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銀世界
段々と日が落ちていっているのが分厚い雲を通して分かる。
雪はたった今止んだ。
翔太は薄暗い灰色の雲を眺める気はなく、飛び起きるように立ち上がった。
華はそれに倣って体を起こす。
ずっと空を見ていた二人の前に一面の銀世界が広がった。
二人はほとんど同時に息を呑み、翔太が華に手を差し伸べて叫んだ。
「華!」
華も反射的にその手を掴み、翔太は彼女を引っ張って立たせた。
別に立たせてどうかなる訳でもなかったが、じっとしていられなかったのだ。
白い。
どこまでも真っ白だ。
ずうっと遠くの方で景色がかすむように暗くなり、光が吸い込まれているように何も見えなくなっている。
完全な沈黙。
何かが迫ってくる気配だけが、手をつないだまま佇んでいる二人を取り囲んでいた。