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魔法少女だった彼女達へ  作者: 文字塚
呪われた占い師
8/22

第8話 二十歳です

 きたか!


「うん、うん日本だ、これ日本だと思う」


 思うでは困る。凄く似た別の異世界だった時、ちょっと場馴れしてるだけに過ぎない。


「すまんが、これは私も見ていいものなのか?」

「ダメっ! 仕事中です、ご遠慮願います」


 キッと睨まれては、そういうものかと納得するほかない。


「ああ! ほんと良かったー、これ大丈夫だと思う!」

「思うではなあ」

「ごほん、日本です。四分の一引けたら、帰れます。だって、通天閣があるもん」

「またガラの悪いところに……足代どうするつもりだ。というか一泊だろそれは」

「しようがないんです、帰れたらいいの! イケメンなんだから、文句言わない!」


 イケメンは文句を言う権利がないのか。知らなかった、世のイケメンに不満はないのだろうか。いつか爆発して、暴動とか起こしそうだが。世界のイケメン達の忍耐には感服するほかない。


 こちらも今は忍耐が要求されている。

 無事戻れるのなら、なんだっていいのだ。

 彼らに比べれば大したことはない。

 結果が出るまで、俺達は待った。

 強い日差しを受けながら、うまくいって欲しいとただただ願う時間が続いていた。


 ーー結局大阪には飛べなかったが、散々苦労した結果元の場所に戻れそうになった。


「よ、四分一ですから、次は大丈夫だと思う」

「大丈夫だ問題ない。野生な奴も危険ではないようだし」

「良かった……私足遅いから」


 速くても獣には勝てない。

 それはともかく、


「もう零時になってしまってる。君には本当に申し訳ないことをした」

「いいですよ、大丈夫。次こそ飛べます。私達は飛べる! きっといつか飛べるから!」


 やばい宗教にハマった奴みたい。いや、クスリだろうか。やばい呪いなのは間違いないんだが。


「しかし、ご両親にどう顔合わせすればいいのやら。私が心から謝罪しよう。分かってもらえるまで謝るよ」

「いいですって。というか、私子供じゃないし……」


 いつまでその設定でいくつもりなのだ。

 働いている時点で、誤魔化したくなるのも分からんではないが。


「無理するな。年などいずれ取る」

「あのですねぇ……」


 と、彼女は膨れっ面をつくってみせた。

 それから胸を張り口を開く。


「私、二十歳です」

「精神年齢?」

「肉体です」


 生々しい言葉をチョイスするな。身体と言え身体と。いやこっちも大概だ。社会的構成員として、とか? うーむ、迂遠(うえん)で伝わりにくいな。日本語は難しい。

 今は置いておくとしよう。問題は別にある。


「馬鹿言ってはいけない。こんな二十歳どこを探してもいない」

「いますよ目の前に」


 全く、どうして年上に見られたいのだ。

 年齢が上だとマウントでも取れるというのか。

 うん、取れるな、散々やっていたような気がする。

 これはダメな教訓を与えたかもしれないが、事実を塗り替えるのはよろしくない。


「君、そういう嘘をついていると地獄で閻魔様に半殺しにされるよ」

「なんで閻魔様そんな厳しめなんですか……」

「日本ではそういう教えなんだ。だからみんな嘘をつかない」

「つきまくってます」

「文句は政治家に言ってくれ。少なくとも私はつかないよう努力している」

「はいはい、分かりました。お客さんは中身もイケメンです」

「大人と言ってくれたまえ」


「はぁー」と彼女は今日だけで何度も見たため息をつく。


「どうしたら信じてもらえるのか」

「占い師などという怪しげな職業から足を洗えば考えよう」

「職業否定しないで……」

「すまない、大人はずばりだ。心理カウンセラーと占い師のどっちを信じる」

「出来ればどちらも」

「資格が必要ないと言ったのは君ではないか」

「結構持ってる人いますよ、占い師で心理カウンセラー。似たような仕事だし」

「しかし君は持っていない。そもそも取れる年齢でもない」

「もーっ、お客さんほんとしつこいっ!」


 なんでキャバ嬢に迫る迷惑客みたいな扱いされてるんだ。全く、近頃の中学生は。


「身分証を見せるんだ、信じて欲しいというのなら」

「出た倒置法」


 そういうつもりじゃない。


「ていうかですよ、身分証なんて軽々しくーー」


 --また突然のことだった。

 景色が一変し、見慣れたシャッター通りがはっきり見て取れる。なんと薄暗くみすぼらしい、格段の差だ。


「帰れた……」

「うん、帰れたな」


 元の場所からほんの少しずれているだけ、素晴らしい精度だ。彼女の占いもかくあって欲しい。

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