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玄の歌
音を喰らうもの
静寂を吐き出すもの
空から贈られた 白の精
「しんしん」という「声」を上げながら
静かに全てを包みこむ
風に声を掻き消されても
溶ける日が来ることも
分かっていても
ただ白をまとって
地に降り立つ
しんしんしんしんしんしんしん
しんしんしんしんしんしんしん
枯木を 家を 大地を
白く 着飾らせる
天からの使者
しんしんしんしんしんしんしん
しんしんしんしんしんしんしん
音を喰らうもの
静寂を吐き出すもの
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「玄」とは、五行説において四季に割り当てられている色(青春、朱夏、素(白)秋、玄冬)からとって、黒のことです。
以前と同じように「二度目の冬」という章にしても良かったのですが、ここまでは一文字にこだわりたく、少しひねりを加えてみました。
果たして読めるものに仕上がっているのか、自信はまったくありませんが、とりあえず今回書き終わったらもう、「Season」には手を出さないでおこう、と思っています。
「これで完成。直すところはない」と堂々と言えるものになりますように、っと。
田中 遼