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水着イベント~幕間~

「おりゃーーーーッ!!」


 ダッシュで黒のスイートルームにアイキャンフライ!!

 ズザーと音を立てて止まる。

 ふぅと汗を拭ってから室内を見回した。当たり前だが無人である。よしよし。あいつらの地雷がわからん。まぁいい。

 途中で作業を投げ出して私のところに来ていたのかあちこち中途半端な状態で放置されている。半端な仕事をするんじゃない。しかし今呼び戻すとうるさそうだな。

 仕方がない、残りは私がやってしまおう。

 やりかけのものを見下ろしながら数える。無性に数えたいので。

 腕を組んで足も組んでぷかぷかしつつさてどうしようかしらと考えた。ちなみにこちらのスイートルームは白のスイートルームと対になる形の色が置かれている。

 向こうは白と金に差し色ブルースカイだがこちらは黒と銀に差し色ワインレッドって感じにしているのだ。

 いつものミニマムボディでは厳しい作業となったであろうが今はガワがレガノアなので余裕のチョロスケといったところ。なんせぜんちぜんのーであるからして。いやガワだけなので100分の……いや……うーん……まぁ室内改装くらいは余裕の筈だ。

 とりあえず表返していたガワを元に戻す前にいい感じに作業を終わらせてしまえば一石五鳥はある。

 しかし世界が豊穣そうで結構なことだがボディが重い。マジかよレガノア。レガノアだけにとどまらずフィリアも大きいカミナギリヤさんも大きいマリーさんもすごいな。

 やはり私はミニマムボディが性に合っている。とっとこ走り回りたいのだ。ハムなので。

 まぁミニマムボディは置いておいて今はこれでいい。

 落ちてくる髪の毛を整えてからよいせと床に投げ出している作りかけの家具を手に取ろうとしたところで、ドアが軋み音を上げた。


「ん?」


 振り返る。悪魔がみちみちにふん詰まっていた。


「おっわ」


 あまりにもショッキング映像なので普通に声出た。声が出たことに自分で驚くくらいに普通に声出た。なんでそんなに詰まってるんだ。

 代表なのか羊がびっくりするほどの笑顔で私に向かって何のこともない感じで告げてくる。


「今すぐ元に戻るか私達とこの場で心中するか選んでください」


「はい元に戻ります」


 表返していたガワを元に戻した。マジギレしている。何故だ。

 キレすぎてアニマルボディを乗り越えたらしいメンディスが濁った目をした笑顔でえへへと笑う。なんだその小器用な笑顔。しかも口元が若干引き攣っていて不気味なのだが。


「暗黒神様ってぇ、ホンットに、地雷原タップダンスが大好きだよねぇ~。このこのぉ~! 流石にガチでマジに食べちゃうぞぉ~!

 暗黒神様が僕らのやりかけ作業の続きなんかしちゃダメダメ! 暗黒神様は何も出来ない可愛くておっとりした暗黒神様のままでいてねぇ~。

 はい座って~」


 しゅーっと滑るように駆け寄ってきた山羊悪魔により膝カックンで座らされる。

 そのままガッシリホールドされた。口調も仕草もおちゃらけているが腹に回った腕に込められた力は本物である。加減の無い締め上げにわがままボディが軋みを上げた。

 みしみしいっている。みしみしいってる!!


「ぐえぇ……」


「可愛いなぁ~。可愛いねぇ~。ずっとそのままでいてねぇ~」


 ぎちぎちとサバ折りしてくるので中身が出そうだ。やめろ。

 あと言ってる内容に反してドス声なのが普通に怖い。これは間違いなく全く一切可愛くありませんと言っている。ぎごごご。


「力を引き継いだ人間程度に埋められる穴でもなし。

 かつて同一であり上位次元管理者であった貴女がそう認識し、宇宙としてもあの人間をレガノアと同一とは見做していない現状は確かに上位次元最高管理者となったレガノアは消滅し座は無神であると言っていいですが。

 貴女が反転しレガノアとなって穴埋めをした上で全てを取り込み再創生などと我々が認められるわけないでしょう。ましてセルフで御自らの魂を素材になどと、それで消えるのは貴女です。

 生まれ変わりという魂の再加工後を貴女と見做すのは難しいと申し上げたでしょう。

 裏返るのも表返るのもひっくり返るのもいいですが表返るのはお遊び程度にしておいて下さいね。これは我々の心底からの、ただ地に伏しての神へ捧げる祈り。

 叶わぬのならば全てが成る前に普通に殺しますよ。耐えられないので」


「ぎゅもも……別にそんなことしてないじゃん……ぬえぇ……。

 ガワだけレガノアなだけであってだな……ギュェェェエエ……」


 みしみしどころかみきみき鳴っている。鶏をシメたような鳴き声が私の口から漏れた。

 メンディスの腕に青筋が浮いているのが見える。そして私の腹にめちゃくちゃめり込んでいる。折れるを超えて千切れる! 千切れるー!!

 しかも内容が冤罪だぞ。私にそんなつもりはこれっぽっちもない。無いったらない。なので今私がサバ折りされかけているのは完全無欠に冤罪であるからしてこれは不当裁判だ。というわけで私は不服を申し立て訴える!!

 唸っていると目の前に虹色ののっぽが座り込んだ。他のと変わらず目は濁っている。


「暗黒神たんはそこで座って、何も出来ない、しない、やらないでお兄ちゃんに任せてようね。

 はい、これで遊んでていいから」


 虹色の大きなビードロが与えられた。手で球体部分を持って眺め回してから咥えて吹いてみる。ぺこぺこと音が鳴った。ぺこぺこ。

 ボソボソと悪魔どもが寄り集まって何やら密談をしている。というかこれチーム大罪以外全員来てるのか? いや犬は牧羊犬指令が効いているのか来ていないのか。

 26人も居たらどんなに広いホテルだろうがクソ狭いので何人かアニマルに戻って引っ込んで欲しい。というかどうやって地獄でのデフォルトらしい身体になってんだ。光魔法か? 地獄の連中が満場一致で私を締め上げるとなったというのか。怖すぎる。

 ぷにと横から伸びてきた手に私の頬が押された。


「暗黒神殿、自覚はないようじゃが今のはだいぶあちらに行っておったゾイ。

 暗黒神殿が髪の毛を整える仕草など妾は初めて見たぞよ。

 ありゃあガワだけレガノアでのうて中身に暗黒神殿を模倣したレガノアじゃ。だいぶん混在したようじゃの。そのようにふらふらとしてヤンデレのメンヘラをあまり育成せんようにな。

 御自身で見分けが付かぬまでいくとレガノアの拡散し続けておる神域が暗黒神殿に混ざり込みかねんぞなもし。世界から今の二代目と同一人物と見做されかねん。その結末は悪魔にとって暗黒神殿の消滅といってよい。ただでさえ暗黒神殿は流されやすいというに。

 世界にとっては天の理に抗い不自然に歪めたものを人が押さえ付けて無理に続ける形の今の宇宙なぞより消滅したレガノアと立ち去った暗黒神殿の要素を持つ新神が新しく上位次元管理者に着き枝葉から新たな挿し木をする、そちらの方が余程自然じゃからな。

 世界の復元力に抗おうというほど暗黒神殿は確固たる楔、未練というものを持っとらんじゃろ。混ざっても気にせんじゃろうし。じゃというのに既に別人と認識している反面にころころとなってもうて。

 ひっくり返るのと同じように仮面を変えているだけというのならいいのじゃが暗黒神殿の表返りはそうではないからの。あれはあれで天の理を曲げておる。

 ただでさえなんとなく別人と認識しているというなんとも頼りない楔というに。

 混ざらずとも妙な閃きでレガノア成分と暗黒神ちゃん基盤を合成してその辺引き継いだ新しい神を作って新しく神域作れば諸問題解決だわーいとか言い出して御自身で魂を素材にしておしまいになり、挙げ句に魂持つ生命体であれば死に物狂いで抗う事態にまあいいかで特に何も思わぬであろうという確信が我らにはある。

 付き合いの浅い妾ですらそう思うぞよ。ナシよりのナシじゃな、うんむ」


「お嬢様、あまり自由過ぎるのも如何なものかと。

 大元は同一人物、狐めの言う通り混ざり込んでしまえばお嬢様はお気になさらぬので我々には除去が難しい。

 光魔法をもってすれば奇跡は起こせましょうがいかせん、お嬢様に関して言えば我々はユニコーンでございますれば」


「ユニコーン」


 なんでユニコーン。ペドラゴンの友達か?


「気にしない気にしない!! 僕らは歴史も気にするってだけぇ~。元に戻っても一度混ざったっていう事実が耐えられないっていうかぁ。

 変化はいいけど再加工と混合はちょっとぉ……魂を大事にして欲しいなぁ~?

 ぜんちぜんのーとかいらないよね? ね? 永遠にそのままでいてよぉ~。僕らちゃんと働くよぉ~?

 ……う~ん、僕ちょっと限界かもぉ。名残惜しいけど交代かなぁ」


「ほ、ほ。では主様はこちらへ。あちきと細々働く悪魔どもを鑑賞いたしまひょ。

 主様はなんにも、なぁんにもする必要あらしまへんえ」


 サバ折り要員が変わった。後ろだったから気づかなかったが私を散々移動させてサバ折りしたせいかメンディスは血だらけで割と死にそうであった。何してんだお前。

 まぁ自分で限界を見極めて交代したようであるしこのまま死にまーすではないようであるから一応地獄へ強制送還するという程ではなさそうだが。

 うーん、よくわからんがめんどくさいので好きにさせよう。というわけで好きにしろ。前にこいつらがそこまで望むならまぁいいかと結論付けたのは私であるし。今度から表返るのはちょっと頑張って薄皮1枚とかにしよう、そうしよう。

 ゆらゆらとあやされつつビードロをぺこぺこと鳴らして爆速で働く悪魔連中を眺めておく。

 私がまあいいか状態になったのを察知したのかサバ折りが無くなった。全く面倒な奴らである。

 でもまあ確かにさっきの表返りは思い返してみればあんまり私な感じがなかったな。後から思い返して言われてみればというレベルなので悪魔的にあまり良くないヤツだったんだろう。

 私があんまりにも適当なのでセルフで魂を素材にしかけたらしい。気をつけるか。

 そうすればこのイカ腹も失われるところだったのか。なんかそう思ったら労わろうという気持ちになってきた。


「茶菓子くれ」


 訴えた瞬間に360度からありとあらゆる茶菓子が用意された。いやまぁ食うけど。なんか今まさに地獄で聞いた堕落のさせ方が実践されてないか?

 ちょっと不安な気持ちにもなった。


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― 新着の感想 ―
>いつものミニマムボディでは厳しい作業となったであろうが今はガワがレガノアなので余裕のチョロ >スケといったところ。なんせぜんちぜんのーであるからして。 頭蓋がふっとんで死んだままのおじさんのそばで…
読んでて、表替った時に髪を耳にかける仕草をなさった...、と、この私めはお聞きしました。その瞬間私めは、確かに頭の中のオタク成分が首をもたげました。頭の中のオタク曰く、暗黒神様はぜってぇそんな女の人み…
暗黒神ちゃんは一番わかりやすいのが食欲だから仕方がないね でも、今回の事件は悪魔たちが暗黒神ちゃんに自覚を促したから自業自得なところもあるよね 元々、表裏一体の同一人物と思っていて、いまはその半身はも…
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