出会い
バイルさんとレーナさんが部屋を借りて宿を出てから2週間、自分達は特にこれと言った依頼を受ける訳でもなく日々常時依頼のオーク、ゴブリン狩りや薬草採取を森の中で行っていた。
とは言え、狩りや採取をおこなうのは午前中のみで午後は森の中でカトレア相手に手合わせをするという日々だ。
そして夕方ギルドで買取をして貰い、宿に戻り食堂で書食事をしながら手合わせの総評をされ、その後ルイーズさんと宿の庭で手合わせをしてでボコられた後、お湯で身体を拭いて部屋で眠ると言った感じの日々だ。
今日も夕食を摂りながら、総評を聞いていたが同じ日々の繰り返しの為、流石に常時依頼だけでなく普通の依頼も受けようと提案をした。
常時依頼を受けるだけでもキャールの街周辺の魔物が減ってる事で農地やそこで働く人の被害は減るので良い事なんだけど、自分達が毎日オークや薬草を多くギルドに売っている結果値崩れが起き始め買取価格が安くなり始め、常時依頼で食いつないでいる冒険者達の収入が減り出しているとギルドで小耳にはさんだからだ。
「それで、カツヒコはどんな依頼を受けたいわけ?」
「特にこれと言った依頼ってのは無いんだけど、Eランク、Dランク冒険者の収入が減ってるみたいだから…」
「そんなの私達が気にする必要あるの? 実力重視の世界なんだからその人達の努力が足りないって事でしょ?」
「いや、まあそうかもしれないけど他の冒険者も生活かかってるし、自分達はランクの低い人が受けるような常時依頼で稼がなくても…。 それに風呂のある家を買うか借りるかしてゆっくりと綺麗な風呂に入りたいし」
「まだここの街しか知らないのに家を買うと言うのはどうかと思うけど清潔なお風呂に入りたいってのは一理あるわね…」
カトレアは少し考えた後、キャールの街から樹の国の王都であるバラムイへ行ってみようかと言い出した。
「王都バラムイ? 王都は初めてだし良いけど、なぜ急に?」
「ギルドや商人から聞いた話ではお風呂のある宿があるって聞いたからよ。 まあその分宿代も高いから報酬の良い依頼をこなさないと普通ならすぐお金が無くなるんだけど、まあ私達はお金あるから問題ないから…」
「確かに、お金は沢山あるね…。 それにまだ売ってないストーンキラービーのハチミツとハチの子、ローヤルゼリーが沢山あるから売れば大金になるし…。 だから拠点を移すの?」
「他にも理由はあるわよ、この街のギルドにある依頼を確認したけどCランク程度の物しかないのよ。 簡単すぎて何の経験にもならないから今まで常時依頼を受けて、午後は訓練に時間を割いていたけど丁度良い機会だから王都に行ってどんな依頼があるか見てみるのも良いと思ってね。 それでカツヒコは良いとしてルイーズはどうするの? 一緒に来る?」
カトレアがルイーズさんにそんな質問をしたけど、よくよく考えたら特にパーティーを組んでいた訳でも無いしルイーズさんは元々ソロの冒険者だったんだよな…、この街に残ると言ったら止められないよね。
「あたしか? もちろん王都に行くぞ。 まだカトレアから1本も取れてないし、もっと上を目指す以上またソロに戻るより一緒に行った方が良いに決まってるだろ。 それにカツヒコもあたしから1本も取れてないんだ勝ち逃げされたなんて言われるのも癪だし、何よりカツヒコが金の管理してくれるから気楽だしな…」
いや、ルイーズさん、それはあなたがそこら中つけで飲み歩いてるから後日その支払いを求めに来た人に支払いを行っているだけなんですけど、それを金の管理って。
自分の飲み代ぐらいは持ち歩こ…、いやダメだ…、この人、お金を持たしたら持たしただけ使って来るから誰かが財布を握らないと…。
って!! おかしいでしょ!!!
Aランク冒険者なんだから少しは自覚持って金銭管理ぐらい出来ないと!!
「じゃあルイーズも王都に行くって事で、明後日の朝出発ね」
早い!!! 王都に行くの決まって翌々日に出発って…。
まずはカトレアに頼んで今晩と明日の晩はルイーズさんを宿に監禁して、明日のうちにルイーズさんのつけを払いに店を回って、バイルさん達に挨拶して…。
やる事目白押しじゃん!!
翌日はルイーズさん行きつけの店を回りつけを清算し、バイルさん達に王都へ行くことを伝えたりしてたらいつの間にか夕方になってた。
キャールの街はそこそこ散策したし、行きたい店とかも特に無いから良いんだけど…。
そして出発当日、宿からの外出をカトレアに阻止され食堂で深酒をした結果、二日酔い状態のルイーズさんを急かす様にしながら街を出発する。
キャールの街から王都バラムイへは徒歩6日程、馬車で行けば3日ぐらいで着くけど歩くことで足腰を鍛える事にもなるとの事で、王都行の乗合馬車を使わず歩きで王都を目指す。
王都とキャールを結ぶ街道は道も整備され魔物や盗賊とも滅多に遭遇しないとの事で観光気分で街道沿いの畑や草原などを眺めながら歩き、途中にある村で宿をとる。
丁度いい間隔で宿場を兼ねた村があり王都まで野宿をしなくてもいいように出来てるから旅も楽だ。
そんなのんびり観光気分も3日目の昼頃、突然失われた。
普段は魔物の目撃情報も少ない街道なのに、森から獲物を探して出て来たのか、それとも森での生存競争に敗れ逃げ出してきたのか、オークの群れが女の子を囲んでいる。
慌てて気を引き締めると、剣を抜き一気にオークに向けて駆け出す。
後ろを振り向くとカトレアとルイーズさんは…、あれ動く気なし?
多分このぐらい自分一人で何とかしろと言った感じなんだと思い、オークの群れに向かって行く。
とはいえオークまでの距離がある為、斬りかかる前にオークが女の子に向かって襲い掛かる。
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あ、あれっ?
オークの頭が吹っ飛んだ? って他のオークのどてっ腹に穴が開いた?
武器も持ってない女の子が腰を低くし構えを取って正拳突きをオークの腹に叩きこむと突きが入った腹に拳が突き抜けたような穴が開き、そのままオークが倒れ込む。
20匹近いオークの群れを相手にしている以上、1匹を攻撃をした隙に後ろからオークに殴られ女の子は転倒し地面を転がり、すぐさま立ち上がるも四方からオークの攻撃を受けて防戦一方と言った感じだ。
全力で走ってはいるも、剣の間合いに入る距離までの時間が長く感じる。
その間も女の子はオークの攻撃を避け、反撃をしているけど、最初程勢いもなくなってきている。
ほんの数十秒がこんなにも長く感じたのは初めてだけど、剣の間合いに入った瞬間、剣に魔力を纏わせオークの首を後ろから刎ねて乱戦に身を投じる。
女の子もオークも自分の存在に気付いてなかったのか、突然の乱入に驚いたような顔をしたものの餌が1匹増えた程度の感じでオーク達が襲い掛かって来る。
身体強化と魔纏を使用して自分と女の子を包囲するオークに斬りかかり、囲みを破ると即踵を返し側面からオークを斬る。
女の子も自分の参戦で余裕が出来たのか、態勢を立て直し確実にオークを屠り、数を減らしていく。
20匹近く居たオークは残り5匹ほどになるとどうやら戦意を喪失したようで森の方に走って逃げだした。
このまま逃がしても良いんだけど、また街道に出てきて人を襲うといけないので、氷魔法を使用し先端の尖った氷の礫を逃げるオークに向けて大量に打ち込むと、背後から襲って来た氷の礫が無数に刺さったオークはそのまま倒れ込んだ。
「ふぅ~、間に合って良かった。 大丈夫ですか?」
そう言いながら女の子の方を見ると、女の子はハッとした表情を浮かべ慌てて頭を下げる。
「ありがとうございますぅ~、数が多くてこまってたんですよぉ~、助かりましたぁ~」
なんかさっきまでオークと格闘を繰り広げてた人とは思えない感じの人だな…。
なんかおっとりとしている感じだし、E、いやDってところか?
ルイーズさんは敵わないけど、カトレアよりも大きいな。
それに形もよさそうだ…。
そう思っていると何故か背後から殺気が…。
ここは振り向いて身を守るべきか? いや気が付かないふりをしよう!
絶対カトレアが睨んでるはずだから…。
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と思う今日この頃…。
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