街へ
「太陽が眩しい!!」
やっとのことで地上へ出て最初の言葉だ…。
100階層から地上へ向かうにつれ階層主も魔物も徐々に弱くなっていくので楽に地上へ出れると思っていたけどカトレアからダンジョンのマッピングもと言われ各階層をくまなく回りマッピングをしていたら結構時間がかかってしまった。
各階層には宝箱も生まれていたが100階層に有ったどの品よりも質の低いものばかりで自分としては徒労としか思えない。
「カツヒコ、太陽はこんなにも眩しく暖かかったんだな…」
地上に出るまで時間がかかった事に若干の不満な自分に対しカトレアは400年以上ぶりの太陽の光を浴び気持ち良さそうな顔をしている。
「うん、太陽は眩しくて日の光は暖かいよ…。 マッピングで各階層をくまなく歩きまわらなければもっと早く日の光に当たれたんだよ」
「カツヒコ、何度も言うがマッピングは重要よ、大きなダンジョンなんかは一回で攻略は出来ないから何度もダンジョンに入る必要が出て来るんだから。 その時に地図が無ければ以前言った場所まで行くのに時間がかかってしまうから効率が悪くなるでしょ。 ダンジョンで最深部を目指すにしても持ち込める食料とか限りがあるんだから一回潜ったら制覇するまでダンジョン生活なんて出来ないのよ」
そう言ってマッピングの意義を語るカトレア。
まあ確かに正しい事を言っているのは分かるんだけど、自分はそんなダンジョンを制覇したいとか言う願望は無いんだけどな…。
「まあ、マッピングの重要性は分かったから、とりあえずキャールの街を目指そう。 太陽の位置を見る限りまだ昼前みたいだから暗くなる前には近くの村に着けるでしょ」
「そうね、ここで時間を潰しても意味無いし、近くにあるって言う村に向かいましょ」
そう言って歩き出すカトレアだけど、方向が違うから!!!
ていうか、自分の居る場所がどこか把握してないのに何の疑いも無く堂々と村と逆の方向に歩いて行くの?
カトレアにそっちじゃないとツッコミを入れ、村へと向かって歩き出す。
それにしても昼間なのに眠い。
ダンジョンの中では昼も夜も分からなくって疲れて眠くなったら寝るという生活だったせいか完全に時差ボケを起こしてる。
「そう言えばカトレアは眠くないの? 一度も寝てるところを見た事ないんだけど…」
「ん? 私はちゃんと睡眠をとっていたわよ」
「いつ!! 目を開けて立ったまま寝れるの?」
「はぁ? そんな事出来る訳ないでしょ!! 私を何だと思ってるのよ? 普通に寝てたわよ。 あなたが寝た後に寝て、起きそうな気配がしたら起きてたのよ。 男に寝込みを襲われるなんて嫌だからね」
「そう…。 って寝込みなんて襲わないし!!! 15歳だよ!! 確かに思春期で異性に興味を持つ年齢だけど15歳で年上女性の寝込み襲うような男ってそうそう居ないでしょ!!」
「そう? 15歳って言ったら成人してる訳だし備えておくに越したことはないわよ。 それにあなたは見た目は15歳だけど、転生前は20代後半だったんでしょ? 15歳の皮をかぶった男ならなおさら危ないわ!!」
「いや、皮は被ってないぞ!! 前世でも今世でも!!」
「そういう意味じゃないわよ!!! カツヒコが前世でも今世でも皮を被ってないとかどうでもいいから!! むしろそう言う発言を平然とする時点で普通は警戒するでしょ!! 女の子相手によく臆面もなくそういう事言えるわね…」
カトレアに呆れられた…。
いや、本当に前世でも今世でも被ってないよ。
それに前世よりも若干サイズアップしてるし、どこで出しても恥ずかしくないはずだよ。
まあ露出趣味は無いから出さないけどさ…。
そんなくだらない会話をしながら歩いていると、日が傾き始めるころに村に着いた。
墳墓のダンジョンに行く前に泊まった宿に行きカトレアと自分の部屋として2部屋用意してもらい、併設された食堂で食事を摂る。
「お~! 坊主、ハズレダンジョンに行くって言って1月近く帰って来ないから死んだかと思ってたぞ!! それがまさか女連れで戻って来るとは、ダンジョンじゃなくて街に女を探しに行ってたのか?」
そう宿屋の親父が豪快に笑いながら声をかけて来たので、カトレアと事前に打ち合わせをしておいた通り、カトレアは山奥で祖父に育てられたが、祖父が亡くなった為に山奥から人里に降りて来たところ森で偶然知り合って一緒にダンジョンを探索した冒険者志望の女の子だと伝える。
「ぶぁははははは!!!! 隠さなくったっていいんだぞ! ダンジョンに二人っきりで1月も居れば色々あるだろ?」
「いや、本当に無いですから!! それよりもこの村はこれから栄えると思いますよ? 今のうちに改装と増築して部屋数増やして綺麗にしといた方が良いかも」
「はぁ? お前何を言ってるんだ? まさか預言者にでもなったつもりか?」
「預言者とか胡散臭い者になったつもりとか無いから!! 自分が行ったハズレダンジョン、ハズレじゃ無かったんだよ! 財宝に魔道具ザックザクだったから!」
「お前、頭おかしくなったのか? ハズレダンジョンに財宝に魔道具がザックザクだと?」
「おかしくなって無いから、あのダンジョンは100階層に厳重な結界があってそれが原因で上層階に魔力が流れなかったからアンデッドも弱いし魔石も小さかったんだよ。 100階層でノーライフキングを浄化したら結界が無くなって魔力が上層階に流れ出したからアンデッドも強くなってるし、各階層に宝箱も現れるようになってるから」
「100階層? ノーライフキング? お前な~、ウソをつくならもっとうまくウソをつけ、お前がノーライフキングを浄化出来るわけがないだろう!! ノーライフキングなんて災害級どころじゃないぞ、Aランク以上の冒険者パーティーどころか国が軍を動かすレベルの魔物だぞ!!」
「いやいや、事実だから! まあ実際にはノーライフキングと戦った訳じゃなく浄化を頼まれたから浄化したって感じだけど」
「はぁ? ますます意味が分からん! 何をどうしたらノーライフキングに浄化を頼まれるってんだ?」
「う~ん、ノーライフキングの話によると400年以上ダンジョンの100階層で結界に閉じ込められていたからもう疲れたって言ってたよ」
そう言ってアイテムボックスから100階層に有った宝石類の一部を机に並べて宿屋の親父に見せると見る見るうちに馬鹿にしていた顔が真顔になっていく。
「お、おい、本当にハズレじゃなかったのか? いや、それよりもあのダンジョンにはそんな宝石類がゴロゴロとしてるのか?」
「まあ100階層に有った宝石類や魔道具類は根こそぎ戴いて来たからもうないけど各階層にあった宝箱には宝石類や魔道具とかもあったよ。 それにドロップしたスケルトンの武器や防具は深い階層の物はそこそこ良い物だったし」
「まじか!! それならこの村を拠点にダンジョンに挑む奴が増えるじゃないか!!!」
「だから、さっきからそう言ってるじゃん!! 結界が無くなったら1階層のスケルトンの魔石も2センチ程のサイズだったからゴブリンの魔石と変わらないぐらいだったし、下層に行ったら魔石も大きくなるよ」
そんな宿屋の親父としているやり取りをカトレアは黙って聞いているけど、まあウソは言ってない。
ノーライフキングの浄化はしてないけど人間に戻したから浄化したのと同じようなもんだ。
うん、そういう事にしよう。
その後も宿屋の親父にあれこれ聞かれ、100階層に有った物の一部を見せるといつ街に行くんだとか、ダンジョンの事はすぐ報告するのか? など色々と質問攻めにあった。
どうやら本気で宿屋の改装と増築を考え始めたらしい。
確かに冒険者が殺到しだしたら改装なんて出来ないもんね。
それにしてもこの親父意外と商売の才能あるな…。
独りでブツブツと改装、増築費用の借り入れと冒険者増加による売り上げ、そして返済計画を計算しはじめてるし。
こういうチャンスを逃さない人が成功するんだろうな…。
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と思う今日この頃…。
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拙い文章・誤字脱字が多く読みづらく申し訳ございません。
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