合戦の結末
華が見事なコントロールで、三発か四発翔太の頭に続けざまに雪玉を直撃させた。
翔太は大げさな身振りで倒れ、そこで合戦が終わった。
「大丈夫?」
華はクスクス笑いながら翔太に駆け寄った。
彼は暗い顔をしていたが、怒ってはいなかった。
「全っ然、大丈夫じゃない!」
「大丈夫みたいだね」
華は朗らかに笑った。
「さ、お願いを聞いて貰おうかな」
「はい?」
華は翔太にウィンクを返した。
そして彼がたじろいでいるうちにさらに言った。
「一つ目は……」
「オイコラ」
翔太がぶるぶる頭を振りながら遮った。
「なんだ、その「一つ目」ってのは。てかそもそも、願い事聞くなんて言ってないよ!」
華はニッと笑って人差し指を立てて見せた。
「敗者に文句言う権利無し!」
二人はしばらく睨みあっていたが(とはいえ、二人とも口元が笑いをこらえようと頑張っているのがすぐ分かる)、最後には翔太が折れた。
「……わかったよ。ただし、一つだけだよ」
「え!? 普通、三つ位でしょ」
翔太は目を細め、無言で華を睨んだ。
しかし彼女はちょっと顔をそむけて空咳をしただけだ。
誰から見ても笑いをごまかした咳だった。
華はニヤつきながら翔太に顔を向けた。
「じゃ、間をとって二つね」
「ちょっ……」
「一つ!」
翔太は黙らされてしまった。口をぱくぱくさせて華を見つめている。
華は続けた。
「まず、雪だるまの頭を作るの手伝って」
翔太は「まぁいいか」と思い、肩をすくめて異議がないことを示した。
「……で?二つ目は?」
「それは後でね」
華は片目をつぶって見せた。
翔太は今度は「やれやれ」というように肩をすくめてから、雪玉を作り始めた。