゾクして悶えそうになった。


フェルリアンさまの生声……ヤバい。


「本来なら一人だけ召喚されるはずでしたが、何か手違いがあったようです。歴史的にみても聖女さまが二人いらっしゃったことはありませんから……これから調査する予定です。」


「そう。間違いの無いようにしてね。」


フェルリアンさまの声に魂を持ってかれそうになりながら……紗良は、凄まじい推しの破壊力に耐えていた。

読んでくださりありがとうございますm(_ _)m

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