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街と瘴気と男と女3

 追い出された勇者達を見送り、カナリーさんも店主も行ってしまったのでテーブルの上の昼食を勇者と聖女を肴にしつつ舌鼓を打っているときだった。


「クーヤ、少し話があるの。

  ……そうね。まずはこれを受け取って頂戴」


 言いながらマリーさんが小袋をテーブルに乗せた。

 カチャカチャと何やら硬質な音。なんであろうか?

 開けてみた。

 中に入っていたのは色とりどりの煌めく宝石。うーん…………賄賂?


「何ですかコレ?」


「貴女へのお供え物みたいなものね。魔石よ。魔水晶には及ぶべくもない代物だけど魔力の足しにはなるでしょう。

 魔力が溜まって封印が解けるようになったら言って頂戴」


「おー」


 魔石ってこんなのなのか。ぼんやりと光を放っている。

 見た感じ、確かに魔水晶には及ばなさそうだ。もっと持ってくればよかったな。あんなに沢山実っていたといのに。というかあそこは何だったんだろう。アスタレルはあの部屋そのものに関しては何も説明しなかったしな。アストラル界に存在するどうこう言ってたが、ああいうところがこの世には実はいっぱいあるのだろうか。

 でもこの魔石だってマリーさんがお仕事で稼いできた大事な物だ。

 うむ、私も頑張らなければ。

 いそいそと小袋をリュックにしまってバンバンと叩いて形を整える。

 ギャァァアとリュックが悲鳴を上げた。不気味である。

 部屋に戻ったら魔んじゅうにするとかどうにかして体内に取り込んでみよう。

 もういっそ手持ちの魔水晶も含めて全部むりやり食べようかな。消化できるかどうかは問題あるまい。

 何せ私は地上に来てからこうしてムシャムシャとご飯を食べまくっているが一度もトイレに行っていない。

 ……そういえば風呂にも入ってない。やばい、何故だかとんと思いつかなかった。

 元人間だというのに……汚部屋に住んでるキャンセル人間だった疑惑が一気に急上昇第一位トレンド入りしてしまった。


「それとこれよ」


 考えているとマリーさんがまたもや小袋を出した。

 こちらはチャリンチャリンと金属のような音。今度はなんであろうか?

 開けてみた。

 中に入っていたのは金ピカのコインと銀色のコイン。

 ……お金? 今度こそ賄賂だろうか。ピンと指先で弾いてみる。


「今回の報酬よ。これが貴女の分け前」


「え? でも」


 カナリーさんの保護にしろフィンバリット商会の捜索と天使の討伐にしろこの三人が受けてこなした依頼だ。

 それなら私が受け取っていいものではないだろう。

 むしろ私はこの三人に護衛をお願いしている立場、それで苦労を掛けるのだしお金なんてとんでもないことである。

 私が居なければそもそも天使だって来なかった筈だし。

 それに私の現状と状態は説明したがその原因を彼女達には伝えていない。暗黒神ですとか痛々しいし恥ずかしいし……。


「当然でしょう? 貴女はわたくし達のチームの一員なのだから」


「……え?」


 目をぱちくりとさせているとブラドさんがニヤリと笑って告げた。


「昨夜三人で話し合って決めてね。

 正式に君を私達のパーティメンバーとして迎えるとな」


「………」


 マリーさんとブラドさんとクロノア君の顔をキョロキョロと何度も見てしまった。


「い、いいんですか?」


「もちろんよ。貴女はあまり強くはないけれど……こういった事は目に見える強さが全てではないもの。わたくし達の正式な仲間として貴女を歓迎するわ」


「そういう事だ。嫌かね? もうパーティ申請は出してしまったが」


「嫌だなんてとんでもない! 嬉しいです! いやったあぁあぁあ!!」


 ぴょんと飛び上がった。

 予想外の嬉しい話に思わず顔がにまにましてしまう。

 頬を押さえてみるが全く効果はない。こりゃダメだ。なんて事だ。ニヤけるのも仕方ないというものだ。

 まさかこの三人チームの正式な一員になれるとは。

 私はレベル1だしこの三人はレベル1000越え、普通なら仲間として認められるなんてなかった筈だ。

 だだの成り行きの護衛対象だしこんなに最弱暗黒神だというのに、どこかは分からないがマリーさん達のオメガネに叶ってちゃんとした仲間認定を貰えるなんて思ってもみなかった。


「あ、でも」


「なにかしら?」


「私みたいなレベル1をマリーさん達の正式なパーティメンバーなんかにして大丈夫なんですか?

 ギルドってそういうの何か問題とかあるのでは……」


「ああ……」


 マリーさんが答える前に私の頭がガシッと掴まれてワシャワシャにされてしまった。


「問題大有りだ!

 ったく……朝からこっちはてんやわんやだ! うちのギルドマスターは役に立たねぇしよ!」


 勇者を追い出した店主だった。大問題らしい。

 頭を掻き毟りながらキッチンとギルドカウンター受付の仕事を放棄してテーブルの椅子にどっかりと座り込んでしまった。


「……なんか弱くてすみません…」


 この三人のリソースを奪いまくっているのは事実。

 カナリーさんの保護だってこの三人が受けるようなものではなかった筈だ。

 とりあえず謝っておいた。お誘いを辞退する気はないが。折角だしな。


「牛乳娘が謝る事じゃねぇ。……謝るべきはこいつらだ!

 こいつらときたら仕事を選り好みしまくって直接指名依頼でもなんでも少しでも気に食わない事があればテコでもうごきゃしねぇ!

 その癖ランクは文句なしのSクラス! レベルの高さもギルド全体の中でもトップクラスだ!

 こいつらには他の支部から新人教育に協力させろだの弟子を取らせろだのこっちが斡旋した奴を仲間にさせろだの情報技術開示会に参加させろだのただでさえ口喧しく言われてたんだ!

 それがぽっと出の実績0レベル1のギルド史上最高前代未聞の最弱娘をパーティに加えやがって!

 おかげでこいつらが申請を出した直後からとんでもねぇ量の苦情が来てんだ!

 お前らせめてどれか一つくらいは要求に応えてこい!」


「いやぁよ。面倒だもの」


「一つやれば益々五月蠅くなるだけだろう。キリがない」


「………」


「皆さん……」


 ほんとに大問題だった。

 色々ぶっちしすぎだ。自由すぎると思う。

 しかも一向に反省の様子は見られない。

 多分この人たちの自由さはこのまま直らないな。諦めろ店主。


「全く……おい、牛乳娘。

 今までは単に名前だけ乗っけてただけだったがこれでお前さんも正式なギルド支部の一員だ。色々とうるさくはなるだろうが我慢しとけ。

 ……歓迎する」


「はーい」


「全部ぶっ飛ばして登録したからな……今から説明しといてやる。

 耳の穴かっぽじってよく聞けよ」


「そうね。クーヤ、お勉強の時間よ。少し長くなるけれど」


「えー……」


 せっかく喜ばしい感じだったのに。お勉強だなんて……。

 ウオーン!


「終わるまで飯はおあずけだ。しっかり聞けよ」


「ちぇっ!」


 ご飯を人質に取られてしまった。


「まぁ登録して暫く経ってるし、特に問題行動もねぇし規則とかはいい。何かあったらマリー達がなんとかするだろ。

 ギルド寄宿舎は……もう住み込んじまってるんだろ? ……ったく。まぁコールの許可も出てるし例のあの部屋ならいいだろ。

 あー、マリーはもう大丈夫っつってたが……正式なギルドメンバーだからな。嫌ならコールに言え。他の部屋に移してくれんだろ。

 ランクがあがりゃもっといい部屋に住めるがな。新人はあんなもんだ」


 そう言われても逆に狭い方がいいし既に魔物も居るしで移る気はないのだ。

 あのままあそこでいいや。あそここそが我がマイホームである。


「ギルドは南に本拠地があってな。あっちこっちに支部を持ってる。

 登録した時にポロっと言ったが此処は非合法な場所だ。教団にも情報は出してねぇ。

 普通の冒険者は知らない場所なんだが……お前さん直接ここに流れてきやがったからな。しょうがねぇ。冒険者にはランクだのなんだのあるが、ま、その辺はあんまり気にすんな。お前さんのレベルでおまけにガキんちょならうるさくは言わん。異界人だしな。

 ……と、まあ、ただの登録者向けの説明だけなら以上だ。だいぶ端折ったが。

 で、こっからは異界人向けの話だ。

 異界人が流れてきたとはもう本部に連絡してあるんでな。

 異界人には直接ギルド幹部が会う事になってるんで近々お前さんに会う予定だったし、その時に話がスムーズになる様に1から10まできっちり教えといてやるからその小さな頭に詰め込んどけ。

 お前さんみたいな知性持ちに何も教えてねぇとこっちが大目玉だしな」


「む?

 何で会いに来るんですか?」


「そこも含めて聞かせてやるから落ち着け。

 牛乳娘はガキんちょだがしっかり分別と知性もあるし文化じみたものも持ってた世界から来たんだろう。それなら説明した方がいいだろうからな。

 異界人の扱いは独特なんだ。最近からだがな」


 ふーん。

 異界人て特別なんだな。

 ……身分詐称したってバレませんように。いや大丈夫だろう。大丈夫な筈。


「クーヤ、以前モンスターと呼ばれる者の話をしたでしょう?

 覚えていて?」


「この街はモンスターの街って呼ばれてるって奴ですか?」


「ええ」


「人間の血が入ってもないし教団の認可もない人はモンスターでしたっけ?

 あとは戦争が終わった後、人間に従わなかった魔族。確か討伐対象とかなんとか」


「それよ。戦争終結直後にモンスターとされた魔族については除外するわ。

 大体が狩り尽くされているし、今もひっそりと生きているものも居るけれど……。どちらにせよ今からする話には特に絡まないわ。

 今回のお勉強はそれ以降のお話。

 以前は軽く流したけれど……北と南に東大陸の人間が進出しだした頃の話になるわね。

 そうね、まずはモンスターの定義から。

 教団の言う事には世界に仇成し人を堕落させる恐るべき魔の尖兵、浄火すべき神の敵。

 それが教団の語るモンスターという存在よ。

 当時、人魔戦争を和睦で終えたレガノア教団は引き続きモンスター征伐を行い南北大陸を人々に解放すると宣言したわ。

 当然、侵略の為の正当な理由付け、レッテル張りでしかなかったのだけれど」


「ふむふむ。

 ……全然正当な理由じゃないような」


 あいつらはモンスターだと言えばそれだけで侵略と討伐の理由になるのか。

 都合のいいことだ。しかも戦争開始時点では同じ人間同士で争ってたことすらあるのか。人間は愚かなものです。特にお前。

 アスタレルは人外価値観なのか一纏めに人間としか扱っていなかったが……でも現状だとそれで合ってると言えば合ってるのか。マリーさんも過去形でおっしゃっている。教団に属さない人間はもう居ないのだろう。


「教団にとっては立派な理由だったのでしょう。神の為、正義の為、平和の為、秩序の為。

 耳触りが良ければ何でもいいのよ。

 ……で、これからの話をする大前提よ。わたくしは人間の血が入っていない、教団の認可がない者は全てモンスター扱いされると言ったけれど。

 本当はニュアンスが少し違うわ。不愉快な話だけれど。

 正しくは人間以外の種族は全てモンスターとされたの」


「……夢はでっかく……」


 思わず零してしまった。

 余程の自信があったのだろう。

 それこそ人間以外全てが敵に回っても倒しきる自信が。


「全くね。

 もちろん世界を破壊する神の敵などというわけが無いけれど、人間は人間以外をそう定義したわ。

 例外は二つ。一つは神霊族ね。彼らはそもそも生き物ではないの。自然物が出すエネルギーが形となったもので、実体も無いし性質も神や精霊に近いわ。

 目に見える意思の疎通が可能な自然の力、精霊と同じ幻想種。

 人間にとって世界を構成するただの自然物の一つ。それが神霊族の扱いよ。

 そしてもう一つ。無害である、食用である、家畜化、飼育が可能である、利用できる、そういった条件を満たすもの。

 これは魚や鳥や動物ね。

 ……つまりはそもそも知的生命体として認められない生き物ね。毒があったり、人間を襲ったりすれば個別に処理はされるけれど基本的には放置されるわ。

 狩りや採集の的にもなるけれど。

 この二つの例外は基本的には神が人間の為に生み出した奉仕生物として扱われるの」


 店主が首を振りながら講義を続けた。


「今となっちゃあそんな面影もないが……昔は魔族と竜族がこの世界での最強種族と言っていいぐらいでな。世界の大半が魔族の支配圏って程度にはよ。ただ君主だとか王だとかになって支配してたってわけじゃねぇ。

 なんて言ったら伝わるか……そもそも大陸間の移動が極悪に難易度が高かったつーか。好きに移動するのは魔族竜族神霊族、その中でも一部ぐれーでな。大陸を渡って移動できる個人って時点で手を出すバカな国も組織もねぇって感じだな。簡単に行き来出来るようになったのは人魔大戦以降だ。つーか、簡単に行き来出来るようなったから人魔大戦が起こった、だな。

 んで、教団は人魔大戦終結後に北と南に侵攻したわけだが、南の亜人は野蛮人だの未開の猿だの言って、略奪に強姦、迫害に虐殺。何でも有りだ。

 亜人でも純血種は基本的に排他的なもんだ。魔族と人間の生存戦争中にも我関せずを貫いて引き籠もってた奴らだ。基本的に結束するって事がねぇ。後はなし崩しだな。

 エルフ族だの巨人族だの、力ある連中にゃまだ我関せずで引き籠もってるのも居るがな。引き籠もってたって何も変わらねぇんだが。

 神霊族は物質ってものに興味が無い。何処にでも行けるしな。さっさとどこぞへすっこんだようだ。北大陸は環境が過酷だからな、まだそこまで人の手は入っちゃいねぇが……」


 マリーさんはワイングラスを揺らしながらどこか遠くを見るような目だ。

 昔を思い出すような、というか。


「そうね……。大陸間で物理的な意味合いで上下があった、としか言いようがないわね。空に大陸が浮かんでいたとでも思って頂戴。

 西は上にだけ、東は下にだけ。南と北は上下にそれぞれ存在していた。それがある日、崩落したの。

 崩落直後は南北大陸にも国や都市と呼べるもの、亜人や魔族、人間が共生していた場所すら存在していたわ。特に南の上はその傾向が強かったもの。

 教団が魔族への宣戦布告をする前に南北大陸に崩落してきた他種族国家や都市を巡礼と称して巡るそのさなかで結果的に壊滅に追い込まれて散逸しなくなってしまったけど。南の上にあった主要都市はすぐに地図から消えたわ。開戦はその後のことよ。

 そして終戦後の征伐で教団はモンスターについてもう一つ法を定めて、それを亜人達に通達した。

 亜人の知識や技術、身体能力について学んだのが大きかったわ。人間には無いそれらはとても魅力的だったのね。それを取り込む為に法を敷いた。

 そして亜人という種を根元から断つ一番効果的な方法でもある。

 古今東西、人間同士の戦争で散々使われた手ね。

 既に魔族にも同じような事をして効果を上げていたもの。それを行った」


 こくこくと頷く。


「モンスターのうち、条件を満たし教団に認められた者だけがモンスター外認定を受けられる、という法を作ったのだよ。

 問題はその条件だ。これが面白く無いものでね」


 ブラドさんが本当に面白くなさそうに言った。


「場合によっては第二級人類族として認められて準人間として扱われるわ。

 準人間になれれば東大陸での永住も可能になるし教団で洗礼を受け、聖職者や勇者を目指す事も出来る。

 取り合えず、このモンスター外認定を得る為に必要な条件はいくつかあるけれど」


 マリーさんが手を突き出して一本の指を立てた。


「まずは人間にとって無害であり、友好的、協力的であること」


 小さな二本目の指が立てられた。


「そしてレガノアに対して好意的なもの」


 三本目。


「最後に人間との混血が可能である事。これが絶対条件よ」


「混血……」


「そう。人間の子供を産める種族」


 この街の住人を思い出す。うーん……。

 下半身が魚とか居たよな。


「それじゃあどうやってもモンスター外認定を貰えない人達もいるのでは……」


「もちろん居るわ。あまりにも人とかけ離れた肉体を持った種族には不可能よ。

 彼らは永遠にモンスターとして扱われるわ。滅ぼされるまでね。

 そしてこれらの資格を満たし、人間と技術交換、交易、人間が定める法の遵守、移民とレガノア教、聖職者の受け入れ。

 それに同意すればその種の集落を第二級人類族の村として認め全員がモンスター外認定を受けられるわ。

 そして人間の伴侶、主人を持ったり、ほぼ人間に近い混血ともなれば準人間として認められる」


「………」


 思ってたよりきっつい条件だった。

 イヤだな。


「亜人は半々ね。魔族は人間と同じような姿の者が多いけれど身体の構成要素があまりに違いすぎる。ほぼ不可能よ」


「……亜人と魔族ってどう違うんですか?」


「そりゃあ、亜人は物質的な肉の器を持つ者。魔族は半霊体の闇の器で出来ている者、だな。肉体に縛られたのは亜人。亜人は人間や動物なんかと基本的には変わらん。

 同じ進化系統の生き物だ。

 肉体から解放されたのが魔族。魔族は根本から違う。人間と昆虫より遠いな。神霊族に近い。竜もそうだな。

 半霊体のこいつらは増え方から生命維持の方法まで全然違う。

 魔族に関しちゃレガノア教の連中は悪魔の落とし子とかわけのわからん事を提唱しているが」


「あー……何となく分かるような分からないような……」


「どんなに奇妙な生き物でも死んだときに肉体が残るのが亜人。どんなに人間っぽくても残らんのが魔族だ」


 ちらっとマリーさんを見る。

 白金の髪の毛がもこもこと形を変え、ぴょこっとコウモリが飛び出して再び髪の毛に吸収された。

 うん、体の構成元素からして違いそうだ。


「なるほど」


 悪魔が出てきてるけど私は出ないのかなー。

 ちょっとくらい名前が出てきてもいいのに。


「さっきブラドさんが言ってた闇族は魔族じゃないんですか?」


「ふむ、あれかね?

 魔族でもあるし亜人でもある。人間を食料にする、寄生する、繁殖に使う。

 そういった種族特性を持った者たちだ。生きているだけで人間に直接害を与える者達の総称だ。

 友好的だろうが混血できようが第一級危険生物として駆除が奨励されている。魔物、妖魔、淫魔や吸血鬼、人食いに魂喰らいや肉食系の竜や異界から来る理性なき魔獣だな。とはいってもこいつらは人間に限らず餌にする上に強力なのでね。我々にとっても討伐対象の場合が多いが」


「ふむふむ……」


 顎に手を当てる。

 それこそゲーム的な意味合いでのモンスターと同じようなものか。


「話を続けてよ?

 これを突きつけられた亜人達は人間と交配可能でさえあれば人間の出した条件を殆どの集落が呑んだわ。

 それが出来ない僅かな者達は人の手の入っていない土地へと隠れた。

 そして数百年。今は南北西、人類族が勇者などを使って隠れ住んでいる亜人や魔族を狩りながら鋭意開拓中といったところよ」


「ほほー」


 それで殆どの種族が人間に取り込まれているわけか。

 そりゃあその道を選ぶだろうな。むしろ条件を飲まなかった種族というのが覚悟キマり過ぎで凄いのだ。

 滅びを受け入れるか名が残らずとも永らえるか。選べる種族はそう多くないだろう。


「なんだかみかじめ料を接収するヤクザみたいですな」


「言い得て妙だな。その通りだよ。自分達で迫害しておいて迫害されたくなくば条件を呑めだからな。マフィアやヤクザの手口そのままだ」


「……教団ってそんなに凄いんですね。方法とかよく思いついたもんです」


「牛乳娘、鋭いな。やり口は全て教団の神の代行者、救世主様の発案らしいぜ。レガノアの託宣を聞き、天使を従え奇蹟を起こす、少なくとも数千年は生きてる化け者だ。

 大聖都に住む人間が狂信してる現人神だな」


「……人間ですかそれ?」


「さぁな」


 ラスボスはレガノアだから中ボスと言ったところか。

 考えるだにあまりにも険しすぎる道のりに目が遠くなるというものであった。

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