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各々の捜査

ダウジング。

古来から使用されてきた占い。

 糸に括り付けた振り子の動きから鉱脈や地下水のありかを調査するのにつかわれてきた。


 ある事情から占いに精通している武蔵は駐輪場へと足を向けた。


「昨日、ここで事件があったんだよな」


 薄暗い地下空間に無機質な銀色の自転車が乱雑に放置されている。

 普段見慣れた光景だというのに、恐怖からかはじめてきたように思えてしまう。


「何か分かると好いんだが」


 武蔵は全神経を指先に集中し、世界の異変に対して気を向ける。


 カツカツとよく響く靴音が狭い空間に反響する。


「……ここ、か」


 そして、見つけた。

 振り子が、意思を持ち逃げ出そうとしているかのように外へ外へと動く。


 まるで事件の痕跡がこびりついているようだった。


「それにしても、どうして悪魔はここにいたんだ」


 あたりを見渡しても変わったものは無い。

 最近工事をしたという記憶もなかった。


 祠でもあったのならばそれを理由にできるのに。


「成る程、道は示されるか」


 やはりというべきか、ダウジングの反応は図書館へと向かう。


 図書館で悪魔は召喚されたのではないか。

 そんな推測を立てるものの、今は通行止め。


 しかしそれを裏付ける証拠は出てきた。


 これは悪魔の通貨経路だ。

 それは駐輪場と図書簡を往復している。

 

 話に聞いた限り、彼が図書館から出たのは閉鎖時間ぎりぎりだという。


 ならば、図書館、駐輪場、図書館の順だろう。


 駐輪場が先かもしれないが、ここで悪魔が召喚できるとは思えない。



 

 調査報告


 悪魔の移動経路居ついて。

 昨日出現した悪魔の移動経路が判明した。

 悪魔は図書館に二度訪れていることから、図書館、駐輪場、図書館の順で移動している。

 図書館に二度移動しているのでここが住みかと思われる。

 しかし、どこから出現したのか。

 どうやって、桃子をさらいに行ったのかは不明。

 独自の移動経路があるものと思われる。






 あなたはかび臭い本をめくっていた。

 古本屋で見つけた本だ。


「やっぱり記述はあるな」


 思っていた通り、悪魔に関する情報があった。

 一般的に言えば不気味な、しかし今のあなたにはどこか滑稽な。それは実物を目で見たためだろう、挿絵がある。


 黒い体に蝙蝠の翼間違いないだろう。


 捜査ファイル。


 夜鬼ナイトゴーント

 カダスへの探索記に登場する、現実世界と、ドリームワールド両方に生息する奉仕種族。

 彼らの生息地として最も有名なのは、彼らが使えている旧神の王ノーデンスの聖地ングラネク山。

 そのほかにもノーデンスの敵対者であるニャルラトホテプに使役されることもある。

 その他の関係性としてはグールと同盟を結んでいる。

その外見はまるでゴムのように黒い体と蝙蝠の翼、そしてマネキンのように一切のパーツを持たない頭部。

 

 しかるべき手順に沿って儀式を行えば人間でも使役が可能であり、かつて魔女たちが好んで使った使い魔だったそうだ。

 しかし、現在ではその秘術は失われている。

 その容姿は蝙蝠のような翼とマネキンのような一切のパーツが存在しない顔が最大の特徴。

 聖地ングラネク山を守護している。

 

 

「うん、さっぱりわからない」


 調査してみて、分からないという事が分かっただけだった。


「それにしても魔女に使役されていたか。

 現実世界にも普通に生息しているっていうから、もしかしたらもあるけど……。

 誰かが呼んだ可能性もあるな」


 あなたは調査の前提条件、野生の夜鬼(悪魔)が暴れまわっているの反対意見として、人間にも使役が可能という文字を記入した。






「大学で起こった事件について何か知っていることはありませんか。

 桃子がさらわれた事件と何か関係があるのではと考えると……」


 夢は一筋の涙を流した。

 傍らの白いカバンの中で目薬が怪しく輝く。


「そ、そうはいってもね」

「お願いします。どんな些細な情報でもいいんです。

 正直私の頭の中もぐちゃぐちゃで、誘拐の時の話をうまくまとめられなくて。

 でも、この件が解決すれば自分でも少しは落ち着けると思うんです。だから」


「わ、分かった。でも」

「事件を整理できる光景だけでいいんです」



 謎の空飛ぶ秘奥生物、突如消えた人間。

 あまりも無茶苦茶な証言だ。


 偽りなどないが信じられるわけもない。

 幸い、極限状態の中では見間違えや恐怖による幻想など珍しくもないため疑われることは無かった。

 しかし、尋問の回数は増えていく。


 そして夢にとっては偶然金貨を拾うも同然の幸運だった。


 目撃者という立場は警察から話を聞きやすい。



 目をつけたのは人がよさそうなまだ青さが抜けきっていない警察官。


「正直な話、大学の事件と今回の事件はさ、奇妙な類似点があるんだよ。

 関係性なんて全くないはずなのにさ」


 その彼は大学の事件について夢が嘘泣きしたせいもあるが、本人自身が偽りのない疑念を感じていたためかあっさりと口を開く。


「どういった関係性ですか」

 

 夢は緊張の糸をぴんと張る。


「人が忽然と消えているのさ。

大学の事件だけど、被害者の荷物が上の階で発見されてさ。

 その場で倒れているなら納得だよ。なのに地下だよ地下」

「酔っぱらいの行動ですし」

「だが、検死解剖の結果、アルコールは検出されていないんだよ。

 でも、溺死なんて考えずらいしさ。

 謎だよ謎。

 君の事件でもそうさ。

 大形の生物がいた形跡はあるんだよ。

 しかし、あるべき足跡がない。

 君の証言道理空でも飛んだんじゃないかと思えてくるよ」


 ―――こんな謎めいた事件は初めてだー。と口では残念そうだが、内心では闘志を燃やしているのが丸わかりだった。

 きっと、彼は将来いい刑事になるだろう。




 捜査報告

 図書館でも被害者の荷物は上の階で発見されている。

 またアルコールの類いは未検出。

 まるで地下空間に瞬間移動でもしたかのように忽然と姿を消している。




 トトは祖父に呼ばれた。

 何でも厄介なクレーマーが現れたらしい。

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