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猫と殺人


「な~、何時までこんな地味な作業を続けないといけないんだよ。

いい加減休ませてくれよ~」


 先ほどの一件がまだしこりになっているらしく、康弘はあなたの方を見ようともしない。


「休みたいのなら休めば。

仕事でやっているわけではないしね。

様はボランティアみたいなものだ。

しかも命がけというマイナス要素もある。

何時抜けようと僕たちは君を責めはしない」


 ―――そういうのが一番困るんだよ~。


 あまりにも無責任。

個人主義すぎて、集団の輪を重視する康弘は感じていた苦手意識をさらに向上させた。


「というか、俺の半分程度って。もうちょっと頑張ってくれよ」


 また、そういった人物の仕事の遅さも苛立ちを煽る。

同時間休まずに仕事をしてきた。

しかし、あなたの達成した仕事は康弘の半分程度。


 だから、お前が居なければ仕事が進まない的な発言が状況から予測したもので。康弘の臨んだ結果だった。


「そうだな」


 しかし、あなたは誰かの期待に沿うようなやつではない。

康弘へ生返事を返すだけ。


 彼の方も今更喜んで働きますなんて言えそうにない。


「ちょっと、まだ作業は半分も終わっていないんだから」


 般若の顔でさっさと手を動かせとトトは言う。


「「すまん」」


 現在、彼等は夢が被害者団体から入手した失踪事件の被害者の名簿を整理していた。

 失踪現場を直に目撃した人物がいないかと、どこで疾走したかについての調査だ。

 特に重要なのは精神に異常をきたした、支離滅裂、捜査に非協力的。

 そういったネガティブな刻印を押された人物。

あの光景を直に見たのだから。


 初めは夢だけが連絡していた。

 彼女自身も被害者の会の一員であり、誘拐された人物の友達。

 話を聞くにしてもプライベートな内容なので相手にも気を使う必要があるのだ。


 だというのに、彼女は気になる発言をした人物がいたという事で武蔵を連れてここから飛び出していった。


 そのせいで電話の役割があなたたちに回ってきた。


 罪悪感からさらわれた桃子の友達という設定。

 目撃者である夢とは知り合いなので友達の友達は、絶対に他人だと思うが、友達という事にして、自分に言い訳をして電話に出る。


 連続誘拐といっても、いなくなったのは、少なくとも判明しているのは10人前後だ。


 聞き込んだ情報をどう整理するかで混乱しているのだが。

 加えて、目撃屋の電話番号を聞いたりして本当に大変だった




 警察からどうにか王にか聞きだした




「それで気が付いたら私の息子が消えていたんですの」


 と、高そうだと一目見れば分かる服を着た女性はそういった。


 つい5日前。

 仕事を終え彼女は家に帰宅した。


「あ! 伊藤さん。お子さんたちは元気ですよ」


 真っ先に確認するのは愛する息子たちについて。


 ビジネスウーマンとして夫婦ともに忙しく駆けずり回っているためにこの女性伊藤沙織は家政婦を雇っていた。

細やかな仕事ができる人物で重宝している。


 見ると、息子の一人を抱っこしてあやしており、もう一人はベットの中で眠っているのが見えた。


 両方とも寝ているらしく、余計なことをして起こすのも悪いと思いそのまま自室に直行する。


「いつもよりほんの少し涼しいかしら?」


 幾ら家政婦といっても沙織は自分のテリトリーに他人を招き入れることを好まなかった。

 なので他の部屋については任せるのだが、この部屋だけは自分で掃除もするしできるだけ立ち入らせないことにしていた。


 そのせいで、この部屋では入室と共にオートでクーラーが付く仕組みになっているが、逆に言えば沙織が入室するまでは蒸しぶろ状態なのだ。


 それが今日だけは、僅かに涼しい。

 

 考え事をしていると、「それじゃあ、これで定時なので」と家政婦が声をかけた。


 もう帰り支度を済ませており、沙織が着替え終わる前に部屋を出た。


 その慌てようから、もしかしたら人と待ち合わせているのかも。

 そう思ったが、検索するのも野暮と思い、いつものように夕食の調理に取り掛かる。


 子供の安全を考慮し台所から見える場所に子供たちはいた。


 そして夕食が形になった時に。


「ニャア~」


 飼い猫のニケが夕飯のおこぼれを求めて沙織の足元にすり寄ってきた。

ゴロゴロと喉を鳴らし、こちらにすり寄ってくる姿はご褒美が欲しいからという下心を理解したうえでも大変可愛らしい。


沙織はいつも通り、ご飯のあまりものの中で猫に上げても問題ないものを皿の上に乗せる。

彼女自身が夕飯の盛り付けに入った。


この間約10分といったところだろう。

それまでずっと赤ん坊の存在を認識していた。

離乳食を食べさせるべく、双子を起こそうとして、彼女は気が付いた。


「あれ? あのこはどこにいるの」


 双子の片割れが、忽然と姿を消したのだ。






「というのが聞いた話です」


 どうしてこうなったのか意見は無いですかというのが事務仕事ですっかり退屈を持て余していたあなたたちに夢が持ってきた話だ。


「へぇ~、そんなことがあったんだ~」


 疲れているせいか、話が荒唐無稽なせいかあなたは投げやりだった。


「それにしても人が突如失踪するね。

 日本で有名なのが神隠しかな。

 海外では宇宙人による拉致とか。

 そういった話をよく聞くわ」


「以外だよ。

 お前たちの立場なら夜鬼のワープ能力によるものだっていうべきなんじゃ」


 それにこの場にいた二人、電話越しに夢が一斉に白い目を向けた。


「いくらなんでも身近に怪奇事件があったていっても、身の回りにある全てんお事件が摩訶不思議な力によって発生しているっていうのは乱暴すぎだろ」

「そうですね、オカルト小説の読みすぎです」

「こういったホラーものを読み解くためにはね、最初それが現実的な手段でのアプローチをして、それを全部潰した後二話かわなかった場合オカルトだと断定するの」


 要するに、このファンタジーがという目線が彼に集中した。


 ―――ファンタジー世界の住人にそんな目線で見られたくねえよ。


 本音ではそう思ったが、三体一という不利な状況でそれを言う勇気は彼にはなかった。


「で、最初の仮説としては……。

 その、さ、沙織さんが嘘をついているのはどうかな。

 何らかの事情で子供を殺害それを隠すために作り話をした」


 退屈に押しつぶされそうだったこともあり、あなたは先ほどまでの仕官しきっていた体にカツを入れ、パワーポイントを広げデカデカとした赤い文字を記入した。


 後になって、ここまでする必要あったのかと自問自答するが、全てはその場の思い付きである。


 もっとも、その字面を見て忌々しい、まるでゴキブリを見るような視線であなたを見る康弘に気が付き、無駄な思考をすぐに打ち切るのだが。


「何か?」

「別に……」

「そうか」


 不満があるのは目を見れば分かる。

 しかし、何も口に出さないことからして問題性は灰色の領域だ。


「まずは、この人の怪しい点と怪しくない点を挙げていこう」


「そうね、仮に犯人だとしたらアリバイを作り放題ってところね」

「確かに、時間の虚偽も可能だから、山に捨てるのも海に投げ捨てるのもありだ。

 そのマンションが海に面していればさらに完璧なんだけど……」

「残念ですが都内の一戸建てです」


「まあ、だよね」


「でも、この人が犯人だと自由性が高すぎて証拠を絞り切れないわ」


「そもそもの話。お前ら、どうして子どもが行方不明になった母親を疑えるんだよ!」


 彼が不機嫌になっていた理由は俺だったらしい。


「嫌、でも、推理小説だと、全員を疑っていかないと話が進まないし」


「康弘君。

 黙って」


 どこか退屈そうに、どこまでも苛立多気に放たれたトトの言葉にその場にいた皆が戦慄した。

 混沌とでもいうべきだろうか。

 彼女の声にはゾッとするかのような負の感情が煮詰められたかのy等に存在居ていた。


「康弘君。あなたはまた同じ失敗を繰り返すつもり」


「やめろ!」


「あなたはほんの少しの見落としで、一人の女の子を見殺しにした。

 そんなあなたがまた人の善政にすがってとるべき懸賞を怠るの」


「だまれ」


 ここまでくれば、どうして康弘が母親、沙織を疑うのをお子まで拒否感を示したのかが分かってきた。


 彼は常識というものにすがっているのだ。


 非常識な世界に放り込まれたからこそ、万人が認める常識というものをより一層美しいと感じ、それを維持しようとする。


 彼の中の常識では、母は子供を愛し守ろうとする。

 そんな単純で美しい図式があるのだろう。

 それは間違っていない。

 間違ってはいないのだが、どこまでも歪だった。


 それを理解しても、あなたは一切変わることは無い。


「人を疑うってことは何もその人を有罪にしたいから手わけだけじゃなくて、その人物が完全な白だと分かる意味もあるんだ。

 君がそうしたいのならば、沙織さんが完全な白であることを証明しよう」


 きっと、トトが話をつけたのならば、康弘の心を完全に折りにかかるだろう。


 そうなればめんどくさい。


 今は一人であろうとメンバーが欠ける状況はまずいのだ。


 このチームを出たいのであれば出ればいい。

 しかし、働いてくれる間は働いてくれ。


 それがあなたの本音だった。


 だからこそ、とことんまで突き詰めることをあなたは拒絶した。

「でさ、このミステリーだかホラーだかよく分からない話の真相を探求すために母親に対して有利な材料はある」


「う~ん、流石に母親が嘘言っているっていうのは警察も調べつくしたんじゃないの。

誰が見ても分かる怪しさだし」


「だよな。知りたいのだと彼女は言った。

 警察もバカじゃないんだから厳重な事情聴取位しているんじゃ」


「だとしたら沙織さんは三角だね。

 明確に怪しいが警察が徹底的に調べているのに捕まっていないんだ。

 黒とは断じられないし、ここでいくら話し合ったところで黒にできるような証拠が集まるとは思えない」


 だからこそ、彼等は次の標的に移る。


「家政婦さんが今回の剣の犯人と居たらどうだろう」

「明確なアリバイが存在しますし無理だと思います」


 そうだろうと皆が納得する。

 だとしたら、いかにしてそのアリバイを崩すかが問題になる。


「例えば膨らんでいたのは実は人間ではなくてまくらだったんじゃ」

「だとしたら消えた世に見えたのはおかしくありません。

 枕を身代りにしたらもうすでに部屋を出ていた家政婦仙田は回収ができません」


「やっぱり無理か」


 そう、この問題の最大の肝はそこだ。

 家政婦が部屋を出た後も、沙織さんは子供の姿を、後で確認してもらったがうち一人の布団の中にすっぽり埋まるようにして寝ていたので顔は見ていないそうだ。

 しかし、存在自身は確と目で確認していた。


「だとしたら、その身代りが消えたか自ら動いたしかないな」


 常用を整理するための一言はあなたにとって天啓にも等しかった。


「身代りが自分から動いたっていったのか!」

「あ、ああ」


 もうこれであなたの中で一つの確申が生まれた。


「もしかたらだけど、この事件の真相分かったかもしれない」


 重々しく言うあなたに皆の視線が驚愕に揺れた。


「それはどういう」


 言ったのは康弘だが、きっと皆の言葉を代弁していた。


「猫だよ、猫」


 枕がひとりでに動き出せばこの問題は解決する。

 そして、動くまくらは話の中に存在していた。


「家政婦さんが、ベットの中に猫を寝かしつけていれば失踪のアリバイは綺麗になくなるだろ」


 確かに、ベットの中で寝ていたのが実は猫だったとしたら。

 赤ん坊の突然の失踪もベットの中で丸くなっていた猫を赤ん坊と誤認し、その猫が餌を求めて動き出したために突如消えたという説明ができる。


「それだと都市化に犯行は可能だよ。

 だがな、動機とかもっと深い部分の説明をしてくれよ」


 康弘の目には事件を得意げに話すあなたの姿が何でも知っている名探偵に見えたことだろう。


 しかし、あなたは名探偵にあるまじき行為をとる。


「さぁ、そこは警察に話すか、沙織さんが直接解決するしかないんじゃないか」


 すなわち、難問に対して匙を投げたのだ。


「いや、それって」


「常識的に考えて、あったこともない人物が家庭にどんな場う段を抱え散るかなんて、超能力者でもなければわかりっこないわ」


 そして、まともや何言ってるんだこの電波野郎と言いたげな視線が贈られる。


「いい加減にしろよ! ファンタジー」


 この言葉はお互いの身に何が起こったのかを共有できていないからこそ発生したのだろう.


女性陣二人は康弘をこの上なく気持ち悪いものを見る目で見ていた。


「え~と、私これから今の考察を沙織さんに話したいと思うんだけどどうですか」

「どうですかって言われても、これ3は単なる妄想だよ。

 話して実はf正解だったら何を言われるのか。

 笑い話で猫を見て、実はこうなんじゃと冗談めかして話してね。

 不正解時の重圧に耐えきれないから」


「あの、ごめん。

 自分でもテンションがおかしい自覚はあるよ。

 だから、せめてスルーするのはやめろよ。

 笑えよ、笑ってくれよ。

 そっちの方がダメージ小さいんだよ!!」

 

 康弘の咆哮に皆が気まずそうに目線をそらした。


「すみません。他の人の迷惑になるので静かにしてくれませんか」


「「「あ! はい」」」




 これを聞いたのが後日、言葉そのままに後日談というやつだ。


赤ん坊は家政婦がほんの少し目を離したすきにペット用の出入り口を使用して、冷房が効いていない母の寝室に侵入したらしい。


 そのまま寝入ってしまい、気が付くと熱中用で倒れていた。


 猫を使った囮作戦は、本来は全く予期していなかったものだという。

 というのも、それこそが赤ん坊を熱中症で殺してしまった最大の要因であると家政婦は語ったらしい。


 赤ん坊が人生最後の探検に繰り出すとともに、猫が赤ん坊のベットにもぐりこんだのだ。


 彼女は母親がそうだったのと同じように、外部からのベットのふくらみを確認して、それが赤ん坊だと誤認した。


 そして赤ん坊が死んでいると気が付いたのは、母親が帰って来る数分前だった。


 身の危険を感じた彼女は赤ん坊をバックの中に隠した。


 そしてそのまま何食わぬ顔で部屋を後にしたのだという。



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