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27 「一歩の大きさ」


 入学式が終わり教室に移動して、教科書や生徒手帳を受け取る。紅葉は一年二組、姫花と一緒であった。


 楓は隣の三組。姉妹が同じクラスになることはない、と分かっていても、やっぱり楓と一緒のクラスになりたかったなぁ、と紅葉は残念に思う。


 初日はそれで終わり。後は楓と帰宅する。スクールバックの中に教科書を詰め込み、それを斜めに背負う。右手で楓の手を握り、もう片手でサッカーボール入れを持つ。


「あなたたちって本当に仲いいわよね」


 一緒に帰宅中の姫花があきれ顔で言ってくる。その唐突な指摘に、紅葉は楓と顔を見合わせ、首を傾げる。


 紅葉と楓は仲良しであるが、突然、はぁ、やってられん、とばかりに腰に手を当て、頭を振りながら言われる理由が分からなかったのだ。


「はぁ、あんなに機嫌悪かった楓は紅葉と手を繋いだらコロッと笑顔になってるし、紅葉も嬉しそうにしちゃって。だいたい、その手の繋ぎ方、あなたたちはどこぞのバカップルか!」

「う~ん、普通じゃないかなぁ? それにカエちゃんは私の為に手を握ってくれてるんだよ! いいでしょう?」


 紅葉は指を絡ませ、繋いでいる手を軽く振って、姫花に見せる。


「ああ、あの車の音が苦手って奴よね。でも、あれってもうほとんど治ったんでしょう?」


 紅葉は前世でトラックに轢かれた記憶から、車の音にトラウマを持っていた。しかし、それも家族の優しさと、時が経ったことで、今はほとんど治っている。紅葉が姫花の問いに頷こうとする。しかし、それより早く楓が姫花に答える。


「ふふん、ヒメ、あんた羨ましいんでしょう! でも残念! お姉ちゃんと手を繋ぐのは私なんだから!」


 楓が握っている手を姫花に見せ付けながら、さらにギュッとしてくる。


(うわぁ、カエちゃん物凄い得意げなドヤ顔! なのに、見せびらかしてるのが恥ずかしくなっちゃったんだね。頬が真っ赤になっちゃってる! さすが私のカエちゃん、安定の玉砕だね! 可愛いなぁ)


 紅葉は自身より少し小さい少女の綺麗な横顔を見ながら、内心で和む。ぐぬぬ、と姫花が頬を膨らませた後、


「べ、別に私は紅葉なんかと手なんて繋ぎたくないし! だいたい楓はいい加減シスコンを直しなさい!」

「別にシスコンじゃないし! 仲がいいだけだもん! ねー、お姉ちゃん!」


 紅葉は楓に甘えられ、嬉しさから満面の笑みを浮かべ答える。


「うんうん、仲良しだもんねー、カエちゃん!」


 笑顔の楓と、仏頂面になる姫花。二人のその仕草が可愛いらしく紅葉は笑みを深める。真新しい中学の制服が初々しさと可愛さを強調している。


 今日の楓は三つ編みにした髪を、白のリボンを使って、後ろ側の高い位置で緩くお団子に纏めている。シンプルなグレーのブレザーにとてもよく合っており、清楚なお嬢様というコンセプト通りの仕上がりだ、と楓の髪をセットした紅葉は自画自賛する。


 一方の姫花は本物のお嬢様なのだが、お嬢様っぽくはない。ショートにした黒髪はサラツヤで触り心地抜群だ。そして水泳で鍛えられたしなやかな身体は薄っすら日焼けし、無駄なく引き締まっている。顔はキツネ系というのだろうか、整った鼻梁に細長の輪郭の美人さんだ。制服を着た姫花は見た目的には活発でやんちゃそうな美少女に見える。


(うん、二人とも可愛いね! 見ていて飽きないよ)


 あなたみたいな内弁慶は、という姫花と、お姉ちゃんは渡さない、と言い張る二人の喧嘩を微笑みながら紅葉は見守る。


 春の優しい日差しが目に眩しい。住宅街の中にある遊歩道まで来たところで、紅葉はサッカーボール入れの紐を肩に掛け、左手を空ける。それから、姫花の右手をそっと掴む。 


 びっくりした表情の姫花に笑いかけ、指を絡ませ合う。ほんのり温かく柔らかい手の感触が心地よい。


 春風が吹き抜け、木々がさわさわと鳴る。紅葉のセミロングの髪がふわりと舞い乱れる。両手が埋まっている紅葉の代わりに二人の少女が嬉しそうに紅葉の髪を手で梳いて整えてくれる。


 ありがとう、と紅葉は微笑みながらお礼を言う。どういたしまして、と弾んだ声が二つ返ってくる。


 幸せってこういうことなんだろうなぁ、と紅葉は思った。



「ウソ! 楓、吹奏楽部に入るの!? 絶対無理だって!」

「何よ! それどうゆー意味?」


 それからほどなく、紅葉を挟んで喧嘩を再開する二人。相変わらず仲良しだなぁ、と思いながら会話に参加する。


「カエちゃんね、同じピアノ教室の苺ちゃんから吹奏楽部の楽しい話を聞いて、やりたいって思ったんだって」

「ふ~ん、でも、よくあの楓が吹奏楽部に入るなんて勇気出したわね。全員知らないところに行くなんて、あなたに出来るとは思ってなかったわ」


 ちょっと見直したかも、と感心する姫花に楓が黙る。紅葉はどうしようか一瞬悩んだが、正直に答える。


「うん、カエちゃん偉いよね! でも、ちょっと怖いから私と一緒に体験入部に行こうって話しあってるんだ。あっ、そうだ。ヒメも一緒にどう?」

「どうって……はぁ、紅葉、あなたそんな時間あるの? 今日から毎日レッジで練習だって言ってたじゃない。時間ないんじゃないの?」

「う~ん、まぁ、そうなんだけどね、何とかなるよ」

「何とかなるよって、まったく! 結局、甘やかしじゃないの!」


 紅葉は左側にいる姫花を微笑みながら見つめ、それを否定する。


「ううん、今回のは甘やかしじゃないよ。カエちゃんはすっごい勇気を出して、吹奏楽部に入ろうって決めたんだ。それはカエちゃんにとって大きな一歩なんだよ。それに時間がないのはカエちゃんも一緒。カエちゃんもピアノの練習で忙しいんだから。それでもカエちゃんはカエちゃん自身で決めたんだ。だから、私は少しだけそれを手助けするの。ねっ、甘やかしじゃないでしょ?」

「いや、甘やかし以外の何物でもないと思うけど……はぁ、いいわ、吹奏楽部には私が行ってあげるから。ほら、楓、それでいい?」

「……うん」


 頷いた楓は姫花に小声で、ありがとう、とお礼を言う。紅葉と姫花は顔を見合わせ、それから揃って微笑を浮かべる。


 あなたどの楽器やりたいの? 秘密、と二人で楽しそうに話しているのを紅葉は笑顔で聞く。


(カエちゃんは一歩一歩しっかり成長してる。私も頑張ろう!)


 紅葉は二人と手を繋ぎながら晴れ渡る空を仰いだ。



 紅葉は中学でサッカーをするのに浦和レッジレディースの下部組織を選んだ。初めはジュニアユース、中学一年生から三年生が各学年十数名前後いる中でプレーすることになっている。

 

 そして、次は高校一年から三年までがプレーする、ユースに昇格することを目指す。その先に、なでしこリーグ一部でプレーしている浦和レッジレディースがある。


 浦和レッジ側は紅葉の実力に見合ったステージでプレーさせる、と確約してくれた。あと、すべての費用をクラブ側が支出してくれるとなれば、十分過ぎるほどの好待遇だ。以前からレッジにはマスコミ対策でお世話になっているのも決めての一つとなった。


 紅葉は十月のU-16アジア予選日本女子代表に選ばれている。とはいっても、現状の三十名から、最終的に二十三名まで、篩にかけられる。


 その先、代表として中国に行けるのは十七名、さらにそこから先発の座を勝ち取り、ピッチに立つことが、紅葉にとっての当面の目標となる。紅葉以外は全員年上、中学三年生と高校一年生たちとの勝負である。


(今の私がどこまで行けるか分からないけど、楽しみだなぁ!)


 紅葉はサッカーが出来る喜びを噛みしめていた。



 自宅に帰りお昼ごはんを手早く作る。お母さんは学校で話し合いがあるとのことで、紅葉と楓二人だけの昼食だ。和風キノコパスタにサラダ、コーンポタージュ、デザートに果物いっぱいヨーグルトと、ちょっと手抜きなお昼ご飯を食べ、楓のピアノを聴いてリフレッシュしてから、紅葉は練習場である浦和レッジランドに向かった。


 自宅から荒川河川敷にあるレッジランドは、タクシーで二十分であった。デジタルタクシーチケットに料金をタップし運転手さんに渡す。


(タクシーのお金がもったいないなぁ。家から八キロくらいか。自転車でも三十分くらいの距離だよね? タクシーの中でじっとしてるより、足動かしてた方が気持ちいいし、次からは自転車で行っていいかクラブの人に相談してみよう!)


 タクシーを降りるとすぐにクラブ広報だというニコニコ笑顔を浮かべたちょっと顔色の悪いお姉さん、相田が紅葉に駆け寄ってくる。紅葉の担当だそうで、よろしくと挨拶される。


 クラブハウス受付でIDカードを提示し、ロッカールームで練習着に着替える。髪の毛を後ろで一括りにし、日焼け止めを塗り直した後、パンッと軽く自身の頬を叩く。


 毎年誕生日に楓からプレゼントされる赤のサッカーボールを持って外に出る。時刻は午後四時、午後六時から練習開始なので、少し早かったようだ。レッジの選手らしき人はまだ一人もいない。


 ストレッチしてからリフティングでもしようかな、と紅葉が思ったところで、スーツ姿の女性が声を掛けてくる。広報の相田が紅葉の前に出て立ちふさがる。


「紅葉ちゃん、今大丈夫かしら?」

「あ、池田さん! こんにちは!」

「はい、こんにちは。それで取材なんだけど、大丈夫かしら?」

「取材は、う~ん、クラブに許可取ってあれば、大丈夫ですけど……」


 浦和レッジに加入した紅葉への取材は今後、浦和レッジ広報が厳格に管理することになっている。小学一年生からの付き合いである池田の取材なら紅葉としては受けたいと思うが、それでも勝手に許可は出せない。困った顔になる紅葉と笑顔を引っ込めた相田に、池田は嬉しそうな笑顔を浮かべ、一枚の紙を見せてくる。


「それなら大丈夫。ほらこれ、この時間、ここでだけの取材許可通知よ。紅葉ちゃんがオッケーならしてもいいって許可、これ一つ取るのに苦労したわ。きっと紅葉ちゃんなら早くここに来るだろうっていう私の読み勝ちね!」

「おお~! さすが池田さん。敏腕!」

「ふふふ、もっと褒めて褒めて」


 池田は童顔な顔にえくぼを作って胸を張る。紅葉は池田のそんな子供っぽいところが好きなので、もう止めてもう褒めないで、と言われるまで褒めまくる。


 それがひと段落したところで、池田と世間話をしながら、紅葉たちは移動する。 


 ストレッチしながら取材をすることになり、人工芝コートの横にある空き地で柔軟体操をしつつ池田と話す。池田は聞き上手なので紅葉は楽しくお喋りしながらストレッチが出来た。


 紅葉は池田のことを年の離れた姉のように慕っている。なんでも気兼ねなく話せる間柄だ。池田は、紅葉のことならほとんど何でも知っている。バレンタインはチョコをプレゼントした? という話で、紅葉が家族にしたと言う話から脇道に逸れ、兄である和博のモテ話になる。


「へぇ、じゃあ和博君、全部断っちゃったんだ?」

「そうみたい、あんなにいっぱいバレンタインチョコ貰ってたのにねー。お返しのお菓子を渡しながら、きっぱり断って回ったんだって。そこがまた誠実で男らしいってことで人気がもっと上がったんだって。たっ君たちが泣きながら報告してきたよ」

「あははは、モテない男どもには許せないわよね! でもまぁ、和博君も可哀そうだわ。いつもこ~んな美少女と一緒だからね~。理想が高くなっちゃったんじゃないかな~」

 

 笑いながら紅葉の頬をムニムニしてくる池田に、紅葉は何のことだ、と首を傾げる。


「どういうこと?」

「うん、何でもない! 忘れて! 紅葉ちゃんはそのままでいいのよ。よし、それじゃあ本題に入ろっか。今日から新しいステージに入るわけだけど、意気込みを教えてくれるかな」

「意気込み、ですか? う~ん、特にはないです。いつも通りにサッカーするだけです。ただ、楽しみではあります。11人制って8人制より求められるものが格段に多くなるので。これまで通りにやって、上のカテゴリーじゃ通じない部分だったり、足りないなっていう部分がいくつも出てくると思うので、それを一つ一つ解決していきたいです。そうすれば、きっと私はもっと上手くなれると思うと今からわくわくします」


 親しき中にも礼儀あり、ということで紅葉は池田の真剣な表情を見つめながら、丁寧に思いを言葉にしていく。池田はタッチパッド用ペンをクルクル回転させながら紅葉の言葉に頷きを返す。


「そうですか。プレッシャーもあるなかで、ポジティブで素晴らしいですね。上手くなれるという部分ですけど、それは常々言っている、自分の中にある理想像に近づけることに対する喜び、ということかしら? どんな選手を目指しているのか大井選手の中では明確に見えているんですね。改めてその理想像を聞かせてくれるかしら?」


(理想像って言ったっけ?)


 紅葉はしばし考え、以前言ったであろう言葉を思い出しつつ確認する。


「はい、そうですね。理想像、とは言った記憶がないので……たぶん、自分の中にある、もう一人の自分には負けたくない、それを超えた選手になりたいって言ったところから、理想像という言葉が出てきたんですかね? あ、やっぱりそうですか、え~と、そうですね、将来どんな選手になりたいかっていうのは私自身まだ分かりません。私にあったプレースタイルは何なのか、それがまだ分からないので。身体の成長の面でも変わってくるところですしね。どこまで行けるのか。どんな選手になれるのか、それはまったく分からないです」


 今、紅葉は成長期だ。どんどん背が伸びている。このままさらに成長出来るのかどうかでもプレースタイルはまったく変わってくる。


 体格は良ければ良いほどプレースタイルの選択肢は増える。出来ることならこのまま成長して欲しいと思っている。 

 

 けれど、紅葉はそこまで自身の身体に対して、楽観は出来なかった。


(なんだろ、身体に脂肪だけついて、ちっとも筋肉がつかない感じ? もう覚えてないけど、多分、昔の方が筋肉があって、身体が軽く動いたんじゃないかなぁ……それに最近、ちょっと感覚のズレが酷くて修正するの大変だし、これで生理とか始まって、もっと体格変わっちゃったらクラムジーになりそうで怖いなぁ、はぁ、おっぱいよ、絶対にこれ以上大きくならないでよ?)  


 紅葉は自分の胸を見下ろし、まぁなるようにしかならないか、と割り切って続きを言う。

 

「分からないですけど、これから磨かないといけないとこは分かってます。とりあえず、その最優先課題を磨いていって、さらに足りない部分をいろいろ追加していく感じだと思います」

「最優先課題ですか! それは何だと思っているんですか?」


 瞳を輝かせて聞いてくる池田に紅葉はちょっと苦笑しそうになる。


(池田さんは本当に楽しそうに取材するなぁ。なんだか、こっちまで嬉しくなっちゃうなぁ)


 紅葉は小学生の間にどれだけのものを手に入れたか考える。トラップにドリブル、シュートとパスは両足ともにJリーガーであった前世の頃より上手くなった自信がある。


 試合ではいつも自身より身体能力の高い相手に徹底マークされていたので、身体の入れ方やオフザボールの動きも格段に良くなったと思う。


 では、前世の自分を超えたのか、というとまったく超えていない。フィジカルが圧倒的に不足しているからだ。サッカーの土台はやはりフィジカルなのだ。


 紅葉は前世とはまったく異なるプレースタイルを小学六年間で確立してきた。小さな身体は歩幅も狭い。それは短所であると同時に長所なのだ。細かなステップで相手を翻弄することが出来る。


 歩幅が狭いということは相手より長い時間地面に足を付けていることが出来る。それは軸の強度を高め安定感に繋がる。


 そして身体が軽いこと。対人の競り合いには勝てないが、それ以外では大きなメリットもある。アジリティ、とくに緩急、細かなストップアンドゴーは身体が軽い方が素早く出来る。


 小さいからこそ、有利なことがある。フィジカル不足という不利も、別視点で考えれば利点であった。だからこそ、紅葉は周りの年上たちと戦うことが出来た。


 でも、アジリティに頼っていてはこれ以上の成長は見込めない。


 前世との違いが明確になるのはこれからだ。これから先、胸が膨らみ、生理が始まり、身長は伸びず、脂肪が増え、筋肉が付きにくくなるのだろう。


 アジリティという武器が消えてなくなるかもしれない。いや、消えること前提で計画を立てるべきだ。


 フィジカルもアジリティも劣る。それはサッカー選手としてかなり厳しい条件に思える。けれど、それを紅葉は悲観していない。むしろ、楽しみにしている。


(だって、そうでしょう? 前世と同じ男として生まれ変わっていたら、私はきっと前世と同じプレースタイルになっていた。誰よりも上手くなるって考えたら、昔のプレースタイルを発展させていくって考えちゃうからね)


 男ではなく一人の女として紅葉はここにいる。女になったことで前世のようなプレーヤーにはなれないことが分かった。


 ――なんて運がいいんだろう!


 紅葉としてせっかく大好きなサッカーをまた一から始められたのだ。前世の続きにしてどうする。そんなのもったいなすぎるだろう。


 女の身体だからこそ、前世とは違う角度から、まったく新しいサッカーに挑戦出来るのだ。それはサッカーをより深く、より広く楽しめると言うことではないか。


(ちょっぴり強がりかもだけどね、ふふっ、でもその為の準備はしてきた)  


 フィジカル不足を補う為の練習は赤ちゃんの頃からやってきた。目を瞑って動き回る訓練は、確実に空間把握能力を高めてくれた。ピアノのおかげでリズム感に反射神経がかなり良くなった……気がするし、水泳によって体力も増えた。


(今はまだ前世の自分には絶対敵わないけど、いつかまったく新しいカタチで超えてやるんだ! 連携に戦術理解、視野の広さと判断力、それにドリブルや足技だって、もっともっと磨いていけば、私は前世とまったく違ったサッカー選手になれる! サッカーをもっともっと満喫出来るんだ!)


 ――やることはいっぱいある!


(いろいろと手を出して中途半端な器用貧乏になるのだけは気をつけなくちゃダメだけど、とにかく私に出来る限界を追求する。うん、考えるだけでも楽しい!)


「そんなに難しいことじゃないんです。え~と」 


 紅葉は言葉を整理しながら、にやけそうになる顔を堪えて、池田の取材に答えていく。



 四か月後、真夏の韓国、そこで紅葉は一つ失い、そして、大切なものを手に入れる。紅葉の一歩はそこへ向けて着実に進んでいた。


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