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放置ゲーの錬金術師  作者: treetop
3歳です
6/20

薬草畑2

「アンナ、他には?何か気付いたことはないか?」


 ディックはガツンと頭を殴られたような衝撃であった。


 子供特有の素直な心だから気が付いた?

 むしろ、何故気づかなかった!

 勇者様一行の旅は、進むほどに魔獣やアンデッド達が強くなっていった。その原因の一つは魔素や瘴気が濃く発生している場所を順に巡って行ったからで…

 つまり魔素や瘴気の多い土地の薬草は色が濃いということか。

 いや、薬草は瘴気に弱い。

 魔素か?

 獣は魔素が濃いと上位種が生まれやすくなる。なら薬草の効果も何かしら上がっている…とか?

 ああ、もっと情報があれば…。


 ディックはこの薬草畑に携わる切っ掛けになった少女のことを思い出した。


 あの娘にもう少し何かヒントを貰えていたら…。

 


 あの娘とは、勇者様一行を帰還魔法でお送りした後、この世界に残されたただ一人のPTメンバーミランダのことである。

 魔神封印の旅で世界中を文字通り飛び回った彼女はその旅の中で膨大な知識を得た。

 それは誠心誠意勇者様のサポートを行ったった各国の情報も含まれる。

 少しでも協力を と差し出される戦力、金銭、武具、薬等々。その行為は図らずも各国の軍事情報、経済情報、武具製作の技術力、薬品技術力等をミランダに知らせる羽目になった。

 彼女を得た国はその情報を知ることができる。

 各国はミランダ獲得に動いた。

 しかし、魔神を倒したPTメンバーである彼女は英雄だ、迂闊なことは出来なかった。

 手をこまねいているうちに本や劇場で自分の名前を伏せる約束を取り付け、ドラゴンに乗りさっさと飛び去ってしまった。


 しかし勇者様召喚を行ったゼルグナード国は唯一の例外国であった。

 召喚直後、勇者様方に戦いのノウハウやこの世界で必要な知識を覚えて頂くため、他国より長く一緒に過ごし親密な関係を築いていた。所謂同じ釜の飯を食った仲である。


 勇者様支援特別隊のディックもそれなりに勇者様方とは良好な関係にあった。

 ディックとマリラは隊の中では最も若かったため、まだ少女であったミランダとは一番仲が良かった。戦うことに関して話し合うことも多々あったが、相談に乗ったり一緒に買い物に出たりなど少女を気遣い友人として親しくなっていった。とりわけマリラとミランダは姉妹の様に見えた。

 ミランダは人見知りの激しい性格であったが気を許した相手には家族のように尽くす優しい娘であった。


 ディックやマリラの事を兄や姉のように慕っていたミランダは、魔神を倒した後ディックが喜ぶであろうと行く先々で集めた薬草の種と育て方の説明書を マリラには各地の遺跡に残る謎の魔方陣の写しや古代魔法が綴られていると言われている眉唾物の珍しい魔法書などをこっそりと渡してくれたのだ。


 今の時代ミランダのような希少な一流テイム魔法の使い手でもない限り、人々の移動手段は一般的には馬か馬車(必ずしも馬とは限らない)である。裕福な一部の者達は違う交通手段も持っているが限られた者にすぎない。

 街から離れるにつれ魔獣が強くなる。

 また、海路は更に凶悪な魔獣が多く生息している。

 そのためよほど腕に覚えのある冒険者や騎士団でもない限り他国へ訪れる機会が無いのである。

 一生国内から出ない一般人など珍しくない。


 そんな中でのこの土産はとても価値があった。


 もちろんゼルグナード国は、他国との貿易が無い訳ではない無い。国が輸入している品々もあるし、他国の商人が一山当てるために護衛を雇い珍しい異国の品々を販売することもある。しかし、それらの品々は利益の出やすい織物や香辛料、鉱物や魔獣から採れる素材等が主である。安価な薬草の種など扱っていなかったし、誰も理解出来ない魔方陣の写しや、本当か嘘か分からない重たい古代魔法の本などスペースの邪魔になるだけで、そんな物を運ぶなら反物の一つでも余分に荷に詰め込む。それらを態々危険をおかしてまで運ぶ物とは誰も考えていなかったのだ。


 ミランダはディックにお土産を渡す際に嬉しそうに言った


「同じ薬草でも国や大陸によって色や形が少しずつ違ってたから、ディックが興味あると思って」


 確かに環境で植物の生育状況は違いがあるかもしれない。しかし今まで誰もそこに気付いていなかった。何故なら製薬作業は錬成魔法で行われ、品質の差は技術者の力量の差であるとされるのが世界常識であったからだ。


 あくまでも現段階では仮定の説だが、もし本当に色の違いが効果の違いであったのなら、濃い色の薬草で二流の薬師が作った傷薬と、薄い色の薬草で一流の薬師が作った傷薬が同じ効果という結果もあり得る。

 では濃い色の薬草を一流の薬師が錬成すればどの様な結果が出るのか…

 組み合わせを変えてみれば…

 あるいは様々な国の薬草をブレンドしてみれば…

 考え出したらきりがない。


 まだまだこのプロジェクトは始まったばかりなので、アンナの何気ない一言も大発見扱いなのだ。


 ミランダから種を貰い、その価値に気付いたディックが上司に相談すると、薬学で他国に出遅れているゼルグナード国の極秘一大プロジェクトとして展開されることになった。


 人里離れた土地を宮廷魔術師団が魔法で強引に開拓したのは三年前。


 ディックとマリラの夫婦は、このプロジェクトの責任者となり王都から移り住むことになった。

 不便な土地であったが、国から住みやすく最新設備を備えた大きな家を与えられたのは嬉しい誤算であった。

 また、食料や生活必需品は、水鏡の魔法で注文すると届けて貰えるので小さな子供のいる家庭では寧ろ有り難かった。


 ディックは当初ミランダからの説明書を見ながら薬草に合った時期に種蒔きをした。

 しかし、ディックもマリラも農業の経験は無かったため早々に壁にぶつかり随時宮廷の薬草園の庭師に水鏡の魔法で連絡を取り指南してもらった。

 本当であれば庭師数人と一緒に働ければもっと簡単であっただろう。だが、薬草畑の場所は極秘機密。

 一部の軍部に属する者しか情報を得られないトップシークレット。その為軍部でない庭師に薬草畑に同行してもらうことが出来なかったのだ。

 しかし、そもそも薬草は野草なので育て方は難しくなく寧ろ世話をし過ぎる方が育ちが悪くなるということもあり、何とか素人でも栽培できた。


 試行錯誤の一年目が過ぎた頃にはディックの鍬の持ち方も様になっていた。


 二年目には少し余裕ができて来たのか、色の違いや大きさの違い等、同じ物なのに違って見える物を丁寧に観察した。収穫は大した量ではなかったが自分の研究用を除き全て宮廷薬師長宛に送った。


 三年目にはより観察がしやすくなるように薄い色から濃い色へ順番に並べてみた。大きさも小さいものから大きな物へ、葉の枚数の少ない物から多い物へ等配置してみた。

 勿論何処の国でも変わらないものもあったし、一年草や二年草でないものもあるので観察途中のものもある。しかし、確実に収穫量は上がったため満足だった。



 そして今年、四年目の春。

 てディックは、アンナからのヒントに何かが掴めそうな予感がしていた。



「アンナ~何でもいいんだ。他には気になることとか無いかなぁ?」


 あまりの期待のこもった目にアンナは戸惑った。


 気付いたことはあるけど言っちゃったらマズイ気がするから言えないよ!

 あ~でも見た目は子供頭脳は大人の名探偵少年は「あれれ~」とか言いながらおじさんや刑事さん達にヒントを出しまくってたなぁ。

 ショタの星の彼がやっている事なら私がやってもいいのかも…。


 うーん、うーんと悩んでいるアンナを見てフッとディックは笑みを溢し肩の力を抜いた。


「ごめん、ごめん。アンナそんなに難しく考えないで」


 ディックは優しくアンナの頭を撫でた。


「アンナがあんまり素晴らしい事を言ったからパパ焦っちゃっただけなんだ。ほら、あっちの薬草は変わった形をしてるんだ、見に行こう」


 ディックはアンナを持ち上げ肩車すると少し離れた畝を目指した。


「うわあ~。すごーい」


 高い位置から見る薬草畑は壮観だった。アンナのテンションは鰻登りだ。


 おおお!アロエっぽいのがあるー。あっちはシソっぽい。ミントっぽいのもある。

 薬草畑って聞いてたから何だかちょっと難しいイメージだったけど要するにハーブ園って考えたらいいのね。

 見たことあるようなのがいっぱいあるけど、植物の知識があんまり無いのよー。

 あっ、あれなんて絶対見たことある。

 喉まで名前が出掛かってるのに思い出せない!くーっ、もどかしい!


 アンナは興奮状態でキョロキョロと辺りを見回しふと気が付いた。


「パパ、あそこ何か変」

「え?」


 アンナが気になった方向を指さした。


 そこには…。







今回なかなか思うように話が進められなくて何度か書き直しました。

難しい…( T∀T)

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