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第十五話 「ペナルティタイム」

同日投稿その2。



 


「何してんのお前」


 情けなく木にぶら下がっている女神さまに、優しくお声掛けさせていただく。


「いや……刃物に斬られる覚悟は決めたが、ゴブリンに揉みくちゃにされる覚悟は決めてなくてじゃの……咄嗟に『犯られる!』と思って木の上に避難していたのじゃ」


 頭上から降ってくるのは最高に情けないお言葉。


「駄目だコイツ……」

「は、早くおろして欲しいのじゃー」


 もうそのまま落ちたらいいんじゃないかな。


 結局、リフィは落下した。無傷だった。なんか癪だったので抱きついて、俺の全身の返り血をお裾分けしてやった。


「ぎゃー! べとっべとなのじゃぁー!?」


 いくらスパアマ状態でも、一介の男子高校生にゴブリン十七匹の相手はきつかったんだからな。伊達にポンコツ勇者してない。他の勇者ならもっとスマートに、一瞬で片を付けたんだろうけど。RPGのド定番最弱モンスター相手に泥試合する勇者とか、笑えないわまじで。

 せっかく魔力量が多いんだし、魔法が使えないのが本当に悔やまれるな。無いものねだりもしたくなるというものよ……はぁ。


「なんていうか、その……ごめんなのじゃ」

「謝るなよ……リフィは何も悪くないんだから、なんか悲しくなっちゃうだろ……」

「ごめんなさいなのじゃぁ……そしてべとべと気持ち悪いのじゃぁ」

「これ一晩寝たら、リフィの浄化作用で落ちるか?」

「が、がんばるのじゃ」


 血まみれで抱き合って二人して落ち込む俺達は、傍から見ればどん引きの光景だったと思う。今はこの柔らかさと温もりだけが俺の癒しだわ。


「そういえばアキト、さっきの戦いでレベルアップしたみたいじゃの」

「ん? あぁ、そういえばそんな感じの音声が脳内に流れてきたような、こないような」


 あんまり記憶が定かではないので、ステータスオープン!


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 名前:アキト・ナツムラ

 クラス:勇者

 クラスレベル:4

 種族:普人族

 状態:疲労

 ステータス:

 《筋力》1

 《頑丈》3

 《敏捷》1

 《器用》2

 《魔法威力》1

 《魔力抵抗》1

 《幸運》1

 固有武装:

 《女神・アーデルリフィケイティカ》1

(神力を封印し下界に降り立った新人女神。1レベルアップに必要なスキルポイント:10)

 所持スキル:

 《異世界言語習得》1 

(【勇者専用スキル・常時発動型スキル】これさえあれば通訳いらず。1種類までの異世界の言語を見聞きするだけで習得する。レベルが上がると、習得できる言語の数が増える)

 《アイテムストレージ》1

(【勇者専用スキル・任意発動型スキル】旅のお供に便利な収納。押し入れ1つ分のスペースを持つ異次元収納を生成する。レベルが上がると、収納スペースが広くなる)

 《ブレイブシンボル》1

(【勇者専用スキル・条件発動型スキル】運命を切り開く勇者の証。危機に瀕した時、スキルポイントを4ポイント取得する。一日一回まで発動可能。レベルが上がると、取得できるスキルポイントが増える)

 《クリエイト:味噌汁》1

(【固有武装スキル・任意発動型スキル】いつもあったか家庭の味。鍋に入った出来たての味噌汁を創造する。レベルが上がると、より豪華なものが創造される)

 《スーパーアーマー》1

(【任意発動型スキル】どんな攻撃もものともしないスキル。十分間、自身の防御力を大きく上昇させ、ノックバックを無効化する。その後は十分間、硬直状態で動くことはできず、このスキルを発動不可。レベルが上がると、防御力・効果時間・硬直時間が増加する)

 固有スキル:

 なし

 残りスキルポイント:3

 新しくスキルを習得する▽


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 おお、クラスレベルが4になってスキルポイント増えてる。


 でも、ステータスやスキルを1から2に上げるには4ポイント必要なんだよね。いちたりない……。

 とりあえず《筋力》レベル2は欲しかったのに。リフィ曰く、この世界でのステータスレベル2は、『結構鍛えた人間。まだ全然人間』だ。地球で言えば、軍人さんレベルだろうか。そのくらい筋力があれば一日歩いても筋肉痛にならないだろうし、ゴブリンももっと楽に倒せたはずだ。


 ……まあ俺がちゃんと、リフィが説明する通りの『一般的な』ステータスの恩恵を受けられればの話だがな!


 ステータスの恩恵については、リフィからこう説明されている。


 レベル1で『何の変哲もない一般人。勿論人間』

 レベル2で『結構鍛えた人間。まだ全然人間』

 レベル3で『かなり極まった人間。でもまだ人間』

 レベル4で『生物としての最高峰。人間ではないかもしれない』

 レベル5で『超越的な力を持つ。人間をやめた』


 ポンコツなりに、《頑丈》はレベル5まで育てておきたいものである。何だかんだで保険にはなるだろう。俺は人間をやめるぞォオ! 

 まあ、才能がナッシングとかいう問題で、俺の場合はどう頑張っても人外レベルにはならないのかもしれないけど。せめて人間かどうか危ういくらいまでは登りたいものだ。


 ……しかし、ステータスはレベル間で格差が激しいな。スキルポイントにするとさほどでもないのに。流石は勇者システムってところか。

 一般人レベルから脱出するために、ステータスはすべて2以上にするといいかも。……《魔法威力》以外な。


「とりあえず、スキルポイントは貯めておくしかないな」

「新しくスキルが習得できるようにはなって無かったのかの? あれだけ派手にやったのじゃ、《格闘》か《剣術》くらいは発現しそうじゃが」


 ……ほう、新しいスキル! 

 確かにそうだな。猪と戦って《スーパーアーマー》を覚えられるようになったんだ、剣でゴブリンと戦ったし、これは《剣術》ワンチャンあるだろ。主人公キャラといえば、やっぱり《剣術》スキルだよね。鉄板だわ。鉄板にかっこいいんだわ。

 《鼻防御》? 知らない子ですね。


 ……あれ、でもそんなアナウンス、あっただろうか。《スーパーアーマー》や《鼻防御》の時は、取得可能になったらアナウンスが聞こえたんだけど。

 戦闘中で脳内麻薬どぱどぱだったから聞こえて無かっただけかな、うん。


『新しくスキルを習得する』をタッチ。さーて、《剣術》スキルー……


「少しそれっぽい行動をするだけでも、勇者はスキルを習得できるようになるからの。いくら勇者適正が低いアキトとはいえ、実戦もしたのじゃから流石に……」


「なあリフィ」


「なんじゃ」


「『新しくスキルを習得する』を押しても、鼻を防御するゴミスキルしかないんだけど。不具合かな」


「……ぱないの」


 リフィの顔があからさまにひきつり、そして憐れみに変わった。やめろ! そんな目で俺を見るな!


「っていうかなんじゃ、鼻を防御するスキルって……ゴミすぎるじゃろ」

「自分で言うのはともかく、人から言われるとそこはかとなく腹立つな」


 ――――どうやら俺は本当に、勇者に向いていないらしい。リフィは今度から、もっとちゃんと勇者を選ぶといいと思うな。第二第三の俺を生み出さないために。


 とりあえず腹が立ったので頭をぐりぐりしてやる。


「ふにゃあ、いだだだ! で、でもあれじゃぞ!? 一回習得可能スキルになってしまえば、そこからは強化し放題なのじゃ! アキトはアキトのペースで、気長に行くのじゃ。きっとちゃんとした稽古をすれば、《剣術》スキルだって発現するはず。むしろそれが普通なのじゃから! 諦めずに頑張ろうなのじゃ、のぅ?」

「優しさが痛い」




 ◇◆◇◆◇




 ちょっと休憩したら、元気になった。


 うんまあ、さっきの戦闘にしたって初の集団戦闘としては上出来だろ。スキルだって、経験値はこれから積んでいけばいいのさ。他のこの世界の人間よりはだいぶ恵まれてるんだし、それだけで有り難い話だよ。だいたい俺、魔王倒す気とか無いしね。他の勇者とは比べるだけ無駄だろう。


「そのポジティブなところは、本当に見習いたいものじゃの」

「そこだけと言わず、全体的に見習ってくれて構わないんだよ」

「それはできん相談なのじゃ」


 軽口をたたき合いながら、人間のいるところに向かってそうな獣道を探すため、洞窟の周辺を見て回る。


 リフィが一人で。


 俺はというと、アレだ。《スーパーアーマー》の副作用で、絶賛棒立ち中だ。これホントに、一歩も動けないんだな。首あたりまでは辛うじて動くが、体はまるで地面に根を張ったかのように動かない。首から下を固定するパントマイムみたいになった。

 ゴブリンの餌にするために創造した味噌汁を回収してる途中に来たので、棒立ちというか屈み立ちである。


 ……考えてみれば、この硬直状態に入る十秒ぐらい前に、なんかこう違和感というか、警告するような感覚があった気がする。きっと効果切れをお知らせしてくれていたんだろう。できればその旨も、分かりやすく説明書に記載しておいて欲しかった。


 十分間この体勢とか、俺にシェイプアップでもさせようというのか。これ以上俺が素敵になったらどうするつもりだ。

 ……とか、軽口を叩いてみるも、体勢は変わらないわけで。


 これホント辛いんですけど。めっちゃ腰にくる。誰か助けて……。



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