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第12話 大地を焦がす虚竜

アブソルート・ディザイア -八つの大罪で世界を喰らう- を閲覧していただきありがとうございます!


タイトルはポロポロ変わってすいません。シナリオはけっこう先まで書いてあるのですが、タイトルが未だしっくりこないのです…。


ペルソナ5rが終盤に来たっぽいです! 神話の神様の名前がたくさん出てくると興奮してしまいますね。


最後まで閲覧していただけるとありがたいです!

ーーエルフリッド街 領主の館 とある部屋


 館の一室には、領主ティミドと仮面の人物、それともう1人。

 鮮やで長い茶髪を鳥の羽のような髪飾りで留め、160㎝ほどの身長で、スラっとしたスタイルで、白を基調とした王国の模様が記された騎士服を身にまとう女性がティミドに向けて、キリっとした表情を向けて話を聞いている。


「リーシャよ、3発の伝達用魔術が空に打ちあがったら、何があっても集合地点まで退くのだぞ」


「承知しておりますお父様、第2別動隊として責務をしっかり果たして参ります!」


「さすがは私の娘だ。エルフリッドの娘として良い戦果を期待しているぞ」


「もちろんです!……作戦が予定日より早いですが、大丈夫なのですか?」


「偵察に出た傭兵が帰ってこなくてな、こちらの動向が知られて準備をされる前に攻めることにしたのだ」


「なるほど……魔族がエルフリッドに侵略に来る前に攻め落とすということですね?」


「そうだ、侵略に来る動きをしているが、こちらの動きを見て早めてくる可能性があるのでな」


「さすがお父様です! 民の安全をよく考えていらっしゃいますね」


「それが領主と言う者だ。さぁ…明日は作戦実行日だ、もう休むといい」


「はいっ、お父様、おやすみなさい」


「あぁ…おやすみリーシャ」



 納得した顔をしてリーシャは部屋を後にした。

 リーシャが部屋を去ると、そこまでまるで居ないかのように振舞っていた仮面の人物が突然クスクスと笑い出す。



「悪びれず嘘をつけるのは才能ですね、領主殿」


「……民のため、兵のため、リーシャのための嘘だ。それに魔族討伐が上手く行けば、結果的に私の言ったとおりのシナリオになるのだ」


 

 ティミドは街の人々や兵士に、魔族が襲撃してくるので急ぎ戦の準備をすると告げており、街を守り切り、魔族を討伐することが出来れば王国から多額の報酬が出るので、民の皆からとる税も少し減らすこともでき、兵たちの給料もあがると言って、ティミドに言われるがまま準備に手伝わせることに成功しているのだ。



「魔族は脅威だ、襲ってこなくて関係などない。貴様の言う通り魔族側に元魔王に関係している者が潜んでいるなら、王国からの報酬も跳ね上がるし、私の名声も高くつくというものだ」


「そうですな、ですが生贄の魔術を使用するときに、別動隊を本隊から離すのには理由があるので?」


「魔族であれど、生贄になどしているところをリーシャに見られては、父としての私に傷がつきそうなのでな」


「民にも娘にも、完璧な姿を……ですかな?」


「エルフリッドの血は誉れ高くなくてはならんからな、魔術で召喚した化け物を、私が操って、魔族どもを根絶やしにした……その事実のみで良い」


「さすがは領主様、よく計算なされる」


「……貴様も明日の作戦の準備を済ませろ、魔族どもを所定の位置まで、しっかり配置するのだ」


「もちろんでございます」



 最近夜になると少し痛む頭を押さえながらティミドは考える。

 何週間か早まってしまったが、いよいよ始まる魔族討伐作戦を前に、内心興奮を隠しきれない。

 この作戦が終われば、王国からも、エルフリッドの民からも英雄扱いされ、私の名誉は永遠に残り続けることになるだろう…と。

 家族にも、誇り高い父として、これからも接することが出来る楽しみを待ちきれずにいた。










ーー翌日・エルフリッド領内遺跡西近辺の森


 

 早朝、急遽作戦開始を昨日伝えられた兵たちの士気はあまり高くはなかったが、リーシャを筆頭としたエルフリッドの兵200人、第2別動隊は襲撃の準備に取り掛かっていた。



「リーシャ様! 襲撃準備整いました!」


「ありがとうございます……凄い汗ですが、大丈夫ですか?」


「すいません…元魔王に関連する魔族なんて聞いてしまうと怖くて…」


「そうですね…ですが、本隊のお父様が使用する魔術の準備が整うまでの辛抱です」


「はい…それにしてもティミド様は凄い魔術をもっているんですね?」


「私も見せてもらったことはありませんが…大掛かりな召喚魔術だと聞いています」


「凄い! さすがティミド様だ」


「お父様の魔術発動を成功させるためにも、私たちも頑張りましょう」


「はいっ! ありがとうございます!」



 元気よくお辞儀をして、若い男兵士は所定の位置へと戻っていった。

 内心リーシャだって、怖くないわけはなかった。王国騎士学校を卒業して1年、エルフリッドの兵の1人として、魔物討伐はしたことはあったが、魔族は初の経験だ。父の前で恥をかくわけにはいかないという想いと、自分たちがやらねば、街を襲う予定の魔族は一体どうすうのか? 街のみんなを守るためにもという決意が、まだ19歳と若いリーシャを冷静にさせていた。



「残り1時間ほどかしら? 私も所定の位置につかないと…」



 若くして、そして領主の娘として1部隊預かる者として情けない姿は見せられないと想いながら、所定の位置にリーシャは小走りで向かっていった。










ーーエルフリッド領内遺跡西近辺・森 第2別動隊付近



「にゃ~、ムブルグの言う通り、ジンがこっちにきた翌日には攻めてくるなんてにゃ~」


「くそっ……どんだけ魔族が嫌いなんだよ」


「こんな急に軍が動かせるなんて、領主様は、大層慕われてるらしいにゃ」



 フォルカとロロは、昨日の話し合いで、もしかしたら今日攻めてくるかもしれないというムブルグの発言を信じて、手分けして、遺跡に近い場所に潜んでいた。


 2人ともまさかとは思っていたようだが、実際に襲撃の準備をしているエルフリッドの兵を見ていると、怒りが抑えられなかった。



「フォルカ…落ち着くにゃ、そんなんじゃバレるにゃ」


「どうせ、すぐバレるんだから大丈夫だろ」


「にゃ~、可能ならば無力化なんて面倒だにゃ」


「確かに、みんなを狙う兵士たち(あいつら)のことは気に食わないが、だからって命を奪うのはまた別の話だろ?」


「急に冷静になるんじゃないにゃ」


「あぁ……他の場所は、ムブルグさんやジン、ノアさんもいるし、遺跡にはゼキルさんがいるから、俺たちもしっかり守らないとな」



 ロロは肩を回して準備運動をするフォルカを見て、正直感心していた。

 いくら自身が呪い持ちだからって、魔族に助けられたからって、この兵士の数を前に、世間一般的に恐れられている魔族を守りなんて、よく言えるものだと。

 しかも、自分たちの脅威でもある兵の命だって奪いたくないなんていう、ゼキルっぽい、ロロからすれば不必要な正義まで持っている。



「面白くなってきたにゃ~」


「命は奪わないけど、それなりの痛い目にはあってもらうからな」



 フォルカの身体から赤黒い魔力が漏れ出し、右手の呪いの刻印が光りだす。



「よしっ!行こう。ロロ…頼んだぞっ!」


「何様のセリフにゃ!」


「空ノ空 空虚ノ王様 顕現セヨ 『虚飾(ヴァニタス)』!」


 いつもの呪言とともに、『虚飾(ヴァニタス)』を呼び出す。

 頭上で豪快に笑いながら、いつものように自画自賛する頭蓋骨をスルーして、フォルカはさらに『虚飾(ヴァニタス)』の技を放つ。



「行くぞ! 『竜虚像・虚仮威姿(ドラコーン・セトネ)』!」









ーーギャャォォォォォォンッッ!


「っっ! 何事ですか!?」



 所定の位置に待機し、残り数分で作戦開始といったところで突然。


 大地を震わせるような雄叫びが周囲に木霊した。



「ド、ドラゴンだぁぁぁぁぁ!」


「こっ、こっちにくるぞぉぉぉ! にげろぉぉぉぉ!」


「何故、伝説の魔物がこんなところにっ!?」



 元魔王に関連している魔族とは皆聞いていたが、こんな全身を赤黒い炎で燃やしながら口から火を吐いているドラゴンだなんて、誰も思いはしなかっただろう。

 


「も、もうだめだぁぁ…」


「おしまいだぁ~、神様ぁ~」


「あちぃぃぃぃぃっ! 燃えちまうぅぅ!」



 1人、また1人と、ドラゴンを見て発狂していた者達が、気を失い倒れていく。ドラゴンの吐く炎に巻き込まれた者も全身を抱きかかえて倒れていく。

 リーシャは、怯える気持ちは持っていたが、何故か冷静だった。200人いた兵士のほとんどが気絶していく中、木に身を隠し、ドラゴンの視界に入らないように観察をしていた。自分も発狂してしまいそうなほど怖かったが、その前に1つの事実に気付けたのである。



(あんなに火を吐いているのに、森の木が1つも燃えていない)



 自分たちの上空を飛び回り、こちらに向かって火を吐いているにも関わらず、木が1つも燃えていない。その事実に気付き、冷静になれた瞬間、体の焼けるような痛みが無くなった。そこでリーシャは確信できた。



(何かの魔術で、ドラゴンの虚像と燃える幻覚を私たちにみせているだけ…)



 もっと早く気付いて、皆に声をかけれていればっ!

 そう思ったが、過ぎたことを後悔しても仕方ないと頭を切り替える。

 この魔術を使用している魔族は、確実に遠くない位置にいるはず。



(みんな…ごめんなさい、魔族を倒して、すぐ応援呼んできます)



 魔族を倒さねば、気絶している者たちが危険だと判断し、少しの間気絶したままにしておくのは申し訳ないという気持ちで、リーシャはドラゴンに見つからぬように駆けだした。










「よし……こんなもんか」


「とんだ、びっくり箱にゃ」


「『虚飾(ヴァニタス)』の技なんて、どれもこんな感じなんだよ」



 きっと全員、気絶させることが出来ただろうと思い、フォルカは『虚飾(ヴァニタス)』を切る。

 

 『竜虚像・虚仮威姿(ドラコーン・セトネ)』 これは『虚飾(ヴァニタス)』を使っているときに使用できる技の1つ。巨大な赤黒い魔力を纏ったドラゴンの形をして、雄叫びを発せる魔力の塊を発現させることが出来る技である。

 このドラゴンは『虚飾(ヴァニタス)』本体と同じ力を持っており、外見がドラゴンな分、すぐに恐れや怯えから得られる魔力で膨れ上がっていく、それに使用者から離れた上空に発現させることができるので、ドラゴンに攻撃されても大丈夫っていう安全な技だ。

 ドラゴンが放っていた火は、ジンとの戦いでも使用した『虚栄の滅却(ヴァニティ・フレア)』だ。ドラゴンの口から出てくるから、基本効果あると信じたいんだけどな。ロロがちゃんと”吹き荒れる熱風”を使ってくれていたから大丈夫だろう。



「御大層にゃ技名ついてるけど、ただの虚仮威し(こけおどし)にゃ」


「使いやすいし、痛い思いはするけど外傷は無いはずだから使いやすいんだよ」


「にゃ~、魔族たちを捕らえている本隊を探すにゃ」


「くっ……体が痛いなぁ…ってそんなことも言ってられないな」



 フォルカは代償で痛む身体に言い聞かせながら、どこらへんに本隊がいるのか考える。



 

 ーーその時




「はぁぁぁぁぁっ!」



 1人の女騎士らしき人物がフォルカに剣を向けて駆けてきた。



最後まで閲覧していただきありがとうございました!


『虚飾』の技がリーシャに効きにくかったのには理由がありますが、判明するのはまだ先のことになります。


どんどん溢れる厨二感を楽しんでいただけると嬉しいです!


もしよろしければ感想やアドバイス、評価やブックマークをどれかしてくださったら、とても励みになりますので、よろしくお願いします!


次回 第13話 踊りすぎた代償   


次話もよろしくお願いします!

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