第9話 呆気ない真実
アブソルート・ディザイアを閲覧していただきありがとうございます!
第2章はここらへんで折り返しですかね! ここからは終盤戦になります!
よろしければ最後まで読んでくださると嬉しいです!
魔力をかなり使い眠ってしまったフォルカが気が付いた時には、すでに朝になっており、公演は中止になったようで、事件の片づけと原因を探るために色々行われていた。
フォルカも起きてから、片付けを手伝い終えた後、『嫉妬』を呼んで事件解決のために再びサンドラに話を聞こうと思ったところにちょうどサンドラと遭遇する。
「あら…探したわ、着いてきて」
「俺も探してたんだよ…」
いきなり着いてきてって本当に生意気なところがあるな。
『嫉妬』は小声で『昨日とは気配が違うね』と教えてくれたけど、確かに何か吹っ切れたような表情をしている。
俺たちはサンドラの後をついていき、片付けが終わって誰もいない時間帯のはずの倉庫にやってきた。
そこには男性の劇団員が4人ほど待っていた。
「なんのつもりだ?」
「…これでいいわね」
パンッ! と手を叩いて全員の注目を集めるサンドラ、全員の視線が集まったことを確認して淡々と話し始めた。
「最近起こっている劇団員が魔物になる事件…もしかしたら私のせいかもしれないの」
ーーざわっ
フォルカとサンドラ以外の4人の劇団員が驚いたようにざわつきはじめる。
「ど、どういうことだよ? サンドラちゃんが何かしたのか?」
「私のあげたクッキーを食べた人、正直に手をあげて」
4人全員が手を挙げる。劇団員たちは自分が魔物になってしまう未来が見えたのか震え始める。
「い、いやだぁ!」
「う、うそだろ!」
「まだ決まった訳じゃないわ…聞いて頂戴」
サンドラは一度深呼吸すると話はじめた。
5日ほど前に、とある客から声をかけられた。貴方がメインでないのは可笑しい、他の劇団員が貴方以外の誰かを押したいがために贔屓されている可能性がある。誰かの呪いの影響ってのも考えられる、と。
分からんけどなんとなく狐面っぽい話だな。
「フィオナの呪いを誰も知らないからもしかしたらと思ったの」
サンドラさんは申し訳なさそうに話を続ける。
「みんなにチヤホヤされるフィオナが気に入らない感情も、もちろんあったわ、それで貰った種みたいなのを入れたクッキーを作って、フィオナがよく声をかけてくる人の名前を聞いて渡したって訳よ」
「じゃぁ…今まで魔物になったのは」
「…えぇ、みんなクッキーを渡した人ね」
「そ、そんなぁ!」
「俺を呼んだってのは…」
「魔物になる前に伝えて置いたら、すぐ抑えに行けると思ったのよ」
『頭いいねっ!』
4人の劇団員たちは絶望している。それもそうか、もしかしたら自分たちが魔物になってしまうって伝えられるのは恐ろしい。
「謝罪で済むとは思っていないわ…でも、もしかしたらの可能性があるから先に伝えたの」
「あぁぁぁぁ!」
サンドラさんが頭を下げて謝罪しているが、それが聞こえていないのかのように4人は自分の身体を抱きしめながら苦しんでいるように見える。
なんだか嫌な予感がするなと直感だけど思ってしまった。
「…種渡した奴は、どんなやつだった?」
「黒髪の男よ」
「…そうか」
狐面ではないのか…でも、もしその種が魔物に変えてしまうような物なら、そんな物をバラまいてるやつを許しては置けない。
「それともう1つあるの」
「まだあるのか?」
「……お母さまにも渡してしまったの」
「…え?」
その瞬間4人が普通じゃない苦しみ方をし始めた。
「あついぃぃぃ! 助けてぇぇぇぇ!」
「いやだぁぁぁぁ!」
俺は全身に魔力を巡らせて『嫉妬』に声をかけてサンドラさんを避難させる。
ーーゴゴゴゴゴゴッ!
「なっ! 揺れる!」
船内が大きく揺れている。それに凄まじい魔力圧!?
地震か? それとも外から攻撃でも受けたのか? 何かが他にも現れたのか?
フォルカが揺れに抗って倒れないようにしていると、白煙を上げ始めた男たちが少しずつ大きくなっていく。
『狼さんばっかり飽きちゃったね』
「できれば、もう会いたくなかったよ…しかも今はジンもリーシャも誰もいない」
狼になるのは夜でかつ外限定だと、今までの2回の襲撃からそんな風に予想してたけど日中でも関係ないのか。
さすがに『嫉妬』の通常状態じゃ厳しいな。
「大人にするぞ?」
『はぁ~~い!』
ーーアオォォォォーーンッ!!
耳が張り裂けるんじゃないかって雄叫びを4体同時にあげる狼男、人間を魔物化させるって一体何を考えて作られたもんなんだ。
『平等ヨリ 生マレシ 妬ミ ソレ即チ 無限ナリ』
ーーゴゥッ!
『嫉妬』を中心に青黒い魔力の渦が逆巻く、魔力の渦の中から現れたのは、青い立派なドレスを着て、髪型もおかっぱじゃなくて、サラサラしたショートカットの大人になった『嫉妬』だった。
『ふぅ~、この姿も久々』
「来るぞ」
「ガァァァァッ!」
俺たちを敵と認識した狼男が、大人になった『嫉妬』にむかって突進してくる。
『1番にあたしを攻撃するのは貴方でいいのかな?』
『嫉妬』が向かってくる狼男に守ろうともせず、そう言い放った瞬間。
ーーブシュッ!1
仲間意識があるはずの他の3体が先に『嫉妬』に攻撃しようとした1体に一斉に嚙みついた。
「アグゥゥゥゥ!」
噛みつかれた狼男は『嫉妬』に辿り着く前に止められてしまい、他の3匹を自分から剥がすように爪を立てている。
噛みついていた1体が抜け出して、『嫉妬』を狙って腕を振り上げる。
『お? 1番が貴方?』
ーーズシャァァァ!
抜け出した狼男が『嫉妬』に腕を振り下ろすより前に、その攻撃を他の3体が阻止して互いに攻撃をしあう。
それが何回も繰り返される、まだ誰も『嫉妬』まで攻撃を届かせれてない。俺も『嫉妬』もその場から動くことなく。4体が勝手に争っているのだ。
「アオォォォォンッ!」
するとどの狼男も『嫉妬』に向かわず、互いのほうを向き争い始めた。
『最後に生き残った1人があたしに攻撃できるわよ』
「ガァァァァァ!」
最初は1番に『嫉妬』を攻撃したいって思いが気が付けば、邪魔をしてくる仲間を先に倒して1番になるっていう考えに変えさせられている集団戦において恐ろしい効果を発揮する力。
大人になった『嫉妬』の技の1つである『|姫を射んとせば先ず他雄を射よ《エンヴィー・パレード》』である。
『嫉妬』か俺を狙う者は、先に周囲の同じ狙いを持つ者を先に討たないと気が済まなくなる技である。効果範囲はそこまで広い訳じゃないが、決まればこんな感じに…。
『フォルカ、最後の一匹だよ』
「はぁっ!!」
ーーバキッ!
4体の争いはすぐに残り1体になり、少し卑怯な感じもしたけど魔力を纏わせた拳で顎を打ち抜く。
『嫉妬』の力で完全な漁夫の利戦法が出来た。
気絶した狼男たちをどうにか安全なように横にして、『嫉妬』に声をかける。
「なんか凄い魔力圧を感じるな」
『船の甲板のほうに、とんでもないのが出てきたっぽいね』
急がなくちゃな。
俺と『嫉妬』は4人を運んでくれそうな人に声をかけつつ船の甲板へと急いだ。
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1人で執筆していると言葉選びに苦戦したり、そもそも言葉を知らなかったりと毎日苦戦しています。勉強以外にいい手はないのでしょうか?
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