罪人
第一章
第三話
俺は今幸せだ。なぜか?みんなだって大好物を食べている時は幸せだろう。それと同じさ。俺は今大好物を食べている。
「チーズうめーーーーーーー」
そう言うのは、猫耳と尻尾が生えている"ヒョウガ,,だ。彼は元々世界最速の生き物チーターだったが、ひょんなことから死に、異世界の人間に魂が転生してしまった【チーター人間】なのだ。
「そ、そんなに美味しいの?私も食べてみようかな。………………でも、ダイエットが……………」
ヒョウガの目の前に座っている彼女の名はサーナ・ミレイア。髪の毛はオレンジ色で長髪。そしてエルフだ。その可愛らしい姿から、悪党に拉致られそうになったところをヒョウガに助けられた。実際は、裸だったヒョウガが服を奪うために悪党を倒した。まあ、彼女を助けたことには変わらない。今はそのお礼として、ここ《オウブ帝国》にあるチーズが有名なお店『チーザーアウト』に連れてきてもらった。
「それはそうと本当にさっきはありがとうございます。私、ああいう人達によくからまれるんですよね。いつもは魔道具でどうにかしてたんですけど、今日は持ってきてなくて」
ヒョウガはチーズの盛り合わせを食べながら言う。
「ふぁもうぶっふぇふぁに(魔道具ってなに)?」
口に含んであったチーズがあらゆる方向に飛んでいった。サーナの方にもチーズが飛んでいった。苦笑いでサーナは言う。
「・・・・えっと・・・・・・・一回食べてからにしない」
二人は皿の上に乗っていたチーズの盛り合わせを完食した。というか、ほぼヒョウガ一人で完食した。その後に二人は話を戻した。
「それで、魔道具って何?」
「え、えっとどこから説明しよう。そうだね、じゃあまず『魔法』のことから説明するね。この世界に魔法と呼ばれる存在が見つかったのが今から三百年前で、初めは『勇者』という人が悪のボス『魔王』を倒すために魔法を使ったってのが常識的な話ね。そこから人々が魔法という存在を研究して二百年前から誰でも魔法が使えるようになったの。でも魔法には『魔力』と呼ばれる『精神エネルギー』を爆大に使うから人々はあまり利用しなくなったの。でもこんな便利なもの他にないと思った科学者が少ない魔力で魔法を使えないかと考え百年前に出来たのが『魔道具』ってわけ・・・・・あのう、ここまでわかる?」
「まあ、なんとなくは。つまり俺でも魔法は分からないけど、魔道具は使えるってわけね」
「まあ、あながち間違えてはないけど魔道具もどうだろ。今言ったように魔法と魔道具の両方は魔力と呼ばれる精神エネルギーを使うの。だからヒョウガ君の魔力がどのくらいなのかわからない限りあまりおすすめしないよ。私だって私の魔力にあった魔道具しか使ってないし」
「じゃあ、サーナの魔道具かしてくれ。おまえのなら魔力少なそうで俺でも使えそう」
「えっと、私のは・・・・・・・・・・・・・・・・」
サーナがその先の事を言おうとした時、バンっ!と大きな音がした。ヒョウガとサーナが座っているところはお店の端の四角いテーブル。音はそこからした。
それは、テーブルを両手で叩いた音だった。だが叩いたのはヒョウガでもサーナでもない。では誰か、それは・・・・・・・
「見つけたぞ罪人」
銀色の鎧をまとい、金髪の長髪を肩まで伸ばしている。国家聖騎士団の一級聖騎士"速攻のマルト,,。今ヒョウガ達の目線の先にいるのは彼だ。腰のあたりにある剣が店の電気が反射して光っている。
さらにマルトはヒョウガの方を見て続けざまに言う。
「おまえを公然ワイセツ罪の罪で逮捕する」
言葉の意味は"人間的感覚,,でなんとなくわかったが、ヒョウガは元々はチーターだ。国のことや犯罪になんて全くこれっぽちもどうでもいい。だからその言葉に一番反応したのはヒョウガの目の前に座っているエルフ少女サーナだった。
「こっ国家聖騎士団がなんでこんなところに。そっ、それにヒョウガ君が逮捕って、何かの間違いじゃ」
「ん?あなたはこの罪人の知り合いですか?」
「ざっ罪人って!ヒョウガ君はそんなことをするような人じゃありません。現に私は彼に助けられました」
「お嬢さん。彼が人前で裸になっていたのは私も見ました。わかるでしょう?ここオウブ帝国で一回でも罪をおこなへば国家聖騎士団が捕らへに行くって事ぐらい。さらにそれがこの私、速攻のマルトの仕事だったら一日でかたずいてしまう事ぐらいも」
「速攻の……………マルト……あなたがあの、速攻のマルト」
ここでマルトは再び顔をヒョウガに戻した。
「罪人ヒョウガ、おまえをここで"速攻のマルト,,の名にかけ逮捕する」
今までのサーナとマルトの会話を適当に聞いていたヒョウガに話が振られた。そして、一呼吸置いてヒョウガは、
「・・・・・・・・・・・・・・・はあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
ヒョウガは今までで一番大きく一番長いため息をした。その顔は呆れ果ててるようなめんどくさそうな顔をしていた。そして、マルトの方を獲物を狩るような目で見ながら一言、
「やれるもんならやっってみろ」
その誰もが予想しなかった言葉に一瞬周囲が凍りついた。国家聖騎士団に対しての捕まえてみろ宣言。と、周りはそうとらえたっぽいが、実際、ヒョウガはそういう意味で言ったわけではなく、ただ単に服を着たくても着れなかったのに向こうの一方的なとらえ方で捕まえると言われたことに対し、少し、ほんの少しだけイラっとしたからだった。
だが、マルトはそうとらえていない。自分は今喧嘩を売られた、そうとしか思っていないようだ。
「ほう、この私相手に捕まらないと。では、お望みどおり捕まえてあげましょう。この"速攻のマルト,,の名にかけて」
「はあ〜〜〜〜〜〜〜、めんどくせ〜〜俺何もしてないのにな〜〜、まあでも、ここでただはいって言って捕まるのも納得できないしな〜〜」
「ちょ、ヒョウガ君。何言ってんの。相手はあの国家聖騎士団の一人よ」
「いいよそんなの。俺そういうのよくわからないし。あと、これが初めての狩だと思うとなんかテンション上がるし」
「でも・・・・・・・・・」
サーナが何かを言おうとした時だった。シュリン。という音がなったあとの直後だった。ザンっとおうぎ形の銀の残像を残しなながら、一本の剣がチーズが乗っていた皿ごとテーブルを真っ二つにした。
始めに攻撃を仕掛けたのはマルトだった。
「ごちゃごちゃうるさいぞ罪人。お前は俺に喧嘩を売ったんだ。もう引き返せないぞ。路地裏の時と合わせて二度も俺に剣を抜かせたのだからな。死んでも文句を言うなよ罪人」
口調が変わっていた。結論から言うとマルトは二重人格なのだ。剣を抜くと、’’速攻のマルト,,という仕事をすぐに終わらせるというプライドが高くなり人格が変わってしまう。路地裏で剣を抜いた後すぐに斬りかかったたり、ヒョウガが逃げたあと叫んでいたのはこのためだ。
「ああいいぜ。じゃあ外で殺りあおうぜ」
「ふっ、勝てると思うなよ罪人」
そして、二人は外に出ていった。
サーナは一人残りチーズの盛り合わせとテーブルの弁償代を店長に払った後遅れて外に出ていった。
*
マルトは仕事として、ヒョウガは訳もわからず逮捕されそうになったため、その決着をつけるための決戦が始まろうとしていた。




