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草稿弐綴り 【WEB】  作者: 雨澤 穀稼


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噓の劔 草稿

挿絵(By みてみん)

デザインワークス:アホリアSS様


   噓の劔 草稿


 ここは奥深い山々を通り抜ける、峠の壱本道(いっぽんみち)

 どうどうと胸を張り歩く男がいた。

 体脂肪率数パーセントにまで絞り上げられた、その見事な出で立ち。

 細マッチョさんが峠を越え、最後の難関に差し掛かろうとしていました。


「おい! あいつなんでパン(いち)なんだ?」


「可哀想にな? 俺らみたいな追い剥ぎにあったんだろうな?」


「みるからに痛々しいよな? 可哀想だよな?」


「どうする? 見過ごすか? あのパン(いち)?」


「パン(いち)だろうがなかろうが、見過ごす訳にはいかねえな?」


「でも、パン壱(なん)ですぜ? あの野郎?」


「ふん! 何度言わせんでい! パン(いち)だろうがな、パン(いち)で無かろうが俺っちの前を素通りはさせねえってことさ!」


「流石に頭はえげつねぇですぜ! あのパン(いち)野郎もこれ以上は取られるもんねえと胸張ってますもんね!」


「おい! そこの(あん)ちゃんよ! ちょほほ~いと待ちなはぁはあ!」


「何奴?」


「名乗るほどのもんじゃねえよ! 置いてくもん置いてとっとと失せな?」


「ふん! 貴様らのような輩に渡すとでも思っているのか?」


「威勢のいいこったな! 何をそんなに息巻いてやがんでえ?」


「そうだそうだ! 痛い目にあいたくなかったら素直に言うこときくんだな?」


「おっ……おのれ! 狙いはこの魔剣、噓の劔か? 良く分かったな? わたしが持参していると……?」


(かしら)? あいつやべえ奴ですぜ? パン(いち)で魔剣とかほざいてますけど?」


「あっしも関わっちゃいけない危険な香りがしてますが?」


(かしら)関わらない方がいいんじゃねぇですかね?」


「うるせえ! 腰抜けどもは引っ込んでな、 壱端(いったん)男の子が口にしたことはな! 何人(なんびと)足りとも曲げられねえんだよ!」


「はあ……(かしら)(こじ)らせはじまっちゃったよ?」


「いいだろう! その魔剣とやらを、ここに置いてってもらおうか?」


「くっ!  な……何て事だ、これは魔都の鬼を斬る為、遠く西北の彼方へと出向き噓の国へと訪れ、噓の山々を巡り巡りして(いっ)ヶ年、噓の玉鋼を探し出しそうらえど、どうするこも出来ず途方に暮れし時、水の精霊に教えられして、噓の清水に更に壱年(いちねん)漬け込んみて、あちこちとんかち駆け巡りたどり着きし嘘源郷噓、その腕利きの噓劔専属鍛冶師にトンチンカントンチンカンと打ち出され、噓の劔研師により幾年にも渡って何度も何度も研ぎ抜かれた逸品なるぞ! 貴様らなんぞに渡すはずはなかろう! 劔の錆びと消えたくなければさっさと立ち去るがやかろう!」


「長々長々のたまわりやがって! ふん! おれっちはな! 壱度(いちど)狙ったもんは、必ず手に入れてんだよ!」


「そうだそうだ!」


「どんな手を使ってもな?」


「そうだそうだ! あの毛むくじゃらの腹黒さなんだぞ!」


「てめえらうるせえぞ!」


「すいやせん……」


「その魔剣とやらを置いてってもらおうか?」


「頭(かしら)? 彼奴の口車に乗っちゃ駄目だすぜ! 彼奴は無壱文(むいちもん)のパン(いち)なんですから!」


「うるせえ! 壱度(いちど)はいた唾は飲み込めねえんだよ!」


(かしら)とやら? その言葉に噓偽りは無いのだな?」 


「ああ! 御天道様に誓って嘘偽りはねえ!」


「そうだそうだ! (かしら)は嘘は言えねえストレートピュアハートなんだよ!」


「魔剣噓の劔を渡せば、ここを通してくれるんだな?」


弐言(にごん)はねえ! とっとと置いて何処へでもいきやがれ! とっつぁんぼうや!」


「そうか! では、はい! どうぞ! これ、うけとってね!」


「えっ……? そんな素直に躊躇せずに渡すのか?」


「早く! 早く! 早く受け取ってよ!」


「あっでも……どうやって?」


「お手々だして! 両手で受け取ってね!」


「あ……ああ? こうか……?」


「はい! どうぞ! 確かに渡したからね! 後から追いかけてきて、受け取ってないとか無しだかんね!」


「あ……ああ……」


「じゃっ! 通してもらうね? 文句ないよね? 行っていいよね? 魔剣噓の劔受けとったよね? 男の子に弐言(にごん)はないよね?」


「ああ! 確かに魔剣噓の劔は受けとった! とっとと立ち去れ!」


 ぺこり! と、綺麗な壱礼(いちれい)をして細マッチョさんはすたこらさっさ壱目散(いちもくさん)に駆けてゆきましたとさ。


「頭(かしら)! まんまと壱杯(いっぱい)喰わされましたね?」


「うるせえ!」

挿絵(By みてみん)

デザインワークス:島猫。樣


挿絵(By みてみん)

デザインワークス:なないろかめれおん

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