方針転換
水の国王都シールラの冒険者ギルドに居る人はハッキリ言って皆さん冒険者の方ですか? って聞きたくなるような感じだった。
海が近い場所がらなのか、近くに魔物や魔獣などが多く出る森林などが少ない為かキャールやバラムイの冒険者と違い皮鎧や金属鎧を着た冒険者はほぼおらず普通の服に剣などを腰に下げているか、弓や銛のような槍を持っている人達ばかりだ。
完全に来る国間違えたな…。
どう考えても依頼は海絡みしかなさそうな気がする。
うん、どう考えても海で戦えるメンツじゃないし。
とは言えギルドに来た以上、どんな依頼があるのか確認の為、受付カウンターに行くと、中年の神経質そうなおじさんが対応してくれた。
話を聞く限りどうやらシールラでは多くの依頼が予想通り海関係のものらしく、殆どの冒険者は漁師の護衛や船を使い周辺海域の魔物や海獣を討伐したりしていて、薬草採取などはあるにはあるが、生息地が少なく取れる薬草も少ない為、殆どが怪我を負ってまともな依頼が受けられない冒険者が受けているらしい。
一旦ギルドを出てお洒落なお店のテラスで食事をしながら今後の方針を考える。
「おっ、このホッキーって魚、白身で癖が無く、スパイスが効いたピリ辛な味付けと相まってなかなか旨いぞ!」
ルイーズさんは話より出された白身魚のムニエル風料理に舌鼓を打ち、リーズもそれにつられて追加注文をしてる…。
いや、まあ食事を終わらせて一息ついてから話をするんで良いんだけどさ、なんていうか、こうもっと今後についての危機感と言うか焦りとかを持つべきじゃない?
確かにルイーズさんの言う通りホッキーのムニエルは美味しんだけど。
それにしてもホッキーってどんな魚? って聞いたらお店の人が「こんな魚です!」って見せてくれたけど、どう見ても深海魚で、日本で白身フライの原料に使われているホキって魚に似てたな。
確か地球では海水温が低い地域の深海で乱獲されてる魚だった気がするけど、この辺りでは深海魚って訳でもなく、そこそこ沖に出たら取れるメジャーな魚らしい。
この魚を使ってのり弁当とか作って売ったら儲かるかな…。
そうして海の幸に舌鼓を打ち、一息ついたところで本題である今後の事について話を始める。
とは言え、カトレアもルイーズさんもリーズも、海での依頼には全く興味が無く、むしろ経験がない分依頼をこなすどころか最悪海の藻屑になる可能性がある為、他の地域への移動をするつもりらしい。
「それで、樹の国に戻る? それとも北西に向かって火の国に行く?」
そう今後の方向性を質問すると、カトレアとルイーズさんが首を横に振りリーズが広げた地図の一点を指さす。
「ここに迷宮都市があるみたいだからそこに行きましょう。 ギルドで聞いた話では300年以上前に突如発生し、4~50年前まで成長を続けていたと言われ、まだ誰も下層に到達した事のないダンジョンがあるみたいだし、訓練にもなるし丁度良いわ」
「そうだな、あたしが聞いた話だと、どうやらダンジョンの中にある安全地帯に町が4つ、村が6つ出来てるみたいでダンジョンで長期間野宿しなくてもいいみたいだしな」
カトレアが行先を示し、ルイーズさんがギルドで聞き込んだ情報を話す。
どうやら迷宮都市行きが決定したみたいだ…。
「それで行先は迷宮都市という事でいつ出発するの?」
「そうね、数日はこのシールラで必要な物を買ったり、食事を楽しんだりするとして、10日後ぐらいに出発で良いんじゃない?」
カトレアにしては随分のんびりした感じだと思ったけど、どうせ迷宮都市は逃げないし、まだ下層に到達した人が居ないと言われている以上急ぐ必要はないとの事だった。
もし下層に到達しそうなパーティーが居たらギルドでも話題になっているはずだけど、そんな噂すらないから現在攻略している人達に先を越される心配は無いと判断したらしい。
「それでカツヒコ、あなたのアイテムBOXは時間停止効果があるんだから、シールラに居るうちに海産物を大量購入するのよ」
「なぜに?」
「迷宮都市って言っても海から離れた場所にあるんだから、当然海産物は新鮮な物が届きにくい、さらに迷宮内部の町や村なんかはほぼ届かないと考えるべきよ。 そこに時間停止効果で鮮度を保った新鮮な海産物を持っていけば最低でもシールラで購入した額の倍で売れるでしょ」
「あ~、転売をするのね…。 まあ確かに海から離れてるし、迷宮内部の町や村へ海産物を運ぶのにも危険が伴ううえ運べる量も限られるから高く売れると」
「そう、塩と海産物は大量購入して迷宮内部で売る! ここで収入がない分、迷宮都市で稼ぐのよ」
カトレアはそう言い海産物の購入を指示するけど、迷宮内部って自然型もあるから海もどきがあったりしたら塩とかデッドストックになるんじゃない?
しかも村や町があるって事は恐らく最低限の自給自足が出来る環境っぽいし…。
そんな指摘にルイーズさんは、だったら迷宮都市にある迷宮を攻略した後で海の無い国に行き売れば良いだけだと言い放つ。
確かにそうなんですけどね…。
まあアイテムBOXの容量は相当あり実際どのぐらいまで収納できるか把握できてないぐらいだから、大量の海産物や塩とかを収納しても問題は無いんだけど…。
方針が決まった所で街の中を4人で歩きながら店の場所を把握したりした後、宿に戻る。
やっぱり王都にある高級な宿は部屋に浴室が付いてるんだな…。
だけど何故に毎回同部屋?
一応自分、男なんで一人だけ別室とかが普通な気がするんだけど、費用削減の一言で同室になる。
いや、まあ、女の子と同部屋なのは良い…、というか男としては嬉しいんだけど、普通女の子が男と同部屋は嫌だとか拒絶して別の部屋に泊まれとか言うもんじゃない?
なんで男の自分が別の部屋に泊まる事を提案して却下されてるんだろう?
まあこの宿の風呂も広いし、バラムイの宿同様に混浴で見放題なのは嬉しいんだけど、見るだけで満足するって男としてはどうなんだろう…。
更新頻度の低下、誠に申し訳ございません。
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と思う今日この頃…。
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