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やりきれないひとへ

作者: 根上真気

散文的なショートショートです。

    ~やりきれないひとへ~

 


「ねえねえ、おねーさんは、なんでわらっているの?」

「楽しいからよ。楽しくて笑っているの」

「たのしいと、わらうの?」

「そうよ。楽しいと自然と笑顔が溢れるの。楽しいって、いいものね」

「たのしいっていいもの?ふーん」



「ねえねえ、おにーさんは、なんでわらっているの?」

「楽しいからだよ。楽しくて笑ってるんだ」

「たのしいの、すき?」

「そんなの好きに決まってるだろ。人生楽しまなきゃ損だろ」

「じんせいたのしまなきゃそん?ふーん」



「ねえねえ、おねーさんは、なんでおこっているの?」

「許せないからよ。あの人は自分の事しか考えてないの」

「おこってるから、ゆるせないの?」

「ううん、許せないから怒っているの。あんなの理不尽よ」

「りふじん?ふーん」



「ねえねえ、おにーさんはなんでおこっているの?」

「気に入らないからだよ。あいつらは、まるでわかってないんだ」

「きにいらないと、おこるの?」

「あいつらが馬鹿過ぎて怒ってるんだ。あんな奴ら死ねばいいんだ」

「しねばいい?ふーん」



「ねえねえ、おねーさんはなんでないているの?」

「悲しいからよ。悲しくてしょうがないの」

「かなしいと、なくの?」

「そうよ。悲しいから、辛いの。辛くて苦しいの」

「かなしいと、つらいの?」

「辛いわ。とっても。そして、寂しくてたまらなくなるの」

「さびしくてたまらなくなる?ふーん」



「ねえねえ、おにーさんはなんでないているの?」

「悔しいからさ。やってもやっても、うまくいかないんだ」

「くやしいと、なくの?」

「いくらやってもうまくいかなすぎてさ。惨めで、情けなくて、悔しくて」

「うまく、いかないの?」

「ああ。一向にダメさ。いつまで経っても。誰にもわかってもらえないんだ」

「だれにもわかってもらえない?ふーん」



「ねえねえ、おねーさんはなんでわらっているの?」

「悲しいからよ。毎日、悲しいから」

「かなしいと、わらうの?」

「そうよ。生きる事って、哀しいの。だから、笑うの」

「うーん、わかんないよぉ」

「そうね。あなたにはまだわからないかもしれない。でもね、いずれわかるわ」

「ほんとに?」

「ええ。だからいずれわかった時、おねーさんを思い出してね」

「うん、わかった」



「ねえねえ、おにーさんはなんでわらっているの?」

「苦しいからだよ。毎日、苦しくてしょうがないからさ」

「くるしいと、わらうの?」

「ああそうさ。人間っていうのは寂しいいきもので、人生は孤独で苦しいんだ。だから、笑うんだよ」

「うーん、わかんないよぉ」

「まだ君にはわからないかもね。でもね、いずれわかる時が来るよ」

「ほんとに?」

「ああ。だからいずれわかった時、おにーさんの歌を聴いてね」

「うん、わかった」



「ねえねえ、なんでそんなにむひょーじょーなの?」

「疲れたからさ。色んな事に」

「つかれると、むひょーじょーになるの?」

「うん。すり減らして、すり減らして、疲れきってしまったんだ」

「うーん、よくわかんない」

「わからないで済むなら、それが一番いいかもしれない。俺はね、疲れて、もう何もかもが嫌になったんだ」

「わかるように、なるのかなぁ?」

「なるかもね」

「ほんとに?」

「うん。でもね、わかるようになったその時は、決して自暴自棄になってはいけないよ。自分を大切にするんだ。捨てたものは二度とかえってこないから」

「よくわかんないけど、うん、わかった」

「うん。だからその時は、俺に会いに来てね。それか、俺が会いに行くよ」

「うん、わかったよ」

「じゃあね、バイバイ」

「うん!バイバイ!」

 当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

 感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

 気に入っていただけましたら、今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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