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第三十九話 「忠告」

分割の関係でちょっと短め。前話と足して二で割ったら丁度良かったんだけどな……




 ――そして話自体は、すぐに終わった。


 ……本当に、可能なのだろうか。リフィは自信ありげだが、……リフィだしなぁ。

 リフィとロゼの頭をもはや無意識的に撫でながら、考える。


 リフィの話が正しいかどうかを確かめるためには、スキルポイントを消費して……《静電気》を、取らなければならなかった。あの、人を馬鹿にしてんのかと問いたくなるような、ゴミのようなスキルをだ。

 もしそれで、リフィの言うことが間違っていた場合、2ポイントをドブに捨てるようなもんなんだけど……。


『大丈夫じゃよ。妾、これでも神様じゃよ? これ以上の太鼓判はないぞ?』

『ファミ通の攻略本並みの「大丈夫」だなぁ、それ』

『もっと妾を信じてもバチは当たらんと思うのじゃぞ!?』


 いやだって、さっき女神のくせに魔王討伐諦めるとか言いだしたし。無条件に信じたら、なんかこう、堕落していきそうで怖い。お前実は、芸の女神じゃなくて堕落の女神だろ。絶対信仰の対象にしちゃいけない類の。


『いや、芸の女神でもないんじゃけど! いつ妾がそんなこと言ったのじゃ!』

『それはまあ、普段の生活態度だよな。小学校の通信簿で、「リフィちゃんはいつも皆を笑わせてくれますが、少し落ち着きがないのが欠点です」って書かれそう』

『なんじゃその、中途半端にリアルな寸評は。やめい』


 まあ、リフィの信頼度と落ち着きのなさはともかくとして。

 この女神様の話が正しいのかどうか……試してみる価値くらいは、多分、あると思う。


『14ポイントもスキルポイントがあるんじゃし、そこはもっと攻めの姿勢でいくべきじゃと思うのじゃ』

『前向きに検討させていただきます』

『それスルーされるパターンじゃろ!』


 ちなみにこの間、ロゼは俺の撫でテクによって声も出さずに悶えています。おう、涎は拭けな。……ときおりビクンビクンしてるが、別にエロいことしてる訳じゃないんだ。いや本当に。健全、健全ですよ! やめて! 通報しないで!


 と、このようにリフィとロゼと戯れていると、一人の冒険者に声を掛けられた。


 魔法使い風のローブを着た、中肉中背の男性だ。


「……君、ちょっといいかな?」

「あ、はい。なんですか」


 ひとまず撫では中止して、男性に向き直った。

 ……通報? えっ、通報?


「あの、さ……ステラちゃんの宿に泊まるっていうのが、さっき偶然聞こえたんだけど。本当?」

「ええ。彼女に紹介していただいたので、そうしようかと」


 ……セーフ。どうやら事案ではなかったらしい。よかった。

 俺が答えると、魔法使いっぽい人は真剣な表情でこんなことを言う。


「ステラちゃんの宿に泊まるなら、一つだけ忠告しておくよ。あそこは対応を間違えると、宿泊中でも容赦なく追い出してくるってもっぱらの評判の、要注意宿だからね」

「忠告?」


 っていうか、なにをどう間違えたら宿泊客を追い出すなんてもっぱらの評判になるんだろう。


 よほどマナーに厳しいとかか? それだと俺はともかく、リフィとロゼはアウトな気がする。リフィはうるさいし、ロゼは素で鍋に顔を突っ込んじゃうお茶目さんだからな。

 最悪リフィはいいから、ロゼだけでも泊めてもらえるよう土下座の準備だろうか。


『酷くないかの? 胸囲の格差社会なのじゃ』

『よく分かってるじゃないか』


 内心でリフィと軽口を叩き合っていると、魔法使いっぽい人が人差し指をぴんと立てて、その忠告とやらを教えてくれた。


「いいかい、君」

「はい」

「ステラちゃんの親父さんと話すときは、絶対に目を逸らさないことだ。なんかあの人、男は根性で選別してるっぽくて、僕も一回行ったんだけどちょっと目を逸らしたら出てけって言われちゃったから」

「根性……?」


 根性ってなんだ。めっちゃメンチ切られて、圧力に負けて目をそらしたらアウトとかそういうことなのか。……客に対してメンチ切る宿屋ってどうなんだオイ。本当か? その話。


「は、はぁ……忠告、ありがとうございます」

「いやいや、どうってことないよ。それより、目を逸らさない方法で宿に泊まれるかどうか、試してきてくれ。それでオッケーだったら、今度は僕が行ってみるからね!」

「確証無しかい!」


「それじゃあ、頑張ってね」と言って魔法使いっぽい人は去っていった。俺は体のいい実験台じゃないんだぞ。忠告でもなんでもなかったじゃねーか。


 ……まあよく分からんが、ステラちゃんが口利きしてくれるらしいし、リフィやロゼもいるし、大丈夫だと思いたい。


「お待たせしましたです! それじゃあ行くですから、私に着いて来てくださいです」


 っと、耳触りのいいちょっと甘ったるい声とともに、ステラちゃんがぱたぱた駆けてきた。


「ああ、お願いするよ」

「お任せなのです!」


 ギルドの制服から着替えた彼女が、引率を引き受けてくれる。さて、鬼が出るか蛇が出るか……本当に俺たちは宿屋にいくのか? なんだこの疲れる心構え。


「しゅっぱーつなのじゃ! 宿っ、宿っ! ベッドで寝れるぅー! のじゃー!」


 右手を大きく天にかかげ、ヨッシャー! と言わんばかりのリフィ。


「リフィ様、嬉しそうですね」

「……ああ、うん。森で寝たり洞窟で寝たり道端で寝たりのせいかな……」


 神様なのに、神様なのに……なんかちょっと不憫になってきた。ごめんよリフィ。もうちょっと優しくしてあげようと思いました、まる。



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