閣議と議会
ご無沙汰しておりました。作者です。
今後も宜しく御願い致します
1602年
この年の年始め、欧州より遥か東の島で国が建国された。嘗て黄金の国ジパングと呼ばれたその国はついこの間まで国内での内戦に明け暮れていた。それに漬け込むかのように欧州からの貿易が始まり衣類や武器等を大量に売ることができた。しかしここ数年は逆に金銀や武器(鉄砲や刀など)が欧州に流れ込んでいてしかも欧州製より優れているという始末。その国が統一され新たな国家の誕生したという。
その国の名を日本国と言う。
日本国帝都 尾張国名古屋
名古屋城での生活が始まり一週間が経過した。内政を重点的に行いながらも来るべき外征の準備も怠らない。その大広間にて国王豊臣秀頼は首脳陣と御前会議を開いていた。
「では、先ずは首相から内容の説明を」
『はっ。今回の御前会議の内容は内政と軍事、最後に議会の召集の3つで御座います』
「よし、では内政から」
『はっ、内務大臣、細川忠興が申し上げます。現在、日本国内の整備事業は8割纏まりつつあります。後3年もすれば全て完了に御座います。その他、満州、朝鮮、琉球、ウラジオストク、樺太の事業は残り5割と折り返し地点に差し掛かりまして御座います』
「ふむふむ、事業の方はわかった。では、臣民の人口と暮らしぶりはどうか」
『はい。陛下の御指示のもと臣民には新たに氏名と戸籍を定めました。集計の結果、現在の日本本土の人口はは2456万人で御座います。また、この戸籍を元に衣食住を確保して浪人がいないように対処する予定です』
「うむ、頼むぞ。次に軍事の方だが先ずは陸軍からだ。上杉殿、よろしく頼む」
『はい。陸軍では現在、大砲車を開発しております。これは車輪のついた台座に大砲をのせ移動できる代物で、完成すれば何処へなりとも大砲を運べます。また、鉄砲も速射性を上げるため弾と火薬を詰めた薬玉を造っております。こちらもまとまれば三段撃ちをしなくても速射することが可能です。最後に大砲と鉄砲の射程距離を伸ばす為の研究を現在行っております。陸軍からは以上です』
「そうか。鉄砲や大砲の射程距離を伸ばす為にはなにかと苦労するだろうが頑張ってくれ。では、次に宇喜田殿、よろしく」
『はい。現在海軍におかれましてはかの織田信長公が建造した鉄甲船を超える軍船を建造予定です。建造には朝鮮州、蝦夷州、琉球、本土の技術者達を伊勢に集め日夜新造艦の建造に力を注いでおります』
「そうか。技術者達には無理押させないように。それと海軍卿にこの前話した旋回式の艦載砲はどうなった?」
『それに関しましては大砲を載せる土台をゼンマイを使用して旋回される方法を採用しようと思います』
「うまくいくか?」
『試作段階ですのでまだ解りませぬが最大限努力致します。又、このゼンマイ式の旋回機が完成すれば、陸軍の大砲車にも運用できると思います。ですので完成後は陸軍の大砲車にも使用して頂きたいと』
『なんと、これは感謝いたします。それでしたら我が陸軍からは射程距離を伸ばすことができた暁には海軍の方々に技術をお渡しいたしましょう』
「よいよい。陸海が共同で開発すれば日本軍は更に強くなるであろう。2卿ともよろしく頼みますぞ」
『『はい』』
「では、首相。最後の案件に移ろうか」
『はい。最後になりますが議会の召集についてです』
「家康、議会の召集の理由はなんだ?」
『日本国の新たな国政を担う者達を集め陛下の御言葉を頂戴頂くのもありますが、先ずはやはり一般選考で選ばれた者達との交友を深めたいのもひとつあります』
「そうか。確かに今までは武士が上の立場だが今となっては平等。変な壁を取っ払う機会でもあるか」
『はい。またこの度徳川内閣において設けました学校教育を纏める部署、文学省の大臣も新たに選ばれた人材です。臣民の中には秀才が沢山おりますれば』
「よし、わかった。現在三ノ丸に建造中の議事堂が来週にも完成する。完成次第、議会の召集しよう。皆の衆頼むぞ」
『『仰せのままに』』
この次の週、帝都名古屋城で巨大な議事堂が完成する。石造りの議事堂は日本初、この議事堂を造るために築城の名手、加藤清正、藤堂高虎、黒田官兵衛が中心となり建造していた。
「建設省の活躍、見事なり」
『『『ありがたき御言葉』』』
清正、高虎、官兵衛は秀頼の言葉に頭を下げる。
「家康、議会を召集せよ」
『はい。議員達は帝都内の屋敷に集まっております。今から召集して正午には始められるかと』
「では各位、準備をいたせ」
『『『はい』』』
内閣征夷大将軍の命令により帝都議事堂に続々と議員達が入場する。旧大名家がそのまま貴族議員となりその大名家で宰相、軍師など達も貴族となった。それ以外の武士や一般選考で選ばれた議員達を含め合計で500人。この500人で国家運営を行う。因みに一院制である。
正午
全ての議員が集まり議会の開催を待っていた。
『豊王陛下、御入来』
国王専用の椅子に秀頼が座る。
『この度、第1回の帝国議会の議長を務めさせていただきます。真田信之です。宜しく御願い致します。これより、議会の開会を宣言いたします』
議長の宣言により歴史の1ページが新たに書き加えられた瞬間であった。
『先ず始めに、陛下から御言葉を頂戴いたしたく思います』
「ここに集まっている諸君は国民から選ばれた国の舵取りを担う代表者である。全ては国民のための、そして日本国のための政治を行わなければならない。それを忘れてしまえば我々も欧米の国々と同じになってしまう。欧米各国は布教活動と同時に他国を蹂躙する侵略者である。その侵略者達からこの日本国を守らねばならない。それを肝に命じ国政をしてもらいたい。以上」
『『おおぉぉぉぉぉお』』
秀頼の言葉に議員達は右こぶしを突き上げ声をあげる。
『では、最初の議題に移らせていただきます。第1議題、内閣総理大臣の指名の決議を行います。現在、陛下の命により徳川家康殿を内閣総理大臣として徳川内閣が動いております。つきましては改めまして内閣総理大臣の任命と内閣成立の決議を行います。皆様どうぞ札を賛成、反対の箱に投函願います』
この指示に議員一人一人が票を投じていく。
『集計が終わりました。全会一致で徳川家康殿を初代内閣総理大臣に正式に任命いたします。また、徳川内閣の各大臣もそのまま任命となります。徳川殿、各大臣。大臣席に移動願います』
ここに正式な徳川内閣が発足した。
『続きまして、最後の議案、3年後に控えた外征についてです。徳川大臣、ご説明願います』
『先ずご説明の前にこの度、皆様の票によりこの場所にいられることを感謝いたします。さて、議長からありましたように3年後、外征を行うための準備をいたしております。これは陛下が草案したものです。現在の世界情勢は欧米列強の植民地獲得戦争が至るところで行われています。この日本にもつい最近まで南蛮貿易により欧米諸国からの輸入品を多く買い集めました。貿易の他にはキリスト教の布教も行われました。宣教師の中には宣教師のふりをして国内に間者を忍ばせておりましたのを皆さんは御存じか?その間者達は逐一日本国内の情報を国許に送り侵略の準備をしていたのです。ではなぜ今まで侵略されなかったのか。それは幸運にも我が日本国が欧米からは最果ての地であること、そして日本国には幾万の軍事力があることがこの国への侵略を妨げていたのです。しかしそれでも何時侵略を受けるかわからないが今の状況である。日本国の周辺では既に奴等の手に落ちている国もある。そうなる前に外征を行い欧米を屈服させようと思っております。以上です。皆様方、どうぞ宜しく御願いします』
『それでは、皆様。決議に映ります。どうぞ札を』
再度、議員達は札を投函する。
『集計結果を発表致します。賛成、383票。反対、117票。よって今議案は可決されました』
これで3年後の外征が決まった。
皇居に戻り、正装から着替えた秀頼は急ぎ足で大広間に向かった。
「政宗~」
バンッ
『おぉぉ、殿下。珍しく高揚しておりますな。まぁ、お気持ちはわかりますぞ、待ちに待った外征ですからな』
「3年後だ。其までに準備を怠る事欠くやるぞ、政宗」
『勿論に御座います』
新国家日本の新たな船出まであと3年である。