第二話 なんとも不便だ
この世界に転生し、ノイーズお嬢様と呼ばれるようになってから、一年が経過する。
歩けるように練習したり、喋れるように練習したりしたが、なんとも不便だ。全然出来ん。
昔の俺がどのように歩いているのか、もう覚えているはずがない。いや、絶対だ。まぁ、なんとかなるだろう精神で生きているが。
「ノイーズお嬢様。朝ごはんができましたよ」
あぁ!朝ごはん!母さんが作った朝食も美味しかったが、この世界の料理は絶品だ。
食堂の方から良い匂いが漂ってくる。そこへ行くには、まだ一人でこなせない為、メイド長さんに抱っこをしてもらいながら、運ばられて行った。
めちゃくちゃ楽〜と思っても練習は、しっかりとする。
「ノイーズ、おはよう。ゆっくり眠れたかな?」
コクっと頷くと、俺の父親であるアーバン子爵は笑顔となった。俺の父親にそっくりだが、親は全員そうなのであろうか。
「ノイーズ、今日はピクニックに出かけましょうか」
あぁ!ピクニック!
またもやコクっと、頷く。そうすると、アーバン子爵婦人であり、俺の母親はいい笑顔となった。
母親は謎に安心してしまう。それは赤ちゃん全員に言える事なのだろうか。
一歳用に作られた、朝食が目の前にあり、美味しそうな湯気が漂っている。どうやら、今日の朝ごはんはパンにミルク。
まぁ、このぐらいの年齢なら、そうだよなぁ、とか思いつつ、それを口に運ぶ。
おぉ!どうやらバターで味付けをしたようだった。
パンにはバターで焼いたみたいであり、バターの風味が口一杯に広がる。
そしてミルクが入っているコップを、口の中に運びゴクゴクと飲むと、追い討ちをかけるかのように、ミルクの濃厚さがバターとミスマッチをし、さらに美味しく感じる。
はぁ〜………幸せ………。
「お口に会いましたか?」
「………うゆ」
なんとか返事をしようかと思ったら、そんな声が出た。本来なら言わないであろう、そんな言葉を口に出したが、今は仕方ない。うん。
そうすると、何やらメイドさんが、尊いと言いながら、拝んできた。
そんな時、ビビッときた。この人変態だ。と。
やっぱり、赤ちゃんは罪だね。
ーーーーーーー
朝食を食べ終わり、30分休憩した後、ピクニックに行く準備に取り掛かっていた。俺はメイドの人たちに着替えさせられ、こりゃまたオシャレな私服に着替えさせられた。
こんなお洒落な衣装は、きっと21世紀で着れば変な人に見られるだろう。
小さいドレスで、キラキラな宝石らしきものが付けられていた。
「ノイーズ様、お似合いでございます!」
「あぁ、流石はノイーズ様!とてもお可愛いですわ!」
「流石ですわ!ノイーズ様!」
メイドさんたちは、褒めているが、結構恥ずかしい。スカートというのを履いた事がない俺は、少しスースーしてしまう。だが、今の俺は鉈橋詔ではない。ノイーズ・オーバンなのだ。
あの悪役と呼ばれている、あの令嬢に転生したが、正直あんな未来はごめん被たい。
もう死は体験したくない。寿命で死ぬ以外!
と、死に対することに関しては、もう懲り懲りだった。
ーーーーーーー
その後は両親の元へと行き、一緒に子爵家の外にある庭へ行く。
庭には花壇が多くあり、花は咲き誇っていた。
彩緑であり、赤に黄色、青に白などの花も咲いてあった。
どうやら、これは全て母様がやったらしい。
「さぁ、この辺にいたしましょうか」
「そうだな。さ、ノイーズ。どうだい?我が家の庭は」
と、俺に聞いてきた。そんなの言われなくても、答えは決まっている。
「き、えい」
綺麗だ。と、言おうとしたが、やはりまだ舌が回らない。
なんとも不便なのだろう。だが、昔の俺もそうだと思うと、
父さん、母さん、育ててくれてありがとう。
まぁ、死んじゃってまた死んじゃって、今に至るけど。なんて思いながら、木陰の方は今の両親とともに行き、晴天な青空の元はレジャーシートを敷き、その上に乗った。
メイドの方達が作ってくれた、美味しそうな弁当を見ると、お腹が鳴ってしまいそうだ。
「さ、食べましょうか」
「そうだな。ノイーズ、おいで」
父様にそう言われ、俺は大人しく父様の膝の上に乗った。
「あらあら、うふふ。ノイーズはあなたに夢中なのね」
「マンマも…」
「あら、私も?嬉しいわぁ」
最高の笑顔を見せる両親を見て、この人たちは子供が好きなのかなぁ、と思った。そうでなければ、一緒にピクニックをしようだなんて、言うだろうか。
いや違う。両親は家にいる時間が多い。その為、その分構う事ができるのだ。
うん、最高だね。しかも、まだ一歳だし。
弁当の中にはおにぎりや卵焼き、ウィンナーと最強組み合わせオンリーだった。
おそらく、俺と姉がその場にいれば、多分一瞬でなくなる。高校生である為、育ち盛り真っ最中である。
とにかく、今日はのんびりしよう。