鉄縁蜻蛉眼鏡のせこうさん 草稿
鉄縁蜻蛉眼鏡のせこうさん 草稿
せっせと せっせと汗をかく。
せっせと せっせと。
だらだらだらだら汗をかく。
真っ黒に日焼けした ひとりのおとこがいた。
せっせとせっせと ぼりとぼとりと汗たらし。
染み入るグラウンドに 時重ね 時を刻んで来た。
真っ黒に日焼けした ひとりの心はおとこのこがいた。
「せこうさん! もう上がられますか?」
「おう! いいとこ来た! こっち来い色男!」
「もう、その呼び方はよして下さいよ?」
「マウンド……やってみろ!」
「えっ? いいんですか……色男にはまだ早いって? いってたじゃないです? 昨日もですよ……?」
「つべこべ言わずに! いいから! やってみろっつってんだよ!」
深々と頭を垂れて……。
「ありがとうございます! 勉強させていただきます!」
男はせっせと汗をたらす。
壱生懸命せっせとせっせと汗をたらす……。
真剣なまなざしのふたり。
「よし! 良いだろう! 後は任せたぞ!」
「何も言わず、これを受け取ってくれ!」
「えっ? せこうさんの鉄縁蜻蛉眼鏡じゃないですか?」
「これからはお前のもんだ! おれも前任者から預かったんだよ!」
「えっ? これ? レンズ無いですけど?」
「仲本式だからな? おれの師匠の仲本さんから直接頂いたものだ!」
「あっ! ありがとうございます!」
「後出切るな! 俺はお役御免になっちまったな……?」
せこうさ~ん! お別れパーティーの準備中できましたよ~っ!
「は~いすぐにいきますから~っ!」
「えっ? 夕方からって聞いてましたけど?」
「じゃあな! 後は任せたぞ! 色男!」
男は汗をだらだらたらして去ってゆく……。
ひとりのグランドの勇者が去ってゆく。
「えっ? パーティー俺もでたいんですけど? 会費払いましたよ? 大間の鮪の解体ショー見たいんけど?」
「色々と大変だろうが、頑張んな! 色男!」
グランドの勇者は片手を軽く上げ、その背中に哀愁背負って去ってゆく……。
「そんな~あせこうさ~ん? 最後までやりきりましょうよお!」
熱さの夏はもうそこまで来ている。




