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魔法少女だった彼女達へ  作者: 文字塚
呪われた占い師
6/22

第6話 呪い発動

 とにかく相手は年下、調子を合わせるとしよう。


「なるほどそれは困る!」

「そうですか?」


 そんなことないよ。


「で、他は」

「もう一つが大問題で」

「いいよ言ってしまおう。間を置かずサパッと頼む」


 促すと、


「今から異世界に飛ばされます」


 ……そうか、それは反応に困るな。


「なるほどそれは困る!」

「そうですよね……」


 なんでそんな深刻そうなの。

 ゲームや小説じゃあるまいし、異世界とはなんのことだ。頭が異世界になるのならちょっとした恐怖だが、飛ばされるなどあり得ないではないか。


「異世界の定義が分からない。それはあれか、最近流行り過ぎて食傷気味の例のあれかい?」

「そうです、ネット小説で乱造されている例のあれです」


 彼女も読んでいるのか。私の友人も読んでいるらしいが、正直悪役令嬢とかざまぁとか異世界転生とか聞いていると、一体なんの大喜利大会なのかと不思議になる。

 全く縁がないのでさっぱりだ。


「飛ばされるのかーそうか、それは参った」

「あ、あくまで四分の一ですから!」

「うむそうだな。その一を引かない限り問題なさそうだ! そしてまだ飛んでいない。つまり問題ない!」

「そうだといいんだけど、私の呪い本物っぽいから……」


 っぽいのか。本物と言い切ったら医者を勧めるところだった。


「何も起こらない。呪いもない。万事解決したのではないだろうか」

「そ、そうですね。もう少し様子を見て、それから料金をいただくことにします」

「うむ」


 金取るんだな。アドバイスした身だが、さすがにこれで懐が痛むのはちょっと抗議したい気持ちだ。なんの、大人は吐いた唾は飲まん。広島県民ではないが、それが大人の定義である。


「ところでだ、帰りはどうするのだ。時間も時間、親御さんも心配しているーー」


 世間話ついでにさすがに帰った方がいいと促すつもりだった。

 その時である、異変が起きたのは。


 眼前に、大自然が広がっている。

 見れば稜線(りょうせん)、山々が連なり、白い雪が山頂を飾り輝いていた。

 草原は遠くまで広がり、緑が映え日差しがとても明るい。

 物憂げなシャッター通りとあまりに異なる、異なり過ぎる。

 なんて眩しさだ。


 しばし呆然と立ち尽くすことになったのは、言うまでもない。


 ――時間はかかったが、ようやく頭が働き出した。


「どういうことだこれは……」

「ほ、ほんとに来ちゃった……」


 え、人の声ってか、


「君もいるのか!」

「ええ、なんか私もついでに飛ばされたみたいな……」


 隣に彼女が立っていた。明るい場所で見る彼女はまた違った印象を受けるが、今はそれを語っている場合ではない!


「き、君実はマジシャンだったのか。なんて大がかりな」

「こんな大がかりなマジック出来る人いたら世界がひれ伏します」


 的確な指摘、意外に冷静だなおい。


「これがあれか、最近聞くメタバースという奴か。なんて大がかりな」

「そんなマシンどこにもないです。そうだったら良かったんですけど……」


 これも違うのか。ではなんだと言うのだ!


「こうなるかもって、だから嫌だったのに……」


 その口振りは、彼女の占いが現実と化したと言わんばかりのものだ。そんな馬鹿な、こんなことあっていいはずがない。

 というか、さりげに俺へと責任転嫁してるようにも聞こえる。大人である以上今は責任を取るが、いやどう取れというのだ。俺の中の大人が音を立てて崩れていくぞ。


「本当の本当に異世界とやらなのか」

「本当みたい」

「なぜそう言い切れる! 夢かもしれないだろう!」

「二人して?」


 ないか、ないな。あるなら一人だ。


「どうしてこうなった!?」

「ああもうっ、これが見えてたからやりたくなかったのに!」

「見えていたのか?」

「見たままだよ、これが水晶に映ってた!」

「君もいた?」

「正直いた」


 じゃあ、ついでじゃないじゃん。当事者じゃん。

 カナタと名乗る彼女のいい加減さはともかく、解決を目的としていたのに、一体これはどういうことか。

 呪いも異世界も、実在するというのか?

 とても信じられない。

 大人として、俺はどうすればいいのだ。 

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