第二十四話 「脱出」
同日投稿その2。
第一章部分……異世界導入編は投稿完了です。
無言で首を振って聞きたくないアピールをする俺に対して、リフィは静かに語った。
『……確かに魔法っぽいことは出来る。しかし、明確に出来ないこともあるのじゃ。どんなに頑張っても、人間の魔力だけでは七大属性の強い現象は起こせん。火・水・風・土・雷・光・闇。この七つの属性が深く関わる現象は、精霊の力を併用した魔法でしか発現出来ないのじゃ。ファイアーボールなんて、まんま燃え盛る火の塊じゃからのー。無理の無理カタツムリなのじゃ』
『なん……だと』
『要するにでかいことは出来んのじゃ。まあ《生活魔法》レベルの、種火を作るくらいなら魔力だけでも出来るがの。まんま《種火》というスキルがあるのじゃ。それで我慢して欲しいのじゃ』
いや我慢できるかボケ。しょぼすぎるわ。誰がそんなスキル取るか。
いわく『精霊には七大属性をそれぞれ司るものがいるから、その力を借りないと属性に関連した派手なことはできない』らしい。むしろ魔力だけで派手な事をされないよう、精霊が制限をかけているんだとか。精霊も既得権益を守るために必死なんだとか。そしてその精霊の力を借りる才能が、魔法の才能である。俺にはゼロらしい。
なんて器が狭いんだ精霊。光る埃のくせに。もっと属性に関する権利をフリーにしてプリミティブな異世界魔法事情に斬新かつ有益なイノベーションを起こすべきだと思います。
ん、いやでも待てよ。
七属性っぽくない魔法って、小説とかだと結構いっぱい出てくる気がする。空間魔法! とか重力魔法! とか振動魔法! とか。なんか物理の授業とかに出てきそうなやつらだ。逆に言うとそういうのは、魔法の才能がない俺でも、今後扱える可能性もあるってことだよな……?
よっし、なんか元気出てきた。ファイアボールが撃てないのは残念だが、そういうのでもまあいいよ。俺のありあまる魔力を、早く戦闘力に転化したいものである。
『うむ、確かに……強いて言えば《アイテムストレージ》は空間魔法っぽいスキルじゃしな。重力魔法と呼べるスキルも無いこともないのじゃ。対象の重さを増加させる《ヘビィアンカー》とかがそうじゃろうか。あとは振動魔法……うーむ、《電動マッサージ》のスキルとかかのぅ』
そうだよそれそれ! そういうの待ってた!
ただし一番最後、てめーは駄目だ。
『夢が広がるな。それで、そういうスキルはどうやって習得するんだ?』
『……修行、かのぅ。まあそれでもやっぱり、才能が無ければ覚えられないものが多いんじゃが』
修行? 才能?
『才能……あっ。なんかいきなり無理くさくなってきたぞ』
『逆に才能さえあれば、勇者補正で見るだけでも習得可能スキルに追加されるはずじゃが……いままでのポンコツっぷりを見るとアレじゃの……』
うん、まああれだ。流石に何個かは有用なスキルを覚えられると信じたい。《アイテムストレージ》も《クリエイト:味噌汁》も覚えられたんだ、なんか戦闘系の魔法っぽいスキルだって一つや二ついけるだろ。いつか。そのうちな。そういうスキル教えてくれる人って、どこにいるのかなぁ。この世界の攻略wikiが欲しいです。
話が一段落ついた所で、ロゼをちらっと見る。
相変わらず鍋に顔を突っ込んでいた。味噌汁に夢中で、俺達の話を気にも留めていなかったようだ。見た目は俺がリフィを抱っこしてるだけだしな。
今回は味噌汁を出した後、無言でロゼの前においてみたのだが、しばらくじーっと味噌汁を見た後にはっとした様子で食べ始めた。
さては俺の命令待ちをしていたな?
まあ、自分で命令を待たなくていいことに気付いたのは進歩なので、いっぱいお食べと頭を撫でておいた。
俺は褒めて伸ばすタイプなのだ。それからはもう、彼女は味噌汁の虜。思いのほか食いしん坊さんだね。たくさん食べて、大きくおなり。ああもう、またそんなに顔を汚して……
……っは。今の思考、なんかすげぇオカンみたいだった。危ない危ない、もう少しでロゼを性的な目で見られなくなる所だったぜ……。
「その思考の方がよっぽど危ないのじゃ」
ロゼに続いて俺とリフィも味噌汁をすする。ロゼがお代わりの味噌汁も飲み干したところで、朝食タイムはお開きとすることにした。
そろそろ、味噌味以外の水が飲みたいものだ。味噌と水に分離して出せないものだろうか。どうせ創造するものは同じになるんだし、分離できても良い気がするんだけどなー。
鍋を《アイテムストレージ》に回収してっと。
「さて。それじゃあ街に向かって出発するか」
「のじゃ!」
「はい、ご主人様」
いよいよ、森を抜けるために動きだすことにした。昨日一日が濃かったせいで、まるで途方も無く時間がかかったようにも錯覚するが、まだ異世界に来てから三日目である。
確か、ロゼが連れてこられたのは洞窟の左手からだったか。まずはそこで獣道を探すことにする。三人でごさごそやると、あっさりそれらしい道を発見。ロゼも『なんだか見覚えがあるような、ないような……』と言っていたのでとりあえず進んでみることにした。
相変わらず顔に当たる枝を、小剣でガシガシ伐採しながら歩く。
途中でミニボアが出たので、パワーアップした俺の《筋力》を見せつけてやった。町内腕相撲チャンプ舐めんなよ! ゴブリンのズダ袋に入っていたガントレットを装着して、ひたすら殴ること数回で、頭から血を流して猪は昇天した。前回とは大違いの戦果だ。もう猪は恐れるに足らんな。やっぱり吹っ飛ばされたが、それは些細なことだ。うん。
そして、ゴブリンキングとの戦闘でレベルアップ間近まで来ていたのだろうか。
<クラスレベルが10になりました。スキルポイントを付与します。10の倍数のレベルアップです。ボーナスとして、スキルポイントを付与します>
レベルが上がり、スキルポイントは14になった。
どうやら十の倍数では、通常のスキルポイントの他に、ボーナスポイントとして5ポイントも貰えるらしい。聞いてないぞこんなシステム……リフィの説明、大雑把すぎぃ。
結果、一気に6ポイントも増えてしまった。
《筋力》を一気にレベル4にできるな。ステータスの最高レベルって5だろ? このシステム、強くなるのが簡単すぎて逆に怖いぞ。流石、勇者のクラスは伊達じゃない。クラスはな。
まあ他の勇者なら、俺の三倍くらいのスピードで強くなるんだろうけど。そんな化物が八人もいるとか、これは割とマジで魔王瞬殺されるんじゃなかろうか。世界が安泰すぎる。
なお、ここでもスキルポイントは温存した。必要になったら必要なだけつぎ込むのが良いだろうという判断だ。優柔不断とも言う。リフィには思いっきり馬鹿にされたので、もちもちほっぺを引っ張っておいた。めっちゃのびた。
そんな一幕もありながら、てくてく歩くこと三十分ほど。
ついに木々が開けて来て――――
「抜けたーーー!!」
「のじゃーーー!!」
俺達はようやく、森から出ることに成功したのだった。




