05 演説
暫く時間が経った頃。誰よりも英雄に近くありつつも、誰よりも人々に近い存在として拓斗達の名前が知れ渡った。
「星菜、俺ら何やってるんだろうな」
「ええと、荷物持ち拳雑用係?」
「異世界来てまでなにやってるんだろう」
「人の為にならない事してるわけじゃないんだから」
大きな冒険をするわけでも、強大な敵と戦うわけでもない拓斗達は、毎日のんびり市民たちの生活に寄り添いながら、お手伝いに奔走していた。
しかし、そんな彼等にも勇者にまかせきりな人々達の状況は伝わってくる。
「勇者様なら、大丈夫でしょう。きっと次も何とかしてくれるわ」
「勇者様さえいれば、何も怖い事はない。安心していられるな」
英雄の言葉は聞かずとも、拓斗達の言葉なら考えてくれるだろうと思ったアッシュは、彼等に演説をするように言った。
「あなたたちっ! 勇者だって人間なのよ。この世界の出来事を人任せにしてていいの!?」
「そうだ。アッシュはそんな立派な人間じゃないし、むしろ駄目人間だし、怠け者だし、荷物の管理すらできないしで、いたっ」
「もうっ、余計な事は言わないの」
星菜や拓斗達は人々に協力を呼びかけるが、そこに魔王軍の部下達が襲い掛かった。