表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Season  作者: 田中 遼
50/67

温かな家


鋭く、鋭く。


夕闇の中を刀のような風が吹き抜ける。

斬られた気がして身体中を叩いてみたくなるような冷たさである。


しかもそれは、止めどなく吹きすさび、枯れ葉を引きちぎり、木々を揺さぶり、家々の扉という扉を、窓という窓を、壁という壁を叩くだけ叩き、行き過ぎたかと思えばまたやってくる。


その風に取り囲まれ、ガタガタと震えている小さな家がある。


あらゆるものから切り離され、多くの田や畑の中でぽつんと孤立しいる様子は見るからに寒そうであった。


が、その家は芯から冷えきっているわけではない。

窓にはめられたガラスは曇り、家の中の黄色い明かりをぼんやりと通している。


その明かりを少女の影が幾度となく横切り、どこともなく温かな雰囲気が染み出していた。


と、その時。

鈴が鳴るような軽やかな音が鳴り始め、家の中に流れていた静寂が一時途絶える。


続けてぱたぱたという軽い足音が響き、少女の姿が部屋の隅へと向かった。



「はい、もしもし?」


「――お母さん!」


「うん、大丈夫。元気。お母さんは?」


「よかった。ごくさん? おじさんとこ」


「なんかね、なんかたくらんでるみたい。よくは分からないけど」


「まぁね。とにかく何か起こるような感じはあるよってこと」


「うん。――え、月?」


「見えないよ。綺麗なの?」


「そっかー……ストーブ? つけてるよ? 窓? え、なんでそんなこと分かるの?」


「せ、設定温度? 大丈夫だって。ちゃんと……低いし」


「えっと……寒いのが好きだからこそ、家の中はあっためておきたいなって……」


「……うん、はい。節約、エコね。はぁーい」


「うん、大丈夫。無理はしないから」


「大丈夫だって」


「アハハ、心配しすぎ! 自分で言ったのに」


「あぁ、そうそう、こっちの天気予報でも言ってたよ」


「――今夜初雪かも、って」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ