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第六話 「ステータス」

 


 ――ステータスオープン!


 念じるとすぐに目の前に現れたるは、なんだか透明なガラス板。もとい、仮想ウインドウ。アイパッド的なフィーリングを感じてもらえば大体あってる。多分タッチパネル式だろう。書いてあるのは日本語で、こんな感じ。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 名前:アキト・ナツムラ

 クラス:勇者

 クラスレベル:1

 種族:普人族

 状態:正常

 ステータス:

 《筋力》1

 《頑丈》1

 《敏捷》1

 《器用》2

 《魔法威力》1

 《魔力抵抗》1

 《幸運》1

 固有武装:

 《女神・アーデルリフィケイティカ》1

(神力を封印し下界に降り立った新人女神。1レベルアップに必要なスキルポイント:10)

 所持スキル:

 なし

 固有スキル:

 なし

 残りスキルポイント:20

 新しくスキルを習得する▽


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 随分と簡潔に書かれている。異世界系娯楽小説を嗜んでいた身としては大体理解できるけど、それでも詳しい仕組みを聞いておく方が良いだろう。見る限りでは、スキルポイントの使い道というのはかなり多そうだ。大体の項目の横に、これ見よがしにレベル的な数字がついてやがる。


「出たのじゃ?」

「ああ、うん。なんか色々書いてあるよ。名前とかクラスとかステータスとか」


 というか、『クラス:勇者』かぁ……いままでも疑っていた訳じゃなかったけど、実際に目にするとなんかこう……選ばれた感あるよね! あと、さりげなくある『固有スキル』の欄に胸が熱くなる。今はないらしいが、覚醒シーンは必見だろ。


「残りスキルポイントはどうなっておるのじゃ?」

「えーと、20って書いてある」


 それを告げると、リフィはなんか微妙そうな顔をする。


「うーん……微妙じゃの」


 顔と同じような台詞を言わなくていいんだよ! なんだよ、俺のスキルポイントのどこが気に入らないんだよ。言ってみろよ!


「勇者としての適性が高いと、最初からスキルポイントが30以上あったりするのじゃ」

「えっ」


 ……まじで?


「俺より10ポイント以上多いのか……そういえば、スキルポイントってどうやって使うんだ?」

「ステータスやスキルなら取得したいレベルの倍のポイントを、固有武装なら1レベルごとに決まったポイントを支払ってレベルアップさせるのじゃ。ステータスとスキルの最大レベルは5で、固有武装のレベルは上限なしじゃな」


 つまりステータスやスキルなら、10ポイントで2レベルまで取得できて、4ポイントも余る。

 固有武装は……うわっリフィのレベル上げに必要なポイントクソ高ぇ! 固有武装は皆そうなのか?


 ステータスとスキルの上限は5だから……10ポイントでレベル2までスキル取れるだけでも、結構スタートダッシュに差が出る気がする。なるほどな、10ポイント分のアドバンテージはなんとなく伝わった。


「ついでに、クラスレベルを一つ上げるごとに使えるスキルポイントは1増えるのじゃ。クラスレベルが高くなるほど上げにくくなるのは、アキトにも馴染みのあるシステムかもしれんの」

「つまりは結構多めの、取り返せない初期アドバンテージ……!」


 というか単純に、10レベル分の差ってことだろ? これはリセマラして初期値厳選するレベル。なんてこったい、俺の勇者適正の低さが憎い! 俺のスキルポイント気に入らない! あと10ポイント分空から降ってこねぇかな。こないな。


 こういう地味な所でも、世界の悪意は俺のやる気を削いでいく。まあ俺が特別な存在とか言われてもしっくりこないどころか湿疹がでるけど。いや、勇者に選ばれた時点で十分特別なのか。あーなんか急に体中が痒くなってきたなー。……森の中だし、虫に刺されたんだろという的確なツッコミは甘んじて受け入れる所存。


「ま、まぁそう落ち込まなくても大丈夫なのじゃ。後はあのー、ほら! アキトの初期ステータスはどうだったのじゃ? 過去の勇者の中には、最初から3レベルを保持していた猛者もいたのじゃが、2レベルでもこの世界では十分凄いことなのじゃ!」

「え……まじで? ちなみに俺、《器用》が2レベルなんだけど」

「おお!」


 ぱん、と手を叩いて喜ぶリフィ。どうやら俺は当たり個体のようだ。勇者の適正は微妙だと言われたが、身体能力なら……あれだ。針の穴に糸通すのとかすげぇ得意。他に特筆すべき点は……えーっと。パソコンのブラインドタッチができるくらいか? あ、あとリンゴの皮むきとかも得意だな! 果物を丸裸にすることにかけて、県下で俺の右に出る者はいないと自負している。


 あれ? これ本当に当たり個体か? なんか雲行きが怪しくなってきたぞ。《器用》高いとかなんか凄い生産チートとかできそうだけど、リンゴの皮をどうにかする生産チートとかもあるんだろうか。俺やだよ、鍛冶とか。あんな長時間トンテンカンとやるのは、想像するだけで汗で不快感マックス。

 なんだか不安を感じていると、やっぱりリフィがこんなことをのたまった。


「それで、他にどんなステータスがレベル2なのじゃ? 《器用》を一番に挙げるということは、身体能力系ではない……《魔法威力》と《魔力抵抗》かの。魔法使いタイプなら、この世界でもかなり重用されるのじゃ。勇者としての活躍も期待できるというものじゃが……」

「……ないです」

「のじゃ?」


「他に2レベルとか……ないです」


「えっ? ……それはもしかして、《器用》しかレベル2がないということかの? えっ、レベル2じゃよ? さっきは控え目に言ったが、ぶっちゃけ勇者なら、三つくらいレベル2があるのが普通じゃよ?」


「ないです」


 その瞬間、リフィに衝撃走る。


 かっ! と目を見開いてそのままよろよろと後ずさり、最終的にのけぞりブリッジを披露した。美しい曲線を描く、金髪ロリのお腹と背中。なんなのそれ。やっぱお前芸の神様なの? 馬鹿にしてるだろ絶対。

 イラッときたので、薄手のワンピースによって浮かび上がる丸みを帯びたお腹のラインを人差指でぶすっと指した。「にょわぁぁ」と声を上げてロリブリッジが崩壊する。


「い、いきなりなにするのじゃ!」

「それはこっちの台詞だろ!?」

「妾は信じた勇者がただの一芸にちょっと優れた一般人だったことに衝撃を受けておったのじゃ!」

「それはっきり口に出しちゃいけないやつだから!」


 もっと俺を信じ抜けよ神様。あんたが選んだんだろおい。口に出さなければ、なんかこう今からでもすげーミステリアスかつ訳ありの、『俺、力隠してますから』的な路線に変更できたのに。一見弱そうな奴が主人公を張る際には定番かつ人気の設定である。過去編とかも入れるとソゥグッド。


「いや、ステータスは隠すも何もないのじゃ……その人本来の力がまるっと全部現れているのじゃ」

「いやリフィ、ここは逆に考えるんだ。何の特別性も無いからこそ、ここから何にだってなれるんだって。いわば俺は……可能性の塊」

「そのポジティブさは美徳かもしれんの……」


 っていうか《女神・アーデルリフィケイティカ》の説明に新人女神とかあったし、リフィがちゃんと高性能な奴を選定し損ねた可能性。他の勇者もこんな感じだと、俺はちょっとこの世界の行く末が心配です。


「ん? 妾が選んだのは、アキト一人だけじゃよ? 他の八人は、先輩方が二人ずつ選定したのじゃ」

「全部リフィが選んだ訳じゃなかったのか……よかったよかった」


 ほっ。


 これで安心して他のやつらをあてにできるというものだ。俺の不甲斐なさは、他の勇者が補う! これぞ仲間同士の助け合いというやつだ。俺は後方支援として大人しくリンゴでも剥いてるよ。


「これ見よがしに胸を撫でおろさないでほしいのじゃ……正直、ちょっとへこむのじゃ……」


 異世界に来てやったことといえば、まだ大地に身をゆだねてごろごろしたくらいだが、早くもリフィはお疲れ気味だった。俺だって疲れたよ。まだなんも始まってないのに、もう終わりにしたい気分だよ。ふかふかのベッドで横になりたい。しかしそれをするには、まず森を抜けなきゃいけない。


 そう。なんかあんまり勇者適正がないことが判明した俺だが、それでもこの森を抜けられるくらいには勇者してると信じたい。勇者ならスキルポイントでシュッとしてズバーンで問題解決なんだろ? 頼むぜ。


 ……ホント、頼むよ?



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