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第八話 拒否いたします!

俺はもう10歳となり、魔法も上級レベルぐらいになった。

自室にて、魔導書を読み漁っていると、扉がノックされる。「はーい」と返事をすると、扉が開かれ、父様が入ってきた。


「どうかしましたか?父様」

「もう10歳だろ?来年から学院に通う年齢だから、その話をしておこうと思ってな」

(そうか、もうそんな歳なのか)


そう思いながら、父様と一緒に学院のパンフレットを見ていた。

『月の令嬢』に出てくる、学院といえばパルラス王国にある、リジル学院。王国内では名門校である。

貴公子や令嬢たちが通う、貴族ならではの名門校である。

そこには月の令嬢と呼ばれている、セレーネも通っているのだ。


そんな話を父様としている翌日。俺はフレットと一緒に再び王都へ来ていた。

この日は何やら、王国の人たちは騒がしいモノだった。何があるのか、フレットに聞くと、


『今日はパルラス第二王子様のお誕生日ですからね』


と言っていた。そういえば、そんな時期だったのか、と思いつつ、王都の市場へと向かう。


(おぉ、りんごみたいな見た目…)


りんごみたいな見た目は、そのままリンゴというらしい。そこら辺は小説設定の一部らしく、その他の果物もそのまま日本と同じ言い方。


(りんごを買えば、アップルパイができる…)


大好物である、甘い系のお菓子。フレットに告げようとした時、フレットの様子がおかしいことに気づく。


「どうしたの?」

「誰かに見られているような気がしまして……」

(えっ、まじか)


誰に見られているのか、魔力感知で見ると、確かに魔法の流れを感じる。

その場所を辿ると、どうやら人影が見えた。


「フレット、市場の裏影に人影発見。何者か分からないから、注意して」

「……了解です。お嬢様」

(逃がさないから)


フレットに任せればいいと思い、魔力感知でその動きを見る。


(………!?この格好って……)


見たことがある格好をしていた。そんなおじさんの格好は、姉が見せつけてきたのだ。コミック版で。


(確か、あの格好…。まだ若いが、間違いない!奴隷商……。幼少期の頃に、ノイーズと会っていたのか)


姉が見せつけていた、前世の記憶。

確か名前が……ドルマン・ハイゼル。

極悪人だ。


(なんで俺たちを……?)


魔力感知で動きを見ていると、どうやらフレットがその奴隷商を、追いかけ回していた。

路地裏に回り、その正面には———、


(———!?まずい……!)


小さい女の子がいた。ボロボロの服を着た。だが、あのハーフアップの髪。あれは、間違いない。セレーネだ。


(推しが危ない!!)


俺はそう思い、先回りをするため、『空間移動ワープ』を使い、その幼少期の頃のセレーネの場所へとワープをする。


ーーーーーーー


空間移動ワープをすると、当然現れた俺にびっくりし、幼少期の頃のセレーネは驚いていた。

推しが尊い……じゃなくて、俺はそんなセレーネに手を差し伸べる。


「大丈夫ですか?」

「え、う、うん」


手を取ったセレーネの瞳は、潤いでいた。

やばい、超絶可愛い!

と、俺が男だったらそう思っただろう。だが、俺はノイーズ。女の子だ。セレーネに早々に会えるとは思っても見なかった。

小説の世界では、確かセレーネと会ったのは、学院に入学した頃。

それがまさか、幼少期に会うとは、思っても見ない。


そんな時、後ろから奴隷商とそれを追いかけている、フレットが現れる。

形相な顔付きで追いかけているため、爽やかイケメンが台無しだ。


「あ、あの人たちは…?」

「大丈夫。私がなんとかするわ」


そう言うと、セレーネを一旦離れさせ、俺は中級魔法を放つ為、片手を前に差し出し、こう唱えた。


「『幻影炎ファントム・フレーム』」


と。幻影で作られた、炎は火炎玉の様な形で、奴隷商のドルマンにあたる。だが、怪我はしない。

何故なら、幻影。偽物の炎だからだ。


(推しを守れた!これで好感度は爆増したはず!)


とか、思っていると、フレットはそのまま俺を怒鳴る。

まぁ、そうだよね。今の俺はノイーズ。子爵家の令嬢だ。そんな令嬢と執事兼護衛役のフレットは手汗を握るぐらい、焦ってしまうのだろう。

ごめんなさい、と謝り、フレットは気絶したままのドルマンを抱え、壁際に置いた。


「大丈夫ですか?」

「は、はい。ありがとう…ございます」

(やばい、推しが目の前にいる…。まだ夢の様だ!)


まさか、幼少期のセレーネに会えるとは、夢にも思っていなかった俺は、心臓がバクバクしている。

だが、一旦落ち着け。俺はノイーズ。ノイーズ…。そう、ノイーズなんだ。


だが、ひとつだけ妙なことに気づく。セレーネは公爵家の人間なはず。なのに、どうして見窄みすぼらしい格好をしているのか。

やはり、小説の内容と全く異なる。


「あの、あなたお名前は?」

「せ、セレーネと言います…」

「そう!素敵な名前ね!ねぇ、セレーネ。私とちょっとお話ししない?」

「え、で、ですが……」


そう言い、遠慮がちで言った。俯きながら、ぶつぶつと言っていた。


「どうかなさったの?」

「わ、私は商品だから……。だから、貴族様とお話しするなど……」

(ヘ?!商品!?誰が!!)


セレーネの話を聞く限り、セレーネは先程の奴隷商の元から逃げ出そうとし、路地裏に居たとこのこと。そして、奴隷商は大事な商品に逃げられた為、ノイーズを代わりにしようと企んでいたらしい。


(なんとも悪党なんだ……)


奴隷商に捕まり、商品となっている人物は他にもいるらしい。

もちろん、俺はなんとかしたい、と思ったが、フレットに止められる。


「どうして?」

「お嬢様を危険な目に合わせる訳には参りません。なので、ここは元騎士出身である、私にお任せくださいませ」

「………嫌だ」

「へ!?お嬢様!?」

(推しが、こんな目にあっんだ。もちろん、推しのためだけじゃない。ただの自己満!)


もちろん、フレットから「考え直してください!」だとか、「お嬢様危険です!」だとか、言われたが、ノイーズは本来なら我が儘設定なのでね。


そこは拒否致しまします!


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